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異次元からの侵略者

第98話 過去からの逃亡

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代の人類は、過去の時代から魂を召喚し、その魂をアバターに入れて争わせていた。
 脱出用ポッドの出現が、そうさせたのだ。
 これでもはや戦争も、ゲーム感覚となる。
 だが、その適用ルール外の侵略者には、そんなゲーム感覚も通用しない。
 北部戦線の激戦は、そんな戦いだった。
 その北部戦線の戦禍のやんだ戦場で、敵とおぼしき人物を発見したユアとメドーラ。
 ふたりは敵の術中にはまり、立体映像で投影された自分達の偽物と戦うはめになる。 
 宇宙空間での戦いを想定して始まった今回のシリーズ。
 その宇宙戦には入らず、泥沼化して普通に肉弾戦を繰り返す始末。
 別に、まだ構想がまとまってないんじゃなくて、キャラが勝手に動き出して、そこまでたどり着けないだけだと思う。
 早く宇宙戦しろやという、ジャンル詐欺状態は、当分続きそう。


 はちまきを捨て、顔つきが凶暴になるメドーラ。
「メドーラ、あなたは一体。」
「あ?」
 ユアはメドーラに話しかける。
「気安く話しかけんじゃねーぞ、ユア。」
 メドーラはソウルブレイドをクダ状に戻して、床に落とす。
「ユアって、いつもはユアお姉さまって、呼んでくれてるじゃん。」
 メドーラの変容に、ユアも驚く。
 メドーラは落としたソウルブレイドのクダを、右足で踏みつける。
 右足のつま先から、ナイフが飛び出した様な形状になる。
「はあ?お姉さま?私にお姉さまなんていねーよ!」
 メドーラは、迫ってきた偽物のメドーラに右脚のハイキックをかます!
 つま先のナイフが、偽物のメドーラの剣を持ってる右腕を斬りさく!
 偽物のメドーラは数歩後ろに下がる。
 そして斬りさかれた右腕を、元に戻す。
「ほう、やっぱり元は立体映像。多分首をはねても、動くんだろうな。」
 偽物のメドーラの行動を見て、メドーラはほくそえむ。
「ははは、どこまで斬りさいたら、動けなくなるんだろうな!」
 メドーラは偽物のメドーラに、無数の蹴りをあびせる。
 偽物のメドーラは、よけたりかわしたり、剣で受けたりする。

 偽物のユアもメドーラを攻撃しようとするが、そこはユアがカットにはいる。
「お姉さまはいないって、マイはあんたのお姉さまじゃないの?」
「マイ、お姉さま?」
 ユアに言われて、メドーラはその名をつぶやく。
 と同時に、メドーラは苦しみだす。
「ぐ、がぁ。マイお姉さま、助けて。」
 一瞬、メドーラはいつものメドーラに戻る。
 だが、それも一瞬だった。

「黙れ黙れ黙れ!」
 メドーラの蹴りで、偽物のメドーラの首をはねる。
「みんな死んじゃえー!」
 そしてメドーラは、ユアの背後から飛び蹴りをかます!
 ユアがとっさによけると、メドーラのナイフの生えた右足が、偽物のユアの胸元に突き刺さる。
 偽物のユアはその場に仰向けに倒れる。
 メドーラは左足で偽物のユアの顔面を踏み付け、刺さった右足のナイフを抜く。

「ユア、引き上げなさい。」
 ここでユアのパートナーであるサポートAIのユウが、呼びかける。
「そうした方が、よさそうね。」
 ユアはソウルブレイドのクダの尻で、メドーラの首の後ろを叩く。
 メドーラは気を失う。
 倒れるメドーラを、ユアが左腕で抱き止める。
 ユアはソウルブレイドを銃に変え、床に向けて煙玉を三発放つ。

 ユアはメドーラのソウルブレイドとはちまきを拾うと、メドーラを抱えたまま、その場を後にした。
 それは戦闘機がある方向とは、逆方向だった。
 だが戦闘機は、ユウとアイツウが避難させていた。
 ケイの姿をした謎の人物に、何されるか分からなかったからだ。
 サポートAIが専用カプセルに入っている状態なら、サポートAIは機体を遠隔操作出来た。
 そして今、アイツウは専用カプセルの中で泣いている。

 ユアは離れた小部屋で、ひと息つく。
「はあ、はあ、切ってもくっつく相手と、どう戦えって言うんだよ。」
 ユアは気絶したメドーラにはちまきをしめながら、ぐちる。
「それに相手は立体映像だから、疲れ知らずだ。」
 サポートAIのユウが、だめ押しする。
「たくぅ、どうすればいいのよ。メドーラのあの足技、凄く厄介じゃん。
 あれ、簡単に倒せないわよ。」
 ユアは気絶したメドーラを見て、ため息をつく。
 メドーラがあんな体術を使えたなんて、知らなかった。
 ゴンゴル三姉妹のメドーが恐れられていたのは、戦闘機乗りとしてであって、肉弾戦としてではない。
 つか、戦闘機以外の戦場で、メドーの姿が確認された事もない。

 アイツウは、気絶したメドーラの記憶を、深く深く探ってみる。
 今まで、メドーラが幼女の姿から美女の姿に変わるより前の記憶は、探った事はなかった。
 今のメドーラはメドーラであって、ゴンゴル三姉妹のメドーではない。
 だから、メドーとしての記憶を探る気もなかった。
 だけど、今は違う。
 メドーラが変容してしまう爆弾があるのなら、サポートAIとして、アイツウは知っておくべきだ。

 アイツウは、メドーラの記憶の海に潜る。
 それは、壮絶な記憶だった。

「立体映像のふたりを倒すには、方法はふたつだな。」
 アイツウがメドーラの記憶に潜る横で、ユウはユアに呼びかける。
「ひとつは、こちらも立体映像を投影して、戦わせる。」
「でも、戦闘機からじゃないと、投影出来ないんでしょ?」
 戦闘機はこの場に無いので、この案は却下だ。
「もうひとつは、作ったマイ本人に、消してもらう。」
 マイの戦闘機の投影装置をオフにしても、ふたりの偽物の映像は消えない。
 この立体映像は、意思を持ってしまったからだ。
 だけど、マイが近くで思えば、消えてくれるかもしれない。
「でも、マイはまだ意識が戻らないんでしょ。」
 この時点でマイは、まだ意識が戻っていなかった。
 つまり、この案も却下だ。
「あとは、そこからどう逃げるか、しかないんだが。」
 現状を伝えるユウの口も重い。
 助っ人を送るにしても、すでに人材がいない。
 ユア達の宇宙ステーションには、ユア達以外のチームもいる。
 そこに頼む事になるのだが、どこも先の戦闘で、疲弊している。

「マイに、行ってもらいましょう。」
 ここでアイツウが、ユアとユウの会話に割り込んできた。
「マイって、まだ意識戻ってないだろ。」
「たたき起こしましょう。」
 ユウの反論に、アイツウも即座に反論する。
「たたき起こすって、おまえ、乱暴だな。
 マイは寝てるんじゃなくて、死んでるかもしれないんだろ。」
 ユウはマイの現状を確認する。
 そう、魂がアバターの身体から抜け出そうとしている状態だ。
 深い眠りに落ちてる訳ではない。

「いいえ、マイじゃないと、だめなのよ。
 メドーラを救えるのは、マイだけなのよ。」
 アイツウの見た、メドーラの壮絶な過去。
 メドーラがマイをお姉さまとしたうのも、そのせいだった。

 アイツウは専用カプセルから出ると、メディカルルームへ向かう。
 マイを叩き起こすために。
 そして、メドーラを救うために。
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