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異次元からの侵略者

第123話 おけつにいらずんば

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦の中心地、衛星基地ソゴム。
 そのソゴムの内部に次元の扉があって、そこから異次元の侵略者は攻めて来ていた。
 停戦状態の今、マイとユアとメドーラの三人は、ソゴムの中心付近で見つけた次元の歪みを切り裂いて、異次元空間に攻め入った。
 そこには、衛星基地ソゴム内部と同じ景色が広がっていた。
 三人は情報収集のため、第五作戦本部を目指す。
 マイ達三人を出迎える者は、誰もいない。
 マイ達三人の目の前で、エレベーターの扉が開くだけだった。


 マイ達三人の前に姿を見せたこの次元の住人は、誰もがケイの姿をしていた。
 この事からユアは、今回の件は、ミイが係わっていると推測する。
 ミイは、ケイのパートナーだったサポートAIだ。
 惑星ドルフレア編の最後、惑星ドルフレアに残った。
 そしてその後、千年前のケイを追った事は、マイとメドーラしか知らない。

「ユアにも教えるべきかな、ミイの事。」
 マイはメドーラと顔を見合わせる。
 メドーラはうなずく。

「その必要ないから。」
 秘密を話そうとするマイを、ユアは制す。
「でも、ユアは知りたくないの?」
 折角話す気になったのに、ユアに否定されて、マイはちょっと残念。
「この事、ミイはマイとメドーラ以外には知られたくなかったんでしょ。」
 そんなマイを前にして、ユアはミイの気持ちを推しはかる。
「それは。」
 マイは言葉につまる。
 確かに、ミイはアイ達には知られたくないそぶりだった。
 そのミイの気持ちを、アイ達は尊重する。

「アイとアイツウに知られるって事はね、上層部にも知られちゃうって事なの。」
 なんか納得のいかない様子のマイを見て、ユアは説明する。
 アイは、マイのパートナーのサポートAIだ。
 そしてアイツウは、メドーラのサポートAIである。
「このふたりは、ミイの気持ちが分かったのね。
 でも、ユウは違うから。」
 ユウは、ユアのパートナーのサポートAIだ。

 今、三人のサポートAIの名が出てきた。
 普段はパートナー同士つながっているが、この次元空間に来た時から、そのつながりは切れている。

「今度ユウ達とつながったら、三人は絶対私達の記憶を探る。」
 つながりが切れてた時、三人は何をやっていたのか。
 パートナーのサポートAI達は、当然探ってくるだろう。
「ミイの事、アイ達はそっとしとくでしょうけど、ユウならがっつり探ってくるわよ。」
 ユウのパートナーであるユアには、その予想は容易だった。
「これって、ミイの意志に反してるでしょ。」
 ユアはマイに向けて、悲しげな笑みを見せる。

「でも。」
 これにはマイも、言いたい事があった。
「ユアも一緒にドルフレアを冒険した仲でしょ。
 知る権利はあるわ。」
 マイの言葉に、ユアは首をふる。

「私だって、知りたいわよ。
 でも、私がその場にいたら、ミイも話してくれなかったと思う。」
 ユアは悲しげな表情で、マイに応える。
「私とユウとのつながりは、マイ達よりも濃い事は、さっきの事で分かったでしょ。」
 ユアは、常にパートナーであるサポートAIのユウと、意識を共有している。
 それが、ユアの判断基準の判断材料になっている。
 ユアの召喚される前の時代、パートナーデバイスからの情報提供は当たり前だった。
 召喚された後のユアも、その感覚で、サポートAIのユウを受け入れた。
 その感覚は、マイもメドーラも持ち合わせていない。
 これは、三人の生きた時代背景が違うから、仕方ない事だった。

「なんか、ややこしいな。」
 マイには、いまいち理解出来ない。
 ユアのサポートAIと一体になる様な、その感覚が。

「それより、どうしましょうか、これ。」
 そんなやりとりを続けるマイとユアの横から、メドーラがひと言。
 メドーラは精神力が果てていたが、呼吸を整える事で、ある程度回復してきた。
 メドーラは、目の前で扉を開かれた、エレベーターを指さす。

「あ、」
「忘れてた。」
 ユアもマイも、この件に係ってるであろうミイの話しに熱中して、その事を忘れていた。
 つか、ここでの会話劇は、もう少し続けるつもりだったけど、なんか不自然な事に気がついたんで、やめとく。

「えと、カッパとかの姿をした人達が、ケイの姿をしてるんだっけ。」
 マイは、話しがミイの事に脱線する前の、前回の内容を思い出す。
「そう。私達を惑わすため、ケイの姿をしてるんじゃないか、って事。」
 ユアは、マイの回想補足する。

「これって、どう考えても、罠なんだよね。」
 いざエレベーターを前にして、マイは少しおじけずく。
「ケイ本人が罠張ってるならまだしも、姿を似せただけ、あ。」
 姿がケイなだけで、大した事ない。
 そう言いたかったユアだが、自分の言葉で、ある事に気づく。
「そっか、これってミイが係わってるんだっけ。」

 ユアにとって、召喚者もパートナーのサポートAIも、一心同体。
 ケイ本人を相手にするのと、ミイを相手にする事は、ユアにとっては同義だ。
「なめてかかると、痛い目にあうわよ。」
 相手がケイ本人だと仮定すると、それは手ごわい相手になる。

「でも、おけつにいらずんば、孤児を得ず、だよね。」
 ケイにはちょっと苦手意識があったマイだが、自らを奮い立たせる。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ですわ。マイお姉さま。」
 メドーラは、マイの間違いを指摘する。
「おけつって、どう入るのよ。」
 ユアも笑いをこらえている。
「だ、誰にだって間違いはあるでしょ。」
 マイも、思わず顔を真っ赤にする。

 そう言えば、誰かが「むしさんがはしる」って言った気がするが、誰が言ったのかは、忘れてしまった。

 気を取り直した三人は、エレベーターに乗り込んだ。
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