上 下
61 / 215
惑星ファンタジー迷走編

第61話 禍々しい剣

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 行方不明になったケイは、千年前にタイムスリップしていた。
 ケイは、この星の鉱物資源を護る事を、千年前の時代から、マイ達に頼む。
 マイ達は了承する。
 ケイとの約束をはたしたグリーンドラゴンのナツキは、ケイのサポートAIであったミイに憑依して、行動を共にする。
 そして森から抜け出た時、執事のセバスが、冒険者のドルクに襲われていた。
 助けにはいるマイ達。
 マイは、セバスを治療する。


 禍々しい剣をふりかざし、ドルクはマイに襲いかかる。
「その服ひんむいてやって、その後は、ぐへへ!」
 ドルクの卑猥な叫び声も、治療に集中するマイの耳には届かない!

「させません!」
 ドルクの前に、ローラスが立ちはだかる。
「邪魔だあ!」
 ドルクは剣を横一線。ローラスを薙ぎ払う。

 ローラスはケイのソウルブレイドで水の剣を展開。
 右手で剣の柄を持ち、左手で剣の峰を支える。
 ドルクの剣戟を受け止める。

「ほう、やるじゃねーか。おまえも装備でレベルを補うクチか?」
 ドルクは冒険者の腕輪で、ローラスの情報を除き見る。
「レベル55?なんだよ、俺よりたけーじゃんか。
 ん?ローラス・ウル・ロトレンス?
 おまえ、あのロトレンスの子孫か。」

 ロトレンス家は250年前、かげろうおケイの民間伝承を抹殺する為、大規模な言論制圧を行った。
 その悪名は250年経った今でも、消える事はなかった。
 何に対しての言論制圧だったのか、今や誰も知らない。
 ロトレンス家の先祖が、魔王を討伐した勇者だった事も、かげろうおケイの伝承とともに抹殺された。
 そして何故没落しなかったのか、何故今も貴族の地位におさまっているのか。
 その理由も知られていない。
 その分、民衆の憎悪は増すものだった。

「丁度いい、おまえも一緒に恥ずかしめてやるぜ。
 恨むんなら、おまえの先祖を恨みな!」
 ドルクは禍々しい剣を、何度も打ちつける。
 ローラスは表情を歪ませながら、ドルクの剣を受け止める。
 避けたら、マイに当たるからだ。
 マイは、治療を終える。
 そして、自分の背後で起きてる惨劇に驚く。

 そのきっかけを、マイのパートナーのアイが、額のチップを通して教えてくれた。
 これには、マイ達は申し訳なく思う。
 元は、ケイとの約束のためである。
 ケイが次元の狭間に迷い込まなければ、こんな事にはならなかったであろう。

「か、勘違いしないでよ。」
 ローラスは、そんなマイ達の空気を感じとる。
「ご先祖さまのおかげで、あなた達に出会えた。
 この時代にあなた達に出会えた事を、ご先祖さまに感謝をすれども、恨むなんて事は、絶対無い!」
 ローラスはドルクの剣を弾き返す。

「く、そやろう、こっちが手加減してりゃあ、いい気になりやがって。」
 ドルクは一旦距離をおく。
 そして禍々しい剣にマナを込める。
「跡形もなく、消し飛ばしてやるぜ。
 お楽しみが無くなっちまうのは残念だがな。」
 ドルクの剣は、禍々しさを増していく。

 それを見て、ローラスも構えを変える。
「ヤサメ、肆の技改。」
 ソウルブレイドの水の剣を形作る水のマナが、回転をはじめる。
 それも、凄まじい勢いで。
 水の剣は、水のチェーンソーに姿を変えていた。

「死ねー!」
 ドルクが禍々しい剣をふりおろ!
「はあ!」
 ローラスも剣を交える!
「殺してはなりません!」
 ミイに憑依したナツキが叫ぶ!

 ナツキの言葉で、ローラスは我にかえる。
 ドルクの剣を叩き斬った直後、チェーンソーは水の固まりになった。
 ドルクの身体に、水をぶっかけた形になった。

 折れた剣からは、禍々しい影が叫び声を上げて出てきて、消えた。

 頭から水をかぶったドルク。
 顔にかかった水を手でぬぐうのだが、マナをおびた水は、そう簡単にはぬぐえない。

「これを使ってください。」
 マイはマジカルポシェットからタオルを取り出し、ドルクの顔をふく。
 ドルクはようやく目を開けられたのだが、マイに見とれて言葉が出ない。

「どうかなさいました?
 早くふかないと、風邪をひいてしまいますよ。」
「は、はい。」
 マイの言葉に、ドルクは慌てて頭をふく。
 ドルクが身体をふき終わると、マイはタオルを受け取ろうと手を差し出す。
 ドルクもタオルを手渡そうとするのだが、その動きを止める。
「こ、これは洗ってお返しします!」
「あら、そのままでもかまわないですよ?」
「い、いえ、私の汗が染み込んだままお返しするのは、レディに対して失礼ですから!」
「まあ、レディだなんて、そんな。」
 マイはドルクの言葉に、少し顔をあからめる。

「おい、どうなってんだ?あいつ、キャラ変わってないか。」
 ふたりの様子を遠巻きに見ていたユアは、ドルクの異変をナツキに聞いてみる。
 確かにドルクは、いかつい冒険者のいで立ちから、純心そうな青年風に、キャラデザ自体も変わっている。
「どうやら、あの禍々しい剣に心を奪われていたようじゃのう。」
 ミイに憑依しているナツキは、ドルクがいつの間にか手放して、地面に落ちてる折れた剣を見て、答えた。
「それと、ローラスさんのマナの水をぶっかけられた事で、魂も洗浄されたようですわ。」
 ナツキの言葉に、メドーラが継ぎ足す。
「ええ、私の水系マナには、浄化作用がありますわ。それにしても。」

 ユアとメドーラとローラスは、思った。
 何このマイとドルクのやり取り。
 なんかキモいんですけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

義体

奈落
SF
TSFの短い話…にしようと思ったけどできなくて分割しました。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

処理中です...