86 / 215
異次元からの侵略者
第86話 人型機体で宇宙を駈けろ
しおりを挟む
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
マイはこの時代に、戦争するために召喚された。
北部戦線では激しい激戦がくりひろげられてたが、マイは参戦しなかった。
他の任務にあたっていたからだ。
北部戦線の激戦で、同じ召喚者であるマインとリムが、再起不能の重症を負ってしまう。
マイとメドーラ、そしてユアも北部戦線に駆り出される。
だがユアは、戦闘機での戦闘は苦手だった。
それを克服するため、戦闘機を人型に変形させる。
ユアはマイとの実戦訓練にて、見事勝利をおさめた。
メドーラは疑問だった。
なぜユアは人型の機体を操れるのかを。
人間の動きを作り物で再現するとなると、その難易度は高い。
普通に歩くにしたって、重心の移動、力の掛け具合、バランスの取り方等々、クリアするべき課題は多い。
それらを機械制御で補ったとしても、大まかな動きしか出来ない。
戦闘にともなう動きは、操縦者が微調整しなければならない。
そう、普通に戦闘機を飛ばす方が、はるかに楽なのである。
人型にする利点が、見当たらない。
地上戦なら、大型な何かと戦うのに使えなくもない。
だが、宇宙戦において、人型にするメリットは何も無い。
それにも関わらず、ユアは完璧に人型機体を操ってみせる。
マイの四機の機体からなるテトラフォーメーションでさえ、ユアは余裕で見切っている。
ふたりの戦いを、離れた所で見ているメドーラには、よく分かる。
ユアの何気ない動作が、マイの行動を誘っている。
小さな腕の振り。顔を上げる仕草。
その動きから、相手の注目点を探り当て、次の動作を予測する。
その先回りこそが、テトラフォーメーションの真骨頂。
マイは自分の意思で行動しているつもりだろうが、それはユアの想定の範囲を脱しえない。
マイの本機が、ユアの近接接近を許してしまう。
ユアの人型機体は剣を振り上げる。
「この勝負、ユアお姉さまの勝ちですわ!」
メドーラも戦闘機を人型に変形させ、剣を持ってユアの剣を受け止める。
ここでメドーラが止めなければ、マイの機体は爆散。
マイは脱出用ポッドで宇宙ステーションに戻り、爆散した機体も自動修復される。
しかし、自動修復には時間がかかる。
北部戦線に参戦がせまってる今、そんな時間はない。
マイは投影した三機の機体の立体映像を消す。
「凄いよユア、全くかなわなかったよ。」
マイはユアに賞賛の言葉を贈る。
そして同時に、自分にはユアの戦術が使えない事を、はがゆく思った。
メドーラの人型機体とユアの人型機体は、まだ剣を交えていた。
メドーラの人型機体は、小刻みに震えている。
地上とは違い、宇宙空間には両足でふんばる地面がない。
前身のための推進エネルギーを、消費し続けるしかない。
対してユアの人型機体は、どっしりと構えている。
「ユアお姉さま、教えてください。なぜあなたはこの機体を操れるのですか。」
メドーラはこれまでに感じた疑問を、ユアにぶつける。
宇宙戦における、人型機体の投入。
その利点を見出せないメドーラの目の前で、ユアはメドーラの思惑を、はるかに超えてみせている。
「さあ?私は、普通に動かしてるだけ!」
ユアは人型機体の握る剣に力をこめる。
絶妙な力の均衡でバランスの取れてた二機の人型機体だったが、メドーラの人型機体は弾き飛ばされてしまう。
メドーラの人型は、後方宙返りをしながら、後方へと吹き飛んでいく。
無重力の宇宙空間なら、どこまでもこのまま突き進む。
「メドーラ、機体を戦闘機に戻して!」
マイは思わず叫ぶ。
マイのアドバイスをかき消すように、ユアも叫ぶ。
「メドーラ、つま先と頭のバランサーを意識して!
バーニアーをふかして、微調整を続けて!」
メドーラは、ユアのアドバイスを採用する。
小刻みにバーニアーをふかす。
無重力の宇宙空間では、腕を左右に振るだけで、その方向に回転し続けてしまう。
その特性を理解し、メドーラは人型機体を制御する。
「メドーラ、あなたもウイングブースターは出せるでしょ。」
ユアの人型機体は、剣を構え、背中に装着したウイングブースターを輝かせる。
「はい、ユアお姉さま!」
メドーラはウイングブースターの立体映像を投影すると、人型機体の背中に装着させる。
そして剣を持つと、そのままユアの人型機体に突っ込む!
カキーン!
ユアとメドーラの人型機体は再び交差する。
剣を一瞬交えると、メドーラの人型機体はそのまま飛び過ぎてしまう。
「メドーラ、私には細かい操作なんて分からないわ。」
ユアはメドーラの疑問に答える。
「私はただ、普段身体を動かす感覚で、この機体を動かしてるだけだから。」
「それはなんとも、つかみ所のない答えですわね。」
メドーラは人型機体を反転させる。
「でも、納得せざるを得ませんですわ!」
メドーラはそのままユアの人型機体に突っ込む。
カキーン!
三たび交差するメドーラとユアの人型機体。
メドーラの人型機体は、そのまま飛び過ぎてしまう。
「ユアお姉さま、私の特訓につきあって下さい。
私も、人型機体の操縦のコツを、つかめそうですわ。」
メドーラは人型機体を反転させる。
「そうこなくっちゃな!」
ユアもウイングブースターをふかして、メドーラに迫る!
マイを置き去りに、ユアとメドーラとの特訓が始まった。
マイはこの時代に、戦争するために召喚された。
北部戦線では激しい激戦がくりひろげられてたが、マイは参戦しなかった。
他の任務にあたっていたからだ。
北部戦線の激戦で、同じ召喚者であるマインとリムが、再起不能の重症を負ってしまう。
マイとメドーラ、そしてユアも北部戦線に駆り出される。
だがユアは、戦闘機での戦闘は苦手だった。
それを克服するため、戦闘機を人型に変形させる。
ユアはマイとの実戦訓練にて、見事勝利をおさめた。
メドーラは疑問だった。
なぜユアは人型の機体を操れるのかを。
人間の動きを作り物で再現するとなると、その難易度は高い。
普通に歩くにしたって、重心の移動、力の掛け具合、バランスの取り方等々、クリアするべき課題は多い。
それらを機械制御で補ったとしても、大まかな動きしか出来ない。
戦闘にともなう動きは、操縦者が微調整しなければならない。
そう、普通に戦闘機を飛ばす方が、はるかに楽なのである。
人型にする利点が、見当たらない。
地上戦なら、大型な何かと戦うのに使えなくもない。
だが、宇宙戦において、人型にするメリットは何も無い。
それにも関わらず、ユアは完璧に人型機体を操ってみせる。
マイの四機の機体からなるテトラフォーメーションでさえ、ユアは余裕で見切っている。
ふたりの戦いを、離れた所で見ているメドーラには、よく分かる。
ユアの何気ない動作が、マイの行動を誘っている。
小さな腕の振り。顔を上げる仕草。
その動きから、相手の注目点を探り当て、次の動作を予測する。
その先回りこそが、テトラフォーメーションの真骨頂。
マイは自分の意思で行動しているつもりだろうが、それはユアの想定の範囲を脱しえない。
マイの本機が、ユアの近接接近を許してしまう。
ユアの人型機体は剣を振り上げる。
「この勝負、ユアお姉さまの勝ちですわ!」
メドーラも戦闘機を人型に変形させ、剣を持ってユアの剣を受け止める。
ここでメドーラが止めなければ、マイの機体は爆散。
マイは脱出用ポッドで宇宙ステーションに戻り、爆散した機体も自動修復される。
しかし、自動修復には時間がかかる。
北部戦線に参戦がせまってる今、そんな時間はない。
マイは投影した三機の機体の立体映像を消す。
「凄いよユア、全くかなわなかったよ。」
マイはユアに賞賛の言葉を贈る。
そして同時に、自分にはユアの戦術が使えない事を、はがゆく思った。
メドーラの人型機体とユアの人型機体は、まだ剣を交えていた。
メドーラの人型機体は、小刻みに震えている。
地上とは違い、宇宙空間には両足でふんばる地面がない。
前身のための推進エネルギーを、消費し続けるしかない。
対してユアの人型機体は、どっしりと構えている。
「ユアお姉さま、教えてください。なぜあなたはこの機体を操れるのですか。」
メドーラはこれまでに感じた疑問を、ユアにぶつける。
宇宙戦における、人型機体の投入。
その利点を見出せないメドーラの目の前で、ユアはメドーラの思惑を、はるかに超えてみせている。
「さあ?私は、普通に動かしてるだけ!」
ユアは人型機体の握る剣に力をこめる。
絶妙な力の均衡でバランスの取れてた二機の人型機体だったが、メドーラの人型機体は弾き飛ばされてしまう。
メドーラの人型は、後方宙返りをしながら、後方へと吹き飛んでいく。
無重力の宇宙空間なら、どこまでもこのまま突き進む。
「メドーラ、機体を戦闘機に戻して!」
マイは思わず叫ぶ。
マイのアドバイスをかき消すように、ユアも叫ぶ。
「メドーラ、つま先と頭のバランサーを意識して!
バーニアーをふかして、微調整を続けて!」
メドーラは、ユアのアドバイスを採用する。
小刻みにバーニアーをふかす。
無重力の宇宙空間では、腕を左右に振るだけで、その方向に回転し続けてしまう。
その特性を理解し、メドーラは人型機体を制御する。
「メドーラ、あなたもウイングブースターは出せるでしょ。」
ユアの人型機体は、剣を構え、背中に装着したウイングブースターを輝かせる。
「はい、ユアお姉さま!」
メドーラはウイングブースターの立体映像を投影すると、人型機体の背中に装着させる。
そして剣を持つと、そのままユアの人型機体に突っ込む!
カキーン!
ユアとメドーラの人型機体は再び交差する。
剣を一瞬交えると、メドーラの人型機体はそのまま飛び過ぎてしまう。
「メドーラ、私には細かい操作なんて分からないわ。」
ユアはメドーラの疑問に答える。
「私はただ、普段身体を動かす感覚で、この機体を動かしてるだけだから。」
「それはなんとも、つかみ所のない答えですわね。」
メドーラは人型機体を反転させる。
「でも、納得せざるを得ませんですわ!」
メドーラはそのままユアの人型機体に突っ込む。
カキーン!
三たび交差するメドーラとユアの人型機体。
メドーラの人型機体は、そのまま飛び過ぎてしまう。
「ユアお姉さま、私の特訓につきあって下さい。
私も、人型機体の操縦のコツを、つかめそうですわ。」
メドーラは人型機体を反転させる。
「そうこなくっちゃな!」
ユアもウイングブースターをふかして、メドーラに迫る!
マイを置き去りに、ユアとメドーラとの特訓が始まった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる