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異次元からの侵略者

第88話 巨大空母な敵戦艦

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、激しい激戦を極めた北部戦線への参戦を命じられる。
 この北部戦線の戦闘に於いて、仲間の召喚者のマインとリムが再起不能な重症を負ってしまう。
 マイ達は参戦前に、独自の特訓を行った。
 それは戦闘機を人型に変形させて戦う事だった。
 ユアとメドーラの機体は、変形機能を搭載していた。
 マイの機体にその機能はないのだが、人型の立体映像を投影する事で、その可能性が見えてきた。


 カキーン、
 カキーン。

 人型の機体になって、剣を交差させるメドーラとユア。
 メドーラの人型機体の操縦も、だいぶサマになってきた。
 今のメドーラなら、雑魚の戦闘機相手なら苦も無く倒せるだろう。
 それは、強敵にはまだ通用しない、北部戦線では使い物にならない事を意味している。

 その時突然、メドーラの人型機体は、亜空間レーダーに異変をとらえる!
「ユアお姉さま、あぶない!」
 メドーラはウイングブースターの出力を最大限まで上げ、そのままユアの人型機体にタックルをかます!
 ふたりの機体は、そのままはるか後方へと移動する。

 その直後、巨大な戦艦がワープアウトしてきた。
 さっきまでユアが居た空間に、である。

 そのワープアウトしてきた戦艦に、マイは驚く。
 マイは、戦艦とは海上に浮かぶモノだと思っていた。
 だがこの戦艦は、宇宙空間を航行していた。
 全長も、おそらく1キロはある。

 巨大戦艦の出現に、びっくらこいてるマイ。
 そんなマイを尻目に、ユアとメドーラはてきぱき動く。

「艦体照合!該当なし?」
「ですが、レドリアで見た戦艦に似ていますわ。
 あの四連主砲の四機配置は、レドリア以外では採用していませんですわ。」
 ユアは艦体照合を行うが、既存の艦体に該当するものはなかった。
 この戦艦の主砲の配置から、メドーラはレドリアの戦艦ではないかと予測する。

「とりあえず、呼びかけてみましょう。」
 メドーラは通信回線を開き、謎の巨大戦艦とコンタクトを試みる。
 だが、どの回線チャンネルも、巨大戦艦とはつながらない。
 メドーラは、光信号でのコンタクトを試みる。
 光の点滅速度を変え、その組み合わせで文字を表す。
 いわゆるモールス信号だ。

 だが、メドーラのモールス信号の開始よりも少し先に、巨大戦艦に動きがあった。
 艦載機が一斉に飛び出してきたのだ。
 その数、およそ三百!
 ユアは再びこの戦闘機の機体照合をするが、該当なしだった。
 ゴンゴル三姉妹として、色々な戦場を渡り歩いたメドーラにも、記憶にない機体だった。
 でも、こちらを攻撃してくるからには、敵で間違いない。

 メドーラは人型機体を戦闘機に戻す。
 そして立体映像を投影した伴機を二機伴うと、そのまま敵機の群れに突入する!
 ユアは人型機体のまま、ウイングブースターの出力を上げて突撃する!
 ボケっと見ていたマイだが、敵機の襲撃に反応し、戦場へと突撃する!
 マイは新たに伴機二機の立体映像を投影するのだが、今まで出してた立体映像を、消さなかった。
 訓練用のオブジェクト、それとユアとメドーラの等身大立体映像である。
 何か意図があるわけではない。普通に消し忘れたのだった。

 敵の戦闘機の動きは単調だった。
 マイ達三人の敵ではなかった。
 巨大戦艦は、主砲のレーザー光線を撃ちまくってくる。
 それも、味方である戦闘機を巻きぞえにして。

「こいつ、仲間を何だと思ってんだ!」
 巨大戦艦の非道なやり方に、ユアは憤る。
「無駄ですわ、ユアお姉さま。敵艦載機は全て無人機です。」
 メドーラは目前の敵、三百機の艦載機が無人機である事を見抜く。
「そ、それでも、やっていい事と悪い事があるだろ!」
 ユアはロケットランチャーを投影させると、ロケットミサイルを全弾撃ち込む。
 しかし、巨大戦艦はシールドバリアに守られ、なんのダメージも負っていない。

 マイ達が艦載機三百機全てを沈めると、巨大戦艦の前方にエネルギーが集束されていくのが見て取れる。
「嘘、あれって砲塔だったの?」
 巨大戦艦の前面には、巨大な穴があった。
 どうやらこれは、エネルギー砲の発射孔らしい。
 メドーラの気付きに、メドーラのパートナーであるサポートAIのアイツウが、このエネルギー砲の推定威力を算出する。
 その結果はなんと、巨大戦艦の前方百宇宙マイリの物体は消え去る。
 そして発射孔は円錐状に広がっており、その範囲は上下左右に中心角80度の広範囲におよぶ!
 その結果を受け、メドーラとユアは即座に巨大戦艦の方に戦闘機を飛ばす!
 円錐形の効果範囲から逃れるには、後ろに逃げるより、前方に飛んだ方が、逃れる確率は高い。

「マイお姉さま!」
「マイ、早く!」
 素早く行動したメドーラとユアに比べ、マイは出遅れる。
 マイのサポートAIであるアイは、今専用カプセルにいない。
 そのため、アイツウの予測結果を共有出来なかったのだ。
 マイは理由は分からないが、ふたりの後に続く。
 エネルギーを集束させる巨大戦艦は、微速ながら後退する。
 マイ達三人が、効果範囲から逃れるのを、くいとめる動きだ。
 加えて、巨大戦艦は主砲のレーザー光線を撃ってくる。
 これにより、エネルギー砲の集束効率が下がり、発射までに時間がかかる事になる。
 しかし、マイ達が効果範囲から逃れる可能性も、ほぼなくなる。

 レーザー光線を避けるマイ達は、真っ直ぐ飛べない。
「ねえ、ワープで逃げようよ!」
「駄目です!超空間は既にふさがれてます!」
 マイの提案を、メドーラは即座に却下する。
 そして超空間がふさがれてるという事は、脱出用ポッドも機能しない事を意味する。

「そんな。」
 マイは絶望のずんどこに沈む。
「諦めるな、マイ!」
「そうです!希望を棄ててはなりません!」
 ユアとメドーラの言葉も、マイには遠くに感じる。
 そんなマイの心に、誰かの声が響く。

 マイ、大丈夫よ。あなたは助かるわ。
「誰?」
 マイは思わず聞き返すが、それに対する答えはない。

 あと五秒でアイとつながるわ。
 そしたら、このイメージを試してみてね。

 謎の声は、マイに巨大な人型のイメージを見せる。
 その全身から、光の線が放たれる。

「マイ、お待たせ。立体映像の人型を操れるようになったわよ。
 って、あなた何してるのよ。」
 宇宙ステーションの専用カプセルに戻ったアイは、マイ達の現状に驚く。
 そして瞬時に、同じサポートAIであるユウとアイツウから、現状の情報を得る。
「そんな、マイが死ぬ。」
 アイは絶望的な状況に絶句。

 マイは、謎の声が言っていた事を試してみる。
「ヒューマノイドシルエット!」
 マイは、人型の立体映像を、自分の戦闘機に投影する。
 人型の大きさの比率を言うと、戦闘機は眼鏡くらいの大きさになる。
 そこから人型の身体が精製されるのだが、つまり、かなりでかい。
 戦闘機の厚さが、眼球の厚さと同じとも言える。
 つまり、かなりでかい。
「ちょっと、それじゃあ、いいマトじゃん。」
 ユアは鏡面仕様の円盾で、レーザー光線を受ける。
 入射角が浅ければ、レーザー光線の軌道を、わずかに逸らす事も可能だ。
「ありがとう、ユア。うまく避けてね。」
「え?」

 マイは巨大人型機体の手足を大の字に広げる。
 そして、両手両足の装甲を開く。
 中にはびっしりとミサイルがつまっている。

「そ、それってもしかして。」
 ユアにも、マイの狙いが分かった。
「全弾一斉射出!」
 マイの掛け声とともに、マイの巨大人型機体の全身から、ミサイルが発射される。
 狙いは敵戦艦のエネルギー砲の発射孔!

 ミサイルは発射孔へとホーミングする。
 いくつかのミサイルは敵戦艦に迎撃されてしまう。
 だが、ほとんどのミサイルは、敵戦艦の発射孔に命中。
 集束されたエネルギーを巻き込み、敵戦艦は大爆発。

 巨大戦艦は、跡形もなく、吹き飛んだ。
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