上 下
212 / 221
荒野を行く

第212話 勇者妖精さんと再会

しおりを挟む
 長かった俺の戦いも、ついに終わりを迎える。
 緊張の糸が切れた俺は、その場に倒れこむ。
 これでサーイターマルドは救われたのだろうか。
 ローザは無事なのか。
 ルギアのお守りで確認しようとする俺の目の前に、なんと竜王が甦る!



 竜王はニヤりとほくそ笑むと、口を大きく開けて、俺めがけて倒れこむ!
 ヤツも体力が尽き、そんな攻撃手段しか残されていない。
 俺も咄嗟に反応出来ない!

「ひい!」

 俺は右手に掴んだ幻の金水晶、左手に握ったルギアのお守り、このふたつを目の前に持ってきて、頭部をガードするのが精一杯だ!

 ぴかりん!

 幻の金水晶がなんと、一筋の光りを放つ!
 その光りが、竜王を貫く!

「ぐぎゃああ!」
 竜王は後方に押された感じに後ずさり、たたらを踏む。

 金水晶の輝きは、一瞬だけ更に増して、その後輝きを失った。

「ぐぎゃああ!」
 竜王の身体から、黒い影の塊りが立ち昇ると、そのまま四散して消滅した。

 竜王は直立のドラゴンの姿から、最初に会ったオタク面のおっさんの姿に戻った。
 そしてうつ伏せに倒れる。

 最初はフードを被ってて分からなかったが、このおっさんの頭はふさふさだった。ハゲではなかった。
 フードが無いって事は、当然ローブもない。
 目の前に倒れているのは、素っ裸なおっさんだ。
 うつ伏せに倒れているので、粗末なモノは見なくてすんだ。

 そんなおっさんの身体が、徐々に消滅していく。
 このおっさんも、魔物である事には、変わりなかった。

「もう、ダメじゃない。最後の最後まで、油断は禁物でしょ。」

 聞き覚えのある声。
 その出どころは、左手に持つルギアのお守りの向こう。
 俺が視線向けると、ルギアのお守りの向こうから、小さな顔がひょこっと姿を見せる。
 それは、魔王の城の地下三階だか四階だかで出会った、あの妖精さんだった。

「え?あんたは?」
「ふふ、これで聖力を回復させてもらったわ。」
 俺の曖昧な問いに、かみ合わない妖精さんの答え。

 これとは、ルギアのお守りだろう。
 残り時間がデジタル表示された、ルギアのお守り。
 俺は思い出したかのように、デジタル表示を確認する。

 そこには、何も表示されていない。

「何?」
 俺は思わず上体を起こす。
 この表情が消えてるって事は、間に合わなかったって事か?

「ちょっと。急に動かないでよ。」
 今の俺の動きで振り下ろされた妖精さんが、文句を言う。
 そしてまた、ルギアのお守りに飛び乗る。

「なあ、表示が消えてるんだけど、これって間に合わなかったのか。」
 俺は妖精さんに聞いてみる。

「ああ、これ。私が聖力の回復に利用させてもらったから、機能は低下してるのよ。」

 な、何ぃ!
 て事は、俺が間に合ったかどうか、分からないじゃんか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...