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荒野を行く

第182話 勇者隠れ家を見つける

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 魔王を倒すべく旅をする俺は、なぜか旅の記憶があいまいだった。
 誰かと一緒に旅をしていた気もするが、俺は最初からひとり旅だったはず。
 だけど俺の持ってるアイテム、照光子の杖。
 この照光子の杖って、どうやって入手したのか、なぜか思い出せなかった。


 まるでキツネにバカされた様な気分だ。
 だけど、俺が魔王を倒すのに残された時間は少ない事を、俺は感じている。

 俺はイワツキの村の南方、サカドの街の北方を隔てる海峡の下を通る、海底洞窟に足を踏み入れる。
「ライト。」
 俺はライトの呪文を唱える。
 暗闇に閉ざされた海底洞窟を、明るく照らす。

 この海底洞窟に、ローザ姫が捕らえられていたんだっけ。
 俺はローザと初めて出会った場所に、フラッと寄り道する。

 俺とドラゴンとの戦いの場。
 俺は一度、ここで殺されたんだっけ。

 で、レベル上げてリベンジかましたんだっけ。
 でもローザは、なぜかドラゴンを慕っていた。
 俺をドラゴンさんの仇とばかりに、あれ?
 こんな俺たちを、誰かがクスクス笑って見てなかったか?

 そうだ、あの時のライトの呪文は、もっと明るかった。
 俺じゃない誰かが、ここに居たんだ!

 俺は思わず走りだす。
 ドラゴンを倒した後、その奥へは行っていない。
 きっと何か、手がかりがあるはずだ!

 俺は奥に行って驚いた。
 奥にはなんと、破邪呪文の結界が張られていた。
 その奥に一軒家が建っていて、中は快適な居住空間になっていた。
 普通に灯りもあり、洞窟内の魔物からは隔離された、安全地帯になっていた。

 ここなら、ローザも快適にすごせたかもしれない。
 それこそ、ドラゴンさんと一緒に。

 俺はその幸せな暮らしを壊したのかと、罪悪感を感じる。
 だがそれ以上に、この部屋のタンスとツボが気になって仕方ない。

 俺の持つアイテム、ローザの盗聴器はGPS機能も搭載。
 俺の行動はこの部屋に住んでいたローザに筒抜けだが、俺の好奇心は抑えられない。

 ガバっ。
 俺はタンスの扉を開ける。
 中には、ガーターベルトがあった。

 え?
 これ、ローザの?

 いやいやいや。
 まだ十歳なローザが、こんなオマセなの装備してんの?
 ありえないから!
 これが似合う人って、他にいるだろ!

 でも、その人が誰なのか、思い出せない。
 シルエットは浮かぶ。だけど、それ以上の詳細が分からない。

「くそ!」
 俺はイラつく気持ちをツボにぶつけて、叩きわる。

 カシャん。
 中には、紙を丸めた物が入っていた。
 俺はその紙を広げてみる。その紙には文字が書かれている。そう、これは誰かの書いた手紙だった。
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