上 下
203 / 221
荒野を行く

第203話 勇者幻の金水晶を見る

しおりを挟む
 魔王の城の地下七階、ここは荘厳なルギア神殿の名残りを見せていた。
 元は見事だった地下庭園も、手入れする者がいなければ、荒れ放題だった。


 離宮の奥へと進む俺に、容赦なく魔物達が襲ってくる。
 今の俺には、一撃で倒せるこいつら。
 本当にうざったい。

 歩けばヒットポイントが回復するウラワの鎧の効果で、俺のヒットポイントが全快する。
 と同時に、離宮の最奥にたどり着く。

 ここには玉座があって、ひとりのおっさんが座ってた。
 こいつが魔王かとも思ったが、そんなはずないだろう。

 魔王は別名竜王とも呼ばれている。
 少なくともルギア様は、竜王と呼んでんいた。

 竜王と呼ばれるからには、どこかドラゴンっぽい所があるはず。
 だけど目の前にいるのは、ただのおっさんだ。

 黒っぽいフードを被り、そこから見えるご尊顔は、普通にオタクっぽい。
 ゆったりとしたローブを着ているが、ぽっこりしたお腹は隠しきれていない。

 だけどこの場にいるおっさんが、ただのおっさんである訳がない。
「影武者か。」
 俺はボソりとつぶやく。

 玉座に座ったおっさんは、閉じてた目を開けて、俺を見る。

「よくぞここまでたどり着いたな、勇者ユウタよ。」
 おっさんは俺に話しかけてきた。

「なあ、魔王はどこにいる。俺は魔王を倒しに来た。」
 俺はウラワの剣に手をかけながら、問いただす。
 もしかしたら、この玉座の後ろにも、地下へと続く階段があるかもしれない。
 その奥にこそ、真の魔王がいるはず。ここで時間を浪費する訳にもいかない!

「おいおい、おまえの目の前にいるだろう。私が魔王だ。」
「いや、おまえ影武者だろ。ちゃんと答えろよ。魔王はどこだ。」

 別に影武者を殺してもいいが、普通の魔物と違い、話しの通じるヤツを殺すのは、どこか抵抗がある。

「ふふふ、影武者なら、こんな物は持っていないだろ。」
 ほくそ笑むおっさんの背後に、何かが浮かぶ。

 くすんだ黄金色した、いびつな卵?
 なんだこれ?

「ふ、知らんのか。これが幻の金水晶だ。」

 え、何?
 幻の金水晶?
 なんだそれ。

 確か、月のプリンセスが持ってるのは、銀水晶だろ。金水晶ってなんだよ。

「ふふふ、ははは、ふわーっはっはぁ!」
「何がおかしい!」

 おっさんはなぜか急に笑いだす。

「いやおまえ、物語のあらすじも知らんのか。」
 おっさんは笑いをこらえてる。なんかムカつく。
 つか、あらすじか。そんなの読み飛ばすわ。
 とは言え、このおっさんムカつくから、確認してみるか。

 ふむふむ。
 なるほど。
 いやちょっと待て。

 闇の魔王って、15年前に俺の故郷であるムサシの街を襲ったんだろ?
 で、その頃ローザ姫を連れ去ったのか?
 じゃあ、俺が見たローザは、赤ちゃんの時にさらわれたのか?
 どう見てもあいつ、10歳くらいなんだが。

 計算が合わないぞ。どう言う事だ、これは!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...