上 下
208 / 221
荒野を行く

第208話 勇者逃げられない!

しおりを挟む
 魔王の城の地下宮殿にて、魔王を自称するおっさんを、ついに倒した!
 こいつはおそらく影武者。本物の魔王がまだどこかにいるはず。油断は出来ない。


 それにしても、死体が消えない。
 このおっさん、魔物じゃないのか?
 お金も落とさないし、俺は普通のおっさんを殺してしまったのか?

「くくくく。」
 罪の意識が芽生える俺に、おっさんの死体は笑いかける。
 って、おっさんは生きていた!

 うつ伏せに倒れたおっさんは、ゆっくり起き上がる。
 と同時に、身体が巨大化し、身に纏ったローブが破ける。
 ローブの下から現れたその身体は、人ではなかった。

 俺の目の前には、巨大な竜がいた。
 二本足で直立する、青いウロコのドラゴン。

「りゅうおう、」
 俺は思わずつぶやく。

 魔王は別名竜王と呼ばれていると、ルギア様は仰っていた。
 今俺の目の前にいるのは、まさに竜王。
 そう、あのおっさんは竜王の仮の姿だったのだ!

「竜王?おまえがその名を呼ぶのか。勇者ウラワの子孫のおまえが!」
 ボワアアア!
 竜王は怒りの言葉とともに、炎を吐いた!

 く、ぴかぴーかの呪文より威力あるぞ!

「竜王は、俺の兄貴の名前だ!勇者ウラワの犠牲になった、俺の兄貴だ!」
 ボワアアア!

 竜王は再び、炎を吐く!

「く、ぴかぴーか!」
 俺はぴかぴーかの呪文を唱えて反撃する!

 目の前にいる竜王は、俺の三倍くらい背が高い。
 こんなヤツ、どう攻撃したらいいんだよ。
 海底洞窟で対峙したドラゴンさんもでかかったが、ドラゴンさんは四つん這い。
 ドラゴンさんの頭部は、俺の攻撃が届く高さにあった。
 対してこいつは、直立。
 俺の攻撃は届かない!

「ふん、こんな攻撃じゃ、俺は倒せないぞ。」
 ぴかぴーかの直撃をくらった竜王は、俺を蔑んでニヤける。
 そして右腕を振り下ろす。

 ズシャ!

 何気ない竜王の攻撃。
 しかしその一撃は、俺が今までくらったどの一撃よりも、ダメージは凄かった。

「く、こなくそ!」
 俺はウラワの剣で、竜王の左脚を攻撃!
 まずは、片ひざをつかす事から始めよう。
 それが、強大な敵を倒す事につながる!

「いてーじゃねーか!」
 竜王は反射的に、左脚で俺を蹴り飛ばす!

「ぐは!」
 吹っ飛んだ俺は、壁に凄い勢いで叩きつけられる!
 離宮の壁が崩れ、俺は離宮の外に倒れる。

「ヒーリングっと。」
 俺は回復呪文を唱えて、体力を回復させる。

「ふふふ、楽には殺さないさ。俺が飽きるまで、いたぶってやる。」
 竜王は背中の小さな翼をはためかせる。
 自由に空を飛ぶには、小さすぎる翼。
 だが、ジャンプを補助するのには、充分だった。

 竜王は崩れた壁から、外へと飛び出る。
 それは、俺の退路を完全に断つ事を意味していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...