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章なしで行きたいんだが~オオミヤからチチブへ

第117話 勇者ウラワの鎧をゲットする

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 ムサシの廃墟で、俺は姉と再会する。
 そして思い出した。
 このムサシの街が魔物に襲われた時、まだ幼かった俺は、時渡りの秘法で逃された事を。
 これは、未来のある時点へと、逃げる秘法。
 瞬時にその時間、その場所に行けるのだが、その時間分、一気に成長する。
 そしてその成長する過程で得られたはずの知識も、吸収出来る。
 道理で俺には、この物語が始まる前の記憶が無かった訳だ。


「ユウタ。」
 うつむいたままの俺に、ユミコが声をかける。
「へ、へへ。俺に姉がいたなんて、知らなかったよ。」
 俺は右手の甲で、目をこする。
「名前くらい、教えてくれよお姉ちゃん。俺、お姉ちゃんの名前も分からない。」
 俺の目からは、ぬぐうそばから涙があふれてくる。

「ユウタ。」
 ユミコは俺の頭部を抱き寄せる。
 俺の顔面は、ユミコの胸の谷間に埋もれる。
「うわーん。」
 俺はそのまま号泣する。

 俺はひとしきり泣いた後、ユミコから離れて、そっぽを向く。
 ユミコに泣き顔を見られたくなかったから。

 姉の事はこれで済んだとして、今向き合うべき問題がある。
 姉が勇者としての行動として、なぜ悪魔の騎士と戦ったのか。
 悪魔の騎士の鎧が地面に落ちた時、金属音がした。
 つまり、そこに何か金属製の何かが埋まってるのだろう。

 すでに悪魔の騎士の鎧の破片は消えていた。
 俺は問題の箇所の地面を、掘り起こす。

 そこには古ぼけた鎧が埋まっていた。
 元はそれなりの鎧だったとは思うが、今ではただのアンティーク。
 部屋のインテリアには良いかもしれないが、とても装備出来る物ではない。

「あら、それはひかりの鎧ね。懐かしいわ。」
「ひかりの鎧?全然光ってないけど?」
 ユミコの言葉に、俺は疑問を投げかける。
「流石に腐敗した地面なんかに隠してたら、そうなるわよ。
 あ、ちなみにそれが、ウラワの鎧。ウラワが魔王を倒した時に装備していた鎧よ。」

「え、これが?」
 ここサーイターマルドで最強の鎧。それがウラワの鎧。
 でもこの鎧、今俺が装備してる鋼の鎧より弱いぞ。

「でも、ユウタの持ってるスターダストサンドを使えば、ウラワの鎧も甦るわ。」
「そっか。あの宝箱、開けて正解だったな。」
 オオミヤ城のバリアの先にあった宝箱。
 ユミコに罠解除の呪文使ってもらって、良かったぜ。

「私がウラワの鎧を甦らせてあげるわ。」
 ユミコは両手を差し出す。
「あ、うん。」
 俺は古ぼけた鎧と、スターダストサンドの入った皮袋を渡す。

「じゃあ、ウラワの鎧を復活させてくるわね。」
「あ、どっか行くの、ユミコさん。」
「私のほこらの、工房を使うわ。チチブで落ち合いましょう。
 トラベル!」

 ユミコは転移呪文を唱えて、さっさとユミコのほこらに帰ってしまった。
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