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惑星ファンタジー迷走編

第42話 決闘、辺境の荒野で

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、仲間のユアとメドーラと共に、ドルフレアという惑星に降り立った。
 ここで仲間のケイの消息が、途絶えたのである。
 ケイを探すマイ達一行は、盗賊に襲われる馬車に遭遇する。
 マイ達が助けに行こうとしたその時、マイ達はイデのチカラに目覚めた。
 マイ達の体内の生命エネルギーが増幅され、超能力として顕現したのだ。
 この超能力の事を、この星ではマナと言う。
 マナの扱い方は、この星の集合意思でもあるイデが、教えてくれる。
 これは当然、このドルフレアの大地でのみ、有効である。
 外宇宙に出たら当然、効力は切れる。


 盗賊に襲われたこの星の人を助けるため、森の中からマイ達は飛び出した。
「おりゃー!」
 ユアがソウルブレイドの剣をふるう。
 剣先から炎の渦が放出される。
 その炎は、老紳士を襲ってた盗賊のひとりを包む。
「うわっち、なんだこりゃ!」
 盗賊は地面を転げ、身体についた火を消しにかかる。
 他の盗賊三人は、茫然と見ているだけだった。
 その隙に、マイ達三人は、この盗賊達と老紳士との間に入る。
「お怪我は、ありませんか?」
 マイは老紳士に問いかける。
「なんのこれしき、ぐぐっ。」
 強がる老紳士だが、盗賊の剣を受けた時、手首を痛めたようだ。
「僕に任せて下さい。」
 マイは老紳士の手首に、左手をかざす。
 マイの左手から緑色の光が出て、老紳士の手首を癒す。

 ユアとメドーラも、ソウルブレイドの剣で盗賊達と戦う。
 力の差は、歴然だった。
 宇宙をまたにかけて戦うユア達と、たかだか辺境の惑星の盗賊風情とでは、経験した修羅場が違う。
 ユアとメドーラは、この星の人間の実力を見るため、手加減をしていた。
 だが、相手の盗賊達には、それがわからない。
 相手は若い女性ふたりだ。自分達が負けるはずがない。
 そのはずなのに、なぜか攻めきれない。
「こうなったら、そっちのヒーラーだけでも!」
 盗賊のひとりが、マイの背後から襲いかかる。
 しかし、剣を振り上げた盗賊の動きが止まる。
 マイの展開したソウルブレイドの剣が、盗賊の首元に突きつけられていた。
「ふーん、僕なら簡単に殺せると思ったんだ。」
 マイはゆっくり立ち上がると、剣先を盗賊に突きつけたまま、盗賊の方に向き直る。
 マイはソウルブレイドを右手に持ったまま、左手を素早く振り上げる。
 そして指パッチン。
 盗賊の身体の周りに、幾筋もの烈風がはしる。
 盗賊は着ていた服を、鎧ごと切り裂かれる。
「きゃー」
 盗賊は両手で、股間と胸を隠す。と言ってもこの盗賊は女性じゃないぞ。普通に男だ。
「薄皮一枚で許してあげるわ。」
「ひ、ひい。」
 盗賊はその場に尻もちついて、後ずさる。
「あらマイお姉さま、甘いですわよ。」
 メドーラが、両手を地面にかざす。
 メドーラの近くの盗賊ふたりの立つ地面が、突然腐りだす。
「うわ、なんだこりゃ?」
「わ、わ、助けてー。」
 盗賊ふたりは、腐った地面に沈み込む。
「ちょっと待て、おまえ達。やりすぎだぞ。」
 ユアは剣撃を交えていた盗賊を蹴り飛ばし、マイとメドーラのふたりを注意する。
 盗賊達は、ようやく実力差を痛感して、戦意を喪失する。

「あ、あなた達は何者ですか?こんな強力なマナを扱うなんて。」
 ここでお嬢さま風の女性、ローラスが声をあげる。
「ただの旅の者でございますわ。」
 メドーラが笑顔で答える。
「そうそう、困ってる人を見過ごせない、ただの旅の者ですわ。」
 メドーラの言葉に、マイが続く。
「ちょっとお節介が過ぎるのが、たまにきずなのよね。」
 最後はユアがしめる。
「これほどのマナをやすやすと使いこなすなんて、私も見た事がございません。」
 老紳士もローラス同様、驚きを隠せない。
「一流の冒険者って事かしら。」
 老紳士の言葉に、ローラスはそう付け加える。
「き、聞いてないぞ、こんなの!」
 ローラスの言葉に、盗賊のひとりが叫ぶ。そして逃げ出した。
「ま、待て!」
 盗賊のひとりが止めるが、残りのふたりも逃げ出した。
「お、おまえ達まで。くそ、こうなったら!」
 残された盗賊は、手のひらに納まる大きさの玉を取りだすと、地面に思いっきり投げつける。そして逃げる。
 玉は地面に叩きつけられた衝撃で割れ、中から白い煙がたちこめる。
「あ、あれは召喚の宝珠!」
 老紳士が驚きの声をあげる。
 白い煙は密度増し、生命の脈動をはじめる。
「がーー!」
 白い煙は咆哮一閃、巨大な竜に姿を変えた。
「これは、いかに強力なマナの使い手でも、太刀打ち出来ませんぞ。」
 老紳士は冷や汗を流す。
 ユアはおもむろに左手をかかげあげる。
 その手のひらから火の玉が出てきて、回転しはじめる。
 回転する火の玉は温度と密度を高め、ユアはその火の玉を竜に投げつける。
「あれ、ほんとだ。効いてないね。」
 ユアの火の玉攻撃は、効果なかった。
「そっちはどう?」
 ユアはマイとメドーラに声をかける。
 マイはかかげあげた両手を、思いっきり振りおろす。
 真空の刃が竜を襲う。
 メドーラは両手を地面にかざし、竜の立つ地面を腐らせ泡立てる。
「僕はダメみたい。」
「私もですわ。」
 ふたりの攻撃も効果なかった。
「あなたがたも、お逃げ下さい!」
 老紳士は倒れた馬車を起こしながらマイ達に声かける。
「逃げるって、足止めは必要でしょ。」
 ユアがソウルブレイドの剣を構えるが、どう攻めるべきか、その糸口がつかめない。
 と言うのも、竜は巨大すぎる。ユア達の背丈の五倍はある。
「胸にある宝珠を壊せれば、召喚獣は消滅するのですが。」
 ここでローラスが助言してくれた。
「と言っても、高すぎるわよ。」
 マイが真空の刃を飛ばすも、竜の胸の宝珠に届く頃には、威力は半減している。

「だったら、戦闘機で攻撃しましょう!」
 メドーラが自分の戦闘機を呼び、乗り込む。
「待てメドー!」
 ユアが止めるが、メドーラの戦闘機は遥か彼方へと飛び去った。
 マイ達三人の戦闘機は、宇宙戦用の戦闘機である。
 宇宙空間を超高速で駆ける戦闘機に、地上に留まる敵を攻撃するのは不得手だった。
 程なくメドーラは戻ってきた。そして、
「先にやっておくべきでしたわ。ヒューマノイドチェンジ!」
 メドーラの戦闘機は、人型に姿を変えた。
 その大きさは、竜とほぼ同じ。
 メドーラの人型戦闘機は、備え付けの機関銃を竜に掃射。
 竜は悲鳴を上げる。
 機関銃の制動は反動で乱れ、胸の宝珠に当たらない。
 メドーラの人型戦闘機は、ビームサーベルを取り出す。
 ビームサーベルを胸の宝珠に突き刺す。
 宝珠は砕け、竜は消滅した。
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