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荒野を行く

第192話 勇者六魔将の息子を撃破する(ネタバレ禁止!

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 魔王の島で出会ったスズキークJr.ジュニア
 彼は父である魔王軍六魔将のひとりスズキくんより高い壁となって、俺の前に立ちはだかる。


 スズキークJr.の蹴りで、俺は吹き飛ばされ、距離が出来る。
 スズキークJr.は、素早く両手で印を結ぶ。
 それは上級電撃呪文ピカラリアへの予備動作!

「ぴかぴーか!」
 俺は咄嗟に中級雷撃呪文ぴかぴーかを唱える!
 呪文の威力はピカラリアの方が上だが、予備動作の無いぴかぴーかの方が早く出せる!

 ドゴん!
 俺のぴかぴーかがスズキークJr.に炸裂!

「く、やるじゃねーか。」
 スズキークJr.は、口のはしから血を流す。そして膝がガクつく。
 それを見て俺は思う。こいつ、耐久力は低いんじゃないか。
 呪文と体術は極めていても、意外に打たれ弱い!
 ならば速攻あるのみ!

「いくぞ、土竜閃!」
 俺は炎の剣を振りかぶり、思いっきり地面に打ちつける!
 跳ね上がった大量の石つぶてが、スズキークJr.を襲う!

「あーたたたたたー!」
 スズキークJr.は、石つぶてをパンチの連打で叩き落とす!

「こんなんで、俺を倒せると思ってるのか!」
「ああ、思ってねーよ。」

 石つぶては単なる目くらまし。
 俺はスズキークJr.との距離をつめる。
「はあ!」
 俺は炎の剣を下方から上方へと振り上げ、スズキークJr.に斬撃を叩き込む!

 ザシュ!
「ぐ、」
 スズキークJr.の肉体に、血の直線が引かれる。

「はあ!」
 俺は振り上げた炎の剣を、今度は来た軌道を振り下ろす!

 ザシュ!
「ぐはあ!」
 スズキークJr.の肉体に刻まれた血の直線を、再びなぞる!

 ドサ!
 スズキークJr.を倒した!
 440円落ちていた!

「や、やるじゃねーか。」
 俺に敗れたスズキークJr.は、倒れたまま俺に話しかけてくる。
「お、俺は攻撃力に全振りしてる分、ぼ、防御力が低い。だ、だから、初撃で倒せなかった時点で、俺の負けだったのかもしれん。ぐはっ。」
 スズキークJr.は口から血をはいた。
 と同時にマッチョだったスズキークJr.の肉体が、ヒョロガリにしぼむ。

「くそ、俺の肉体進化の秘法は、まだ未完成!せめて黄金の腕輪がゲット出来ていれば、こんな事にはならなかったのに。」
 スズキークJr.は、涙を流す。
 敵とは言え、魔王を憎む者。こいつとは分かりあえたかもしれない。
「ならばなぜ、完成させなかったんだよ!」
 俺は中途半端な状態で出撃した、スズキークJr.を責める。

「はは、そりゃあ、もう時間がないからだ。誰かが次元干渉なんてしやがったから、魔王の完全支配まで、時間が残されていない。」
「何?」
 俺はその言葉に、思わずルギアのお守りを見る。

 19:48:23

 それが残された時間だった。
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