上 下
92 / 215
異次元からの侵略者

第92話 北部戦線異常あり?

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、激戦の北部戦線への参戦を前に、同じ召喚者であるユアの特訓につきあった。
 この特訓の場に、敵とおぼしき巨大な戦艦が姿を現す。
 苦戦をしいられたマイ達であったが、マイは謎の声の導きにより、巨大戦艦を撃破する。
 しかし、超巨大な人型機体の立体映像の投影という、かなりな無茶をしてしまい、マイは生死の狭間を彷徨う事になる。
 マイを宇宙ステーションに運び、マイの安否を気にかけるメドーラとユアに対し、次の出動任務が告げられる。


「マイお姉さまがあの様な状態なのに、人使い荒すぎますわ。」
 メドーラとユアは、北部戦線を目指す。

 ユウに任務を告げられ二時間後、ふたりは宇宙ステーションを出発した。
 メドーラの機体の修理に、それだけ時間を要したのだ。
 ふたりの疲労は、一時間の急速睡眠で、ばっちし回復した。

 メドーラは少し荒れている。
 機体修理中のジョーに、もう少しマイと一緒にいたいと申し出るのだが、ジョーは許可しなかった。
 それどころか、ジョーは機体修理の様子をじっくり見ていろと、メドーラがマイの元に行くのを、許さなかった。
 ジョーはメドーラがいかに無謀な操縦をしたのかを、よく見て理解してほしかった。
 だが今のメドーラは、それどころではなかった。
 ジョーもその事はよく分かっていたが、無謀な操縦の先にあるものを、知ってほしかった。
 今は理解出来なくても、いつかは分かる日がくるだろうと。

「まあまあ、メドーラ。まともに動けるのは私達だけだから、仕方ないよ。」
 ユアはメドーラをたしなめる。
 激戦を極めた北部戦線。
 今戦えるのは、ユア達のように、他の任務にあたっていた者達だけだった。

「ワープ準備オーケー。進路クリア。いつでもいけます。」
 サポートAIであるユウとアイツウが、同時にパートナーに通信をいれる。
 北部戦線とは、北の衛星基地、ソゴム周辺で起きた戦場だった。
 ソゴムは地球の月の四分の一くらいの大きさで、ここら一帯の中心基地であった。
 北部戦線の拡大にともない、ソゴムは放棄される。
 今は姉妹衛星基地であるゴソラが、ソゴムの代わりを担っている。
 ソゴムとゴソラとの距離は、0.5光年離れていた。

 メドーラとユアは、ソゴム周辺にワープアウトする。
 ソゴムは半壊、辺りには大小様々な機体の残骸が散らばっている。

 メドーラ達の機体は、破壊されても自己修復機能を持つ。
 機体を構成する原子レベルで帰巣本能を持ち、宇宙ステーションの修復装置へと帰っていく。
 ここで18時間くらいかけて修復される。
 こんな設定があったと思うのだが、何話に出てきた設定なのか、サルベージ出来なかった。
 間違ってたら、ごめん。

 そんな修復機能を持った機体は、多くはない。
 多くの機体は、この場で無残な姿をさらしている。
「まるで、船の墓場ね。」
 ユアはこの場の感想を口にする。
「ええ、これなら墓場泥棒もはかどるってものですわ。」
 メドーラもユアの発言に続く。

 実際、墓場泥棒は多かった。
 破壊された機体の回収ミッションや強奪ミッションも、メドーラ達の知らないところで行われていた。
 そんなミッションとは関係なく、一攫千金を夢見るヤカラも、少なくはなかった。
 しかし、戦闘期間が長引くにつれ、墓場泥棒はいなくなった。
 四日間の戦闘のあと、三日間の休息。
 この周期が判明した初期は、休息の一日目に、目ぼしい機体の回収も行われた。
 だが戦闘が長引くにつれ、その回収しに行く機体も、やられてしまった。
 ユアの特訓に割り込んできた巨大戦艦。
 これは数日前の戦闘で撃沈されたのだが、既に回収する考えは無くなっていた。
 つまり、今墓場泥棒が出来るのは、こちら側にはいない。
 侵略者達だけの行為と言える。断言は出来ないが。

「メドーラ、あの人、動いてない?」
 ユアは戦闘機の残骸の陰の人影の存在を、メドーラに告げる。
 この戦場跡に散らばるのは、機体の残骸だけではない。
 当然、機体を操るパイロットもいる。
 いや、居たと言うべきか。
 メドーラも、船外モニターを拡大する。
 その人影は、明らかになんらかの作業をしている。
 機体の修理をしているようにも見える。

「どうらやら、そのようですわね。」
 メドーラはその対象の人物の着る宇宙服を照合する。
 それは、衛星基地ソゴムの船外活動用の宇宙服だった。
 しかしソゴムは今、完全放棄されている。
 これは、ソゴムの関係者が、こっそりとやってる事だろうか。
 謎の侵略者に反撃するために。

 メドーラの照合した結果は、ユアにも共有される。
 ユアは戦闘機を人型に変形させると、該当の人物とコンタクトをとる。
 謎の人物は、近づくユアの人型機体に驚いて、作業の手を止める。
 ユアはこの人物とコンタクトをとるため、通信のチャンネルを回す。
 だが、どのチャンネルもつながらない。
 どうやらこの人物は、通信機のタグイを持ち合わせていないらしい。

 ユアは光通信を試みる。
 光を点滅させて、その点滅の長さで文字を表す。
 いわゆるモールス信号に近い。
 これの問題点は、言語が違えば伝わらない事だ。
 ユアは衛星基地ソゴムで使われてた言語で呼びかける。
 ここら辺の作業は、サポートAIのユウがやってくれる。
 ちなみにメドーラは今、辺りを警戒中だ。

「敵対の意思がないなら、両手を上にあげろ。」
 ユアが光通信でそう伝えると、謎の人物は両手をあげる。
 どうやら言語は伝わったらしい。
 だが、相手からのコミュニケーションがとれない。

 ユアは戦闘機の立体映像を投影し、コックピットを開く。
「敵対の意思がないなら、これに乗ってほしい。
 衛星基地ソゴムで、話しあおう。」
 ユアは光通信で、そう伝える。
 投影された機体に、自律操縦機能はない。
 立体映像の機体の操縦は、ユアの意思で行われる。

 その人物は、投影した戦闘機に乗り込む。
 ユアは人型機体を戦闘機に戻すと、衛星基地ソゴムを目指す。
 ユアの機体の前をメドーラの機体が飛び、進路の安全を確認する。

 立体映像の機体に乗った人物を、サポートAIのユウが解析するのだが、その人物の着込む宇宙服が、その解析を阻む。
 分かるのは、身長と体重のみで、バイタル面については、何一つ分からなかった。

 敵対の意思はないらしいが、油断は出来ない。
 ユアはそんな人物を連れ、メドーラとともに衛星基地ゴソラを目指す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

義体

奈落
SF
TSFの短い話…にしようと思ったけどできなくて分割しました。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

処理中です...