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第14話 王女の婚約者
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青い龍の浄化に成功し、悪夢にうなされる王妃様を救い出す事に成功した、ユウト達一行。
しかし正気を取り戻した青い龍は、赤の国の王女ルビーとルビーの連れる女性戦士によって、殺されてしまう。
ルビーはこれを、ジュエガルド統一の為と言う。
そしてルビーに協力する女性戦士の正体は、ユウトのバイト先の先輩である、山吹奏恵だった。
ユウトとフィーナとアスカの三人は、転移魔法によって龍神山のふもとから、青の城に戻ってきた。
青の城の城前広場を、お城の門へと向かって歩く三人。
「まったく。ユウトがあんなに取り乱すだなんて、思わなかったわ。」
フィーナは少しあきれ顔。
「しょ、しょうがないだろ、フィーナが死んじゃったと思ったんだから。」
ユウトは少し顔が赤くなる。
「おかげで、ルビーを逃がしてしまったわ。
あいつ、何を企んでたんだろうね。」
アスカも少しあきれ顔。
「あらそれ、私が悪いって事?」
フィーナは自分に文句言われたみたいに聞こえたので、聞き返してみる。
「誰もそんな事言ってないけど、その自覚はあるようね。」
アスカはフィーナの言葉に乗ってみる。
「何よそれ!」
フィーナは思わず激昂。
「アスカこそ、ルビーが封印の呪文唱えてる時に、捕まえればよかったじゃん!
何ぼーっと突っ立てたのよ!」
「はあ?」
アスカも思わず激昂。
「だってお母様の青い龍が、目の前で殺されちゃったのよ。
そりゃ呆然ってなるでしょ!」
アスカはこの台詞をはいて、ハッとする。
そう、妹のフィーナだって、自分と同じ気持ちだったのだ。
アスカにもそれは分かってるのだが、売り言葉に買い言葉。
つい喧嘩ごしになってしまった。
「フィーナ、ごめん、ちょっと言い過ぎた。」
「アスカちゃん、フィーナちゃん!
喧嘩なんかしちゃ、ダメでしょ!」
アスカがフィーナに謝ろうとしたら、それをさえぎるように王様がわってはいる。
「お、お父様?」
アスカとフィーナは、王様の突然の登場に驚く。
「パパ様と呼びなさいって、いつも言ってるでしょ!」
と王様も激昂。
「嫌よ、そんなの!」
激昂し返すフィーナと、思わずため息をつくアスカ。
「フィーナちゃんの下僕の、あー!」
王様は娘の反応を無視して、ユウトをにらむ。
「ユウトです。」
ユウトは自分の名前が出てこない王様に、自分の名前を告げる。
「ユウト君!
君がついていながら、アスカちゃんとフィーナちゃんを喧嘩させちゃ、ダメでしょ!」
「えー?」
王様は娘の姉妹喧嘩の責任を、ユウトに押しつける。
「ちょっとパパ様、ユウトは関係ないでしょ。」
すかさずアスカが、ユウトの擁護にまわる。
アスカに先に言われて、フィーナは少しムッとする。
「もう、アスカちゃんはほんと、優しいんだから。」
ユウトをイカつくにらんでた王様は、思わず表情がデレる。
「うわー。」
ユウトとフィーナは、ドン引く。
アスカも同じ気持ちだが、自分に振られている手前、苦笑いを浮かべるしか無かった。
「さあさ、ふたりとも、ママ様が待ってるから、早く行ってあげなさい。」
王様も、そんなふたりの気持ちを知ってか知らずか、とっとと話しを進める。
「え、お母様がお目覚めになられたの?」
フィーナの表情が輝く。
「ああ、ママ様も、おまえ達に会いたがっているぞ。」
王様はにこやかな表情を浮かべる。
先ほどの娘にデレた表情とは違い、今度は優しくて頼りがいのある父親の表情だった。
表情を輝かせた双子の姉妹が、顔を見合わせる。
そしてふたりは、王妃様がいる寝室へと駆け出す。
ユウトも後を追おうとするのだが、そんなユウトの肩を、王様ががっちりとつかむ。
「どこに行くのかね、ユウト君。」
「えと、僕も王妃様のとこ、ろえー!」
ユウトの肩をつかむ王様の手に、さらに力が入る。
「い、痛いです、パパ様。」
「おまえにパパ様呼ばわりされる覚えはないわー!」
「ぎゃー!」
王様の手にはさらに力が入り、ユウトの肩が悲鳴をあげる。
「ぎ、ギブギブ。」
ユウトは肩をつかむ王様の手を、タップする。
王様は力をゆるめるが、離しはしなかった。
「ユウト君、君とふたりきりで話しをしたいんだが、いいよね?」
「な、何をでしょう、パパさ、まぁ!」
王様は再び、ユウトの肩をつかむ手に、力をこめる。
「ユウト君、私は冗談は嫌いだ。」
王様は、ユウトの肩から手を離す。
「ついてきなさい。」
そして歩きだす。
ユウトは王様につかまれてた肩を押さえながら、後に続く。
王様の、有無を言わせない迫力。
それにユウトは参ってしまった。
王様はとある部屋に、ユウトを案内する。
そこは厳かな神殿の様に、ユウトは感じた。
部屋の奥には女神像が祀られている。
女神像の目の前の台座には、水晶玉が鎮座している。
王様は女神像に向かって手を合わせ、目をつぶる。
ぶつくさと何か言って、目を開ける。
「さあユウト君、君も。」
王様に促され、ユウトも王様のマネをする。
王様が何を言ってたのか分からなかったので、ユウトの口は閉じたままだった。
「ユウト君、この水晶玉に、左手をかざしなさい。」
王様は自分の左手を水晶玉にかざしながら、ユウトに言う。
「はい。」
ユウトが水晶玉の前に進むと、王様は手をひっこめて、数歩後ろに下がる。
ユウトは左手を、水晶玉にかざす。
水晶玉は、ほのかに青く輝く。
その青い輝きの他に、赤い輝きと緑色の輝きが現れる。
三色の輝きは混ざりあい、薄い緑色の輝きになる。
そして、眩しい程の輝きを放つ。
ユウトは思わず目を閉じる。
そして眩しい輝きが収まるのを感じて、目を開ける。
水晶玉は元に戻っていた。
そしてユウトの左手首に、腕輪がはめられていた。
それはフィーナ達の腕輪と、同じ物のようにユウトは感じた。
しかしフィーナ達の腕輪にはあった宝玉が、ユウトの腕輪には無かった。
宝玉は無いが、宝玉をはめこむ為と思われる、窪みは有った。
「これは?」
と言ってユウトは王様に視線を向ける。
王様は、何やら複雑な表情を浮かべ、考えこんでいる。
「あの、パパ様?」
「おお、すまない、ユウト君。」
ユウトの呼びかけで、王様は我にかえる。
「王様、どうかなされたのですか?」
ユウトは腕輪の事も気になるが、王様の事の方が気になった。
「うむ、ユウト君の属性は、てっきり青かと思ってたのだが、赤も緑も混ざっていて、どうやら、緑が一番濃いらしい。」
「そうですか。」
とユウトは答えるが、王様の言ってる意味は、さっぱり分からなかった。
「王様、これは何でしょうか。」
ユウトは左手の甲を王様に向けて、左手首の腕輪を、右手でコンコンする。
「それは、退魔の腕輪だな。」
「退魔の腕輪ですか?
浄化の腕輪ではなくて。」
確か、フィーナ達の腕輪は、浄化の腕輪だったと思う。
自分の腕輪は違う事に、ユウトは疑問を持つ。
「うむ、青の国の騎士の証しなのだが、どうやらユウト君は、赤の国、緑の国の騎士にも、なれるらしい。」
「それってつまり、どう言う事ですか。」
ユウトは、王様の言ってる事が、よく分からなかった。
フィーナの騎士の様な自覚は、確かにある。
だけどフィーナだけではなく、三国を守れって事だろうか。
「うむ、私にも分からん。」
王様は、キリッとした表情でそう告げる。
ユウトはずっこけるが、気を取り直して聞き返す。
「えと、赤の国とか緑の国にも、行ってみた方が良いですかね。」
王様は少し考えてから、思いを述べる。
「うむ、どちらの国の城にも、これと同じ水晶玉は有る。
ふたつの国にも行ってみると、何かおこるかもしれん。
しかし、」
王様はユウトの意見に賛同はするものの、何かが引っかかる。
複数の属性を持つ者など、聞いた事がない。
マスタージュエルが砕かれた事と、何か関係があるのだろうか。
「あ、ユウト達、こんな所にいたんだ。」
部屋の扉が開き、フィーナが入ってくる。
「お母様が重要な話しがあるから、早く来なさいって。」
フィーナはふたりに、そう告げる。
「分かったよ、フィーナちゃん。
パパ様達はもう少し話す事があるから、先行って待っててね。」
王様はデレた笑顔をフィーナに向ける。
「わ、分かったわ。早くすませてね。」
フィーナは引きつった笑顔で答えると、部屋を後にした。
「さてユウト君。」
フィーナの姿が見えなくなると、王様は表情を引き締めて、ユウトに話しをふる。
「君はうちのフィーナちゃんについて、どう思ってるのかね。」
「え?」
突然フィーナの事を聞かれ、ユウトは固まってしまう。
「フィーナちゃんに対して、特別な感情を、持ってるだろ。」
と、王様はユウトを問い詰める。
「と、特別な感情と言いますと?」
ユウトは聞き返す。
「ふ、まあ良い。」
王様は自分で振った話しを、ひっこめる。
ユウトは少し安心する。
「だが、覚えておきたまえ。
フィーナちゃんの結婚相手は、この国一番の剣術使いに決まっている。」
「え?」
「婚前剣術大会で優勝した者が、王女の夫になる。
それがこの国の掟だ。」
王様の発言に、ユウトは衝撃を受ける。
「待ってください。
それでは、フィーナの感情は、どうなるのです。」
「感情?」
「フィーナは、好きでもない相手と、結婚させられるのですか!」
ユウトは激昂する。
「ユウト君、王女と言うのは、強い者に惚れるのだよ。
現に私も、剣術大会に優勝して、ママ様と結婚したのだよ。」
王様は、今までに見せた事のない、真剣な表情をユウトに向ける。
「く、」
ユウトはたじろぐ。
王様の言葉を文字通り捉えるなら、フィーナは好きでもない相手に惚れさせられて、結婚させられると言う事。
「させませんよ、そんな事。」
ユウトも心の奥底から、怒りににた感情が湧き上がる。
「ならばパパ様、この俺がその大会で優勝して、フィーナが本当に好きな相手と、結婚させてやります!」
ユウトの言葉に、王様の表情も一瞬ゆるむ。
「ふ、おまえにパパ様呼ばわりされる覚えはない。」
「え?」
王様は穏やかに、その台詞を発言する。
王様はユウトに背を向けて歩きだす。
「だが、おまえ以外には、呼ばれたくもないんだよな。」
歩きながらつぶやくその言葉を、ユウトは聞き取れなかった。
「何をしている、ママ様が待ってるぞ。」
「あ、はい。」
王様は部屋を出て立ち止まり、ユウトに声をかける。
そして廊下を左方向へと進む。
ユウトが王様の後を追って部屋から出ると、扉の右側に、フィーナが立っていた。
次回予告
はあーい、私、フィーナのママ様ですぅ。
もうユウト君ったら、何やってるのかしら。
青い龍の呪いを解いてくれたらさあ、すぐに駆けつけてくれるのが、頼れる騎士ってヤツでしょ。
ほんと、何やってるのかしら。
え、ユウト君はフィーナちゃんのナイトですって?
わ、私の事も助けてくれたんだから、私のナイト様なの!
もう、ユウト君には伝えたい事もあるんだけどなぁ。
え?ユウト君をどう思ってるかって?
それは、パパ様の若い頃の方が、素敵ですから、ほほほ。
次回異世界を救ってくれと、妖精さんに頼まれました、ルビーの哀しい過去。
お楽しみに。
※まだ次回分は書いてないので、内容が異なる場合もあります。
しかし正気を取り戻した青い龍は、赤の国の王女ルビーとルビーの連れる女性戦士によって、殺されてしまう。
ルビーはこれを、ジュエガルド統一の為と言う。
そしてルビーに協力する女性戦士の正体は、ユウトのバイト先の先輩である、山吹奏恵だった。
ユウトとフィーナとアスカの三人は、転移魔法によって龍神山のふもとから、青の城に戻ってきた。
青の城の城前広場を、お城の門へと向かって歩く三人。
「まったく。ユウトがあんなに取り乱すだなんて、思わなかったわ。」
フィーナは少しあきれ顔。
「しょ、しょうがないだろ、フィーナが死んじゃったと思ったんだから。」
ユウトは少し顔が赤くなる。
「おかげで、ルビーを逃がしてしまったわ。
あいつ、何を企んでたんだろうね。」
アスカも少しあきれ顔。
「あらそれ、私が悪いって事?」
フィーナは自分に文句言われたみたいに聞こえたので、聞き返してみる。
「誰もそんな事言ってないけど、その自覚はあるようね。」
アスカはフィーナの言葉に乗ってみる。
「何よそれ!」
フィーナは思わず激昂。
「アスカこそ、ルビーが封印の呪文唱えてる時に、捕まえればよかったじゃん!
何ぼーっと突っ立てたのよ!」
「はあ?」
アスカも思わず激昂。
「だってお母様の青い龍が、目の前で殺されちゃったのよ。
そりゃ呆然ってなるでしょ!」
アスカはこの台詞をはいて、ハッとする。
そう、妹のフィーナだって、自分と同じ気持ちだったのだ。
アスカにもそれは分かってるのだが、売り言葉に買い言葉。
つい喧嘩ごしになってしまった。
「フィーナ、ごめん、ちょっと言い過ぎた。」
「アスカちゃん、フィーナちゃん!
喧嘩なんかしちゃ、ダメでしょ!」
アスカがフィーナに謝ろうとしたら、それをさえぎるように王様がわってはいる。
「お、お父様?」
アスカとフィーナは、王様の突然の登場に驚く。
「パパ様と呼びなさいって、いつも言ってるでしょ!」
と王様も激昂。
「嫌よ、そんなの!」
激昂し返すフィーナと、思わずため息をつくアスカ。
「フィーナちゃんの下僕の、あー!」
王様は娘の反応を無視して、ユウトをにらむ。
「ユウトです。」
ユウトは自分の名前が出てこない王様に、自分の名前を告げる。
「ユウト君!
君がついていながら、アスカちゃんとフィーナちゃんを喧嘩させちゃ、ダメでしょ!」
「えー?」
王様は娘の姉妹喧嘩の責任を、ユウトに押しつける。
「ちょっとパパ様、ユウトは関係ないでしょ。」
すかさずアスカが、ユウトの擁護にまわる。
アスカに先に言われて、フィーナは少しムッとする。
「もう、アスカちゃんはほんと、優しいんだから。」
ユウトをイカつくにらんでた王様は、思わず表情がデレる。
「うわー。」
ユウトとフィーナは、ドン引く。
アスカも同じ気持ちだが、自分に振られている手前、苦笑いを浮かべるしか無かった。
「さあさ、ふたりとも、ママ様が待ってるから、早く行ってあげなさい。」
王様も、そんなふたりの気持ちを知ってか知らずか、とっとと話しを進める。
「え、お母様がお目覚めになられたの?」
フィーナの表情が輝く。
「ああ、ママ様も、おまえ達に会いたがっているぞ。」
王様はにこやかな表情を浮かべる。
先ほどの娘にデレた表情とは違い、今度は優しくて頼りがいのある父親の表情だった。
表情を輝かせた双子の姉妹が、顔を見合わせる。
そしてふたりは、王妃様がいる寝室へと駆け出す。
ユウトも後を追おうとするのだが、そんなユウトの肩を、王様ががっちりとつかむ。
「どこに行くのかね、ユウト君。」
「えと、僕も王妃様のとこ、ろえー!」
ユウトの肩をつかむ王様の手に、さらに力が入る。
「い、痛いです、パパ様。」
「おまえにパパ様呼ばわりされる覚えはないわー!」
「ぎゃー!」
王様の手にはさらに力が入り、ユウトの肩が悲鳴をあげる。
「ぎ、ギブギブ。」
ユウトは肩をつかむ王様の手を、タップする。
王様は力をゆるめるが、離しはしなかった。
「ユウト君、君とふたりきりで話しをしたいんだが、いいよね?」
「な、何をでしょう、パパさ、まぁ!」
王様は再び、ユウトの肩をつかむ手に、力をこめる。
「ユウト君、私は冗談は嫌いだ。」
王様は、ユウトの肩から手を離す。
「ついてきなさい。」
そして歩きだす。
ユウトは王様につかまれてた肩を押さえながら、後に続く。
王様の、有無を言わせない迫力。
それにユウトは参ってしまった。
王様はとある部屋に、ユウトを案内する。
そこは厳かな神殿の様に、ユウトは感じた。
部屋の奥には女神像が祀られている。
女神像の目の前の台座には、水晶玉が鎮座している。
王様は女神像に向かって手を合わせ、目をつぶる。
ぶつくさと何か言って、目を開ける。
「さあユウト君、君も。」
王様に促され、ユウトも王様のマネをする。
王様が何を言ってたのか分からなかったので、ユウトの口は閉じたままだった。
「ユウト君、この水晶玉に、左手をかざしなさい。」
王様は自分の左手を水晶玉にかざしながら、ユウトに言う。
「はい。」
ユウトが水晶玉の前に進むと、王様は手をひっこめて、数歩後ろに下がる。
ユウトは左手を、水晶玉にかざす。
水晶玉は、ほのかに青く輝く。
その青い輝きの他に、赤い輝きと緑色の輝きが現れる。
三色の輝きは混ざりあい、薄い緑色の輝きになる。
そして、眩しい程の輝きを放つ。
ユウトは思わず目を閉じる。
そして眩しい輝きが収まるのを感じて、目を開ける。
水晶玉は元に戻っていた。
そしてユウトの左手首に、腕輪がはめられていた。
それはフィーナ達の腕輪と、同じ物のようにユウトは感じた。
しかしフィーナ達の腕輪にはあった宝玉が、ユウトの腕輪には無かった。
宝玉は無いが、宝玉をはめこむ為と思われる、窪みは有った。
「これは?」
と言ってユウトは王様に視線を向ける。
王様は、何やら複雑な表情を浮かべ、考えこんでいる。
「あの、パパ様?」
「おお、すまない、ユウト君。」
ユウトの呼びかけで、王様は我にかえる。
「王様、どうかなされたのですか?」
ユウトは腕輪の事も気になるが、王様の事の方が気になった。
「うむ、ユウト君の属性は、てっきり青かと思ってたのだが、赤も緑も混ざっていて、どうやら、緑が一番濃いらしい。」
「そうですか。」
とユウトは答えるが、王様の言ってる意味は、さっぱり分からなかった。
「王様、これは何でしょうか。」
ユウトは左手の甲を王様に向けて、左手首の腕輪を、右手でコンコンする。
「それは、退魔の腕輪だな。」
「退魔の腕輪ですか?
浄化の腕輪ではなくて。」
確か、フィーナ達の腕輪は、浄化の腕輪だったと思う。
自分の腕輪は違う事に、ユウトは疑問を持つ。
「うむ、青の国の騎士の証しなのだが、どうやらユウト君は、赤の国、緑の国の騎士にも、なれるらしい。」
「それってつまり、どう言う事ですか。」
ユウトは、王様の言ってる事が、よく分からなかった。
フィーナの騎士の様な自覚は、確かにある。
だけどフィーナだけではなく、三国を守れって事だろうか。
「うむ、私にも分からん。」
王様は、キリッとした表情でそう告げる。
ユウトはずっこけるが、気を取り直して聞き返す。
「えと、赤の国とか緑の国にも、行ってみた方が良いですかね。」
王様は少し考えてから、思いを述べる。
「うむ、どちらの国の城にも、これと同じ水晶玉は有る。
ふたつの国にも行ってみると、何かおこるかもしれん。
しかし、」
王様はユウトの意見に賛同はするものの、何かが引っかかる。
複数の属性を持つ者など、聞いた事がない。
マスタージュエルが砕かれた事と、何か関係があるのだろうか。
「あ、ユウト達、こんな所にいたんだ。」
部屋の扉が開き、フィーナが入ってくる。
「お母様が重要な話しがあるから、早く来なさいって。」
フィーナはふたりに、そう告げる。
「分かったよ、フィーナちゃん。
パパ様達はもう少し話す事があるから、先行って待っててね。」
王様はデレた笑顔をフィーナに向ける。
「わ、分かったわ。早くすませてね。」
フィーナは引きつった笑顔で答えると、部屋を後にした。
「さてユウト君。」
フィーナの姿が見えなくなると、王様は表情を引き締めて、ユウトに話しをふる。
「君はうちのフィーナちゃんについて、どう思ってるのかね。」
「え?」
突然フィーナの事を聞かれ、ユウトは固まってしまう。
「フィーナちゃんに対して、特別な感情を、持ってるだろ。」
と、王様はユウトを問い詰める。
「と、特別な感情と言いますと?」
ユウトは聞き返す。
「ふ、まあ良い。」
王様は自分で振った話しを、ひっこめる。
ユウトは少し安心する。
「だが、覚えておきたまえ。
フィーナちゃんの結婚相手は、この国一番の剣術使いに決まっている。」
「え?」
「婚前剣術大会で優勝した者が、王女の夫になる。
それがこの国の掟だ。」
王様の発言に、ユウトは衝撃を受ける。
「待ってください。
それでは、フィーナの感情は、どうなるのです。」
「感情?」
「フィーナは、好きでもない相手と、結婚させられるのですか!」
ユウトは激昂する。
「ユウト君、王女と言うのは、強い者に惚れるのだよ。
現に私も、剣術大会に優勝して、ママ様と結婚したのだよ。」
王様は、今までに見せた事のない、真剣な表情をユウトに向ける。
「く、」
ユウトはたじろぐ。
王様の言葉を文字通り捉えるなら、フィーナは好きでもない相手に惚れさせられて、結婚させられると言う事。
「させませんよ、そんな事。」
ユウトも心の奥底から、怒りににた感情が湧き上がる。
「ならばパパ様、この俺がその大会で優勝して、フィーナが本当に好きな相手と、結婚させてやります!」
ユウトの言葉に、王様の表情も一瞬ゆるむ。
「ふ、おまえにパパ様呼ばわりされる覚えはない。」
「え?」
王様は穏やかに、その台詞を発言する。
王様はユウトに背を向けて歩きだす。
「だが、おまえ以外には、呼ばれたくもないんだよな。」
歩きながらつぶやくその言葉を、ユウトは聞き取れなかった。
「何をしている、ママ様が待ってるぞ。」
「あ、はい。」
王様は部屋を出て立ち止まり、ユウトに声をかける。
そして廊下を左方向へと進む。
ユウトが王様の後を追って部屋から出ると、扉の右側に、フィーナが立っていた。
次回予告
はあーい、私、フィーナのママ様ですぅ。
もうユウト君ったら、何やってるのかしら。
青い龍の呪いを解いてくれたらさあ、すぐに駆けつけてくれるのが、頼れる騎士ってヤツでしょ。
ほんと、何やってるのかしら。
え、ユウト君はフィーナちゃんのナイトですって?
わ、私の事も助けてくれたんだから、私のナイト様なの!
もう、ユウト君には伝えたい事もあるんだけどなぁ。
え?ユウト君をどう思ってるかって?
それは、パパ様の若い頃の方が、素敵ですから、ほほほ。
次回異世界を救ってくれと、妖精さんに頼まれました、ルビーの哀しい過去。
お楽しみに。
※まだ次回分は書いてないので、内容が異なる場合もあります。
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