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ローザ姫との密会編

第141話 勇者心を読まれる

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 勇者ウラワとかけおちしたスーシ姫。だけどその名は伝わっていない。
 王族でも家系図には、『女』と記されるだけで、本名は伝わらない。
 その本名を知ってるのは、その『女』と同じ時代を生きた人々だけだ。


 勇者と姫はかけおちする。
 そんなジンクスが伝わってるらしい。
 それを聞いて、俺にはある疑問が浮かぶ。

「なんでユミコは、俺に魅了呪文をかけたんだろ。」
「え?ユウタ、ユミコお姉さまの事が好きなの?
 そりゃあ、誰もが惚れちゃう素敵なレディだけど、呪文のせいにするのは、良くないわよ。」

「はあ?違うよ。」
 なぜかローザは、盛大な勘違いをしている。
 ユミコはタカスナが好き。
 タカスナとスーシ姫の子孫である俺には、ユミコに対しては後ろめたさしかない。

「俺が言ってるのは、ユミコは俺に魅了呪文をかけて、おまえに惚れさせようとしてるって事だよ。」
「え?」
 俺の言葉に、ローザが顔を赤らめる。
 くぅ、何気ないローザの仕草が、たまらなくいとおしい!

「だ、だって、勇者とお姫様がかけおちして、傷ついたのはユミコだろ。
 だったらなんで、俺に魅了呪文かけて、お、おまえにほ、惚れさせるんだよ。」
「は?」
 俺の言葉に、ローザはバカを見る顔になる、
 くそ、こんな意外な一面のローザも、かわいすぎる!

「魅了呪文って、対象を自分に惚れさせる呪文よ。
 他人を他人に惚れさせて、なんのメリットがあるのよ。」
「え?何言ってんだ?」

 俺には、ローザの言ってる事が分からない。

「俺は、ロリコンじゃないぞ。ローザはかわいい。確かにかわいい。だけどそこに惚れこむのは、俺の本意じゃない。これはユミコの魅了呪文の効果と考えるのが、妥当。だけど魅了呪文とは違うだと。ローザが嘘をついてる可能性は、多分低い。ローザはこ生意気なクソガキだが、嘘つきじゃない。ドラゴンさんに嘘つきは嫌われるって、泣いてたくらいだからな。ならば、俺のこの感情は、なんだ?ま、まさか、この俺が、ローザに、惚れている?」

「ふーん、ユウタって私の事、好きなんだ。」
「なに?」
 俺が考え事してたら、いきなりローザがニヤけてきた。

「そ、そんな訳ないだろ!俺はロリコンじゃないぞ。どっちかと言ったら、ユミコの方が好みだ。
 わ、分かったぞ、俺に魅了呪文をかけたのは、おまえだな。
 何が目的だ!」
「い、痛い。離してよ。」
「あ、ご、ごめん。」

 俺はいつの間にか、ローザの両腕を掴んで迫っていた。
 俺は両手を離したが、顔をそむけるローザが、またかわいい!

 そんなローザが、とんでもない真実を告げる。
「私、魅了呪文なんて使えないわよ。」
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