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惑星ファンタジー迷走編

第54話 ある日、森の中で熊さんに出会った

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 行方不明になったケイを探しに、惑星ドルフレアの地に降り立ったマイとユアとメドーラの三人。
 マイ達はこの地で出会ったローラスとともに、千年前の伝説の騎士、かげろうおケイの使っていた剣が納められたほこらへと向かう。
 その途中森の中で、緑色のドレスを着た少女と出会う。
 ドラゴンが住むというこの森で、少女は右脚に重症をおっていた。
 マイに治療してもらった少女は、喜びとともに、森の奥へと姿を消した。


「あら、マイお姉さま。まだこちらにいらしたのね。」
 マイはその声に振り返ると、メドーラがいた。
 メドーラは戦闘用のボディスーツから、お着替えステッキで旅のお嬢さま風の衣装に着替えていた。
 森の外で追手を足止めしていたメドーラ。
 マイ達がこの場で出会った少女と話し込んでるうちに、メドーラが追手を追い払って、追いついてしまった。
 森の入り口には馬車の番をするセバスがいたが、メドーラと一緒に来るわけにもいかず、セバスは森の入り口で待っている。
「メドーラ、追手はうまくやっつけたのね。」
 少女を治療してグロッキー状態のマイに代わり、ユアが応える。

「あんなヤツら、全然たいした事ありませんでしたわ。
 手応えが無さすぎて、拍子抜けしてまいましたわ。」
 ユアの言葉にそう応えるメドーラだったが、なぜマイ達がこの場にいるのか、疑問に思う。
 さらに、マイとローラスは疲れきっている。
 よく見ると、ユアも少し疲れ気味だ。
「ユアお姉さま、ここで何があったのですか?ここにも追手が潜んでいたのですか?」
「いや。」
 ユアは首をふる。
「傷ついた少女がいたから、治療しただけさ。」
「まあ、治療しただけでこんなにお疲れになるだなんて、どれほど重傷だったのかしら。」
 メドーラは、その傷ついた少女とやらの傷が、やたらと気になった。
 しかも、疲れきったマイお姉さまを残して、どこかへ消えたのだ。
 少し気にさわる。

「ねえ、僕達はここで休んでるから、先に行ってくれないかな。」
 マイはメドーラに声をかける。
「嫌ですわ、マイお姉さま。ローラスさんも一緒でなければ、意味ないですわ。」
 マイお姉さまのお言葉ではあるが、メドーラは否定した。
「それにマイお姉さま、こちらの巨木からは、不思議なチカラを感じますわ。」
 メドーラの言う巨木は、マイ達の目の前にある巨木。
 ついさっきまで、少女がよりかかっていた巨木だ。
 マイははって巨木に近づき、巨木に触れてみる。
「こ、これは。」
 マイは、巨木から自分の体内に、マナが流れ込むのを感じる。
 マイは少女がしていたみたいに、巨木によりかかる。
 確かに、マナが流れ込み、自身のマナが回復するのを感じる。
 マイはローラスにもうながし、ローラスも巨木によりかかる。
 そして、追手を迎え撃ったメドーラもよりかかる。
 治療の場を見張って、少し疲れたユアもよりかかる。

 四人は暫し休息をとった。
 そしてある程度回復したので、森の奥へと進む。

 森の奥に向かう途中、熊に遭遇する。
 熊はマイ達に驚いて、後ろの二本足で立つと、前足を広げて、マイ達を威嚇する。
 メドーラは左腕の肘を曲げ、自身と熊との間に左手首の冒険者の腕輪がくるようにする。
 そして冒険者の腕輪から、熊のステータスを覗き見る。
「タイニーウオーザー、レベル50ですって。タイニーウオーザーって、この熊さんの名前でしょうか、それとも種族名でしょうか。」
 メドーラの言葉に、ローラスは驚く。
「ぼ、冒険者の腕輪に、そんな機能はないはずです。
 冒険者同士でないと、ステータスの確認は出来ないはずですが。」

 マイとユアも、冒険者の腕輪で熊のステータスを覗いてみる。
 マイは、画面がザラついて、何も分からなかった。
 ユアは、画面さえ表示されず、何も分からなかった。
 つまり冒険者以外のステータスを覗けるのは、メドーラだけだった。
 これはメドーラのマナ属性に依存しているのだろうか。
 マイはその事を、この星の集合意思であるイデに問いかけてみる。
 だが、イデは答えない。
 イデは眠っているように、沈黙している。
 ともかく、この熊さんはマイ達の敵ではない。
 マイのレベルは75、ユアのレベルは80。
 メドーラは85となってるが、これは登録時に調整したためで、実際のレベルは108であった。
 ちなみに、ローラスのレベルは55で、この場にはいないセバスはレベル60である。

 メドーラがひと睨みするだけで、熊さんは萎縮する。
 熊さんは地面に何かを置くと、すごすごと去っていった。
 熊さんの置いていったものは、パールストーンと呼ばれる小さくて白い、球体の鉱物だった。
 熊さんに一番近かったユアが、そのパールストーンを拾い上げる。
 そしてローラスに見せる。
「ローラスさん、これが何か分かりますか?」
「さあ?宝石ではないようですし、ただの丸い小石ですよね。」
 ローラスはそれが何か分からなかった。
「これは、パールストーン。いや、呼び方なんてどうでもいいか。
 これはこの星の発展には欠かせない、重要な鉱物です。」
 ユアはそう言って白い鉱物をローラスに手渡した。
「皮肉ですわね。」
 その様子を見て、メドーラはつぶやく。
「この星の動物には価値が分かるのに、この星の人間には、その価値が分からないだなんて。」

 このパールストーンとは、この星から密輸されている鉱物の一種類だった。

 ともかくマイ達は、森の奥へと向かう。
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