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惑星ファンタジー迷走編

第71話 再会の姉妹

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、行方不明になった仲間のケイを探しに、惑星ドルフレアの地に降り立った。
 ケイは千年前にタイムスリップしていて、元の時代の密輸を防ぐ目的で封印のほこらを建てた。
 だが、それが逆効果だった。
 ケイは、その時代に行動を共にした勇者の子孫と、自分を探しにくるであろうマイに、封印の解除を託す。
 ひとつ目のほこらの封印を解いたマイ達は、ふたつ目の封印のほこらへと向かう。
 その前に、鉱山の町の冒険者ギルドによる事にする。
 いやー、前のギルドがあった町の名前を確認するために、ちょい読み返してきたけれど、あやふやにしか考えてなかったんだね。
 だって、ユアとケイの存在感が薄いからってだけで始めたのが、このシリーズだもん。
 なのにふたりは出番なしって、何考えてんだろか。
 そんな訳で、山のほこらにたどり着くのに、しばらくかかりそう。


「つけられていますわね。」
 ここ鉱山の町アムテッドの冒険者ギルドに向かう途中、メドーラは怪しげな視線を感じる。
「そのようね、バッドメアの連中かしら。」
 マイもその視線に気づく。
「どっちにしろ、町の中では襲ってこないと思いますが、用心しましょう。」
 メドーラはローラスに視線を向ける。
 ローラスはうなずき、腰に装備したソウルブレイドのクダを握りしめる。

 ローラスは元々、バッドメアの連中に狙われている。
 ケイの残した封印のほこらがらみなのだが、このシリーズの初期を読み返して思い出した設定だ。

 怪しげな尾行者は、マイ達が冒険者ギルドにたどり着くまで、何もしてこなかった。
 マイ達は、冒険者ギルドの扉を開き、中に入る。

「な」
 入った途端、メドーラの表情が一瞬こわばる。
 ギルド内部には、数名の冒険者がいて、何人かは酒を飲んでいる。
 そのうちのひとりに対して、メドーラは表情を変えたのだ。

 その冒険者は、メドーラと同じような美しい黒髪だった。
 知的なオーラをただよわせた、美人なお姉さんだ。

「私は、受付に話しを聞いてくるね。」
 メドーラの異変と、それを心配するマイを察して、ローラスは受付へと向かう。
 ミイの手を取って。
 ここでは、ひとりにならない方がいいと思ったからだ。

「メドーラ、どうしたの?」
 マイは小声でメドーラに問いかける。
「な、んで、あの人がここにいるのよ。」
 小声で答えるメドーラは、少し震えている。
「誰なの、あの人。」
 マイは再び問いかける。だが、

「おい!」
 くだんの美人なお姉さんは、自分に対して何か言ってるふたりに声をかける。
「おまえ達、何もん?こっちこいよ。」
 お姉さんは、握りしめた右こぶしの人差し指だけを立て、その人差し指をくいくいっと曲げて手招きする。
 メドーラの表情がこわばる。
 マイはそんなメドーラの手を握り、お姉さんに近づく。
 お姉さんは近づくふたりに、冒険者の腕輪を向ける。

「メドーラ・ミツエーモ・トクナーガと、マイアミン・スケード・メドローアか。」
「あなたは、エアレード・レンアーバ・トクノースね。」
 マイもお姉さんに腕輪を向ける。
 話しの腰を折られた形になったお姉さんは、いい気分ではない。
「ち。そっちのメドーラは、私の事知ってるみたいね。」
 エアレードは一瞬マイをにらむと、メドーラに視線を向ける。
 マイはその視線にゾッとする。
 優しげな視線だが、それは人に対する視線ではない。愛玩動物をめでるような視線だ。
 人に対して、そのような視線を向けられるエアレードに、マイは恐怖ににた感情を覚える。

 メドーラは怯えた声を絞り出す。
「エ、アレー…。」
 それを聞いて、エアレードはニタリと笑う。
 メドーラに向ける視線も、ますますペットをかわいがる様な度合いを強める。
「あらあら、あなたは私に落とされたクチかしら。でも私はあなたを知らないの。」
「エアレーって、あのエアレー?ゴンゴル三姉妹の。」
 マイは、どこかで聞いたような気がする記憶をたどった。
 そしてその発言は、またもやエアレーの話しの腰を折る。

「ゴンゴル三姉妹。懐かしい響きですね。」
 マイに向けられるエアレーの視線は、冷たい。
「懐かしいって、つい最近の事でしょ。」
 マイはエアレーの視線に気圧されながら、そのそぶりをみせないで言い返す。
 エアレーは、そんなマイに驚きながらも、首をふる。
「メドーが殺された時点で、ゴンゴル三姉妹はおしまいよ。」
「おしまいって。」
 マイにとって、エアレーのその言葉は意外だった。
 そりゃ三姉妹ではなくなるが、姉妹での行動は出来るはず。
 終わってなどいない。と思った。
 そんなマイに、冷たい視線を向けて、遠くをみる目線でエアレーは続ける。
「メドーが殺されて、ステーノが復讐に狂ったわ。」
「え?」
 エアレーの言葉は、メドーラには意外だった。
「確か、メドーを殺されて攻める口実が出来たって言ってたけど。」
 マイはステーノが攻めてきた時の事を思い出す。
 それは復讐などではなく、ただの口実にしていたので、マイはきれたのだった。

「あなたに、ステーノの何が分かるの?」
 エアレーの視線は、冷たさを増す。
「ステーノほど妹思いの姉は、他にいないわ。」
「そんなはずありません!」
 エアレーの発言に、メドーラも思わずさけぶ。
 ステーノが宇宙ステーションに攻めてきた時の、ステーノの言葉に対する絶望。
 その絶望は、メドーラの魂に刻まれている。
 メドーラがそれを忘れる事はないだろう。

 メドーラのその発言にエアレーは驚くが、合点がいく素材もそろっているので、エアレーもその発言を受け入れる。
「そっか、あなた達はブルレアの人間ね。」
 メドーラ達の反応から、エアレーはそれを確信する。
「他国の人に言うのもなんだけど、ステーノはあんな性格だから、勘違いされやすいのよね。」
「そんな。」
 メドーラも知らなかった事実に、言葉が震える。
「意外すぎるわね。でも、一度しか攻めてこなかったよ?」
 妹思いと言うわりに、復讐を遂げるまで攻めて来なかった事に、マイは疑問を感じる。

「ええ、あの襲撃で、仇がとれない事を悟ったわ。」
 マイに向けるエアレーの冷たい視線に、憎しみの感情がこもる。
「だから、復讐の標的をダントッパに変えたわ。あいつが諸悪の根源だってね。」

 ダントッパ。
 そもそもマイ達がステーノを撃退した戦法は、ダントッパをお手本にしている。
 本家であるダントッパに、勝てるとは思えない。
 そして、そんなマイの予想は当たる。

「それが、ステーノを最後に見た姿だったわ。」
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