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章なしで行きたいんだが~オオミヤからチチブへ
第116話 勇者姉の事を思い出す
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ムサシの街の廃墟で、魔王軍六魔将のひとり悪魔の騎士を倒した。
悪魔の騎士の甲冑はバラバラに崩れる。
腐敗した地面に、カスっと落ちていく中、破片のひとつが落ちた時、何かとぶつかる金属音をたてる。
そこに何かあるらしいが、今はこいつと戦ってた女性の方が気になる。
「ユウタ、ユウタ。」
女性は虚な目で、なぜか俺の名を呼んでいる。
俺は女性をひざ枕しているユミコに、視線を向ける。
ユミコは首をふる。
「ごめんなさい。手遅れだったみたい。
もう目も見えてないし、耳も聴こえてないわ。」
つまりそれは、この女性の死期が迫ってる事を意味する。
俺は愕然と膝をつき、宙をさまよう女性の手を握る。
女性は安堵の表情を浮かべる。
「ああユウタ。良かった。時渡りの秘法は、成功したのね。」
時渡りの秘法?なんだそれは?
「イワツキで勇者を名乗るヤツが、単なる変態だったから、お姉ちゃん、失敗しちゃったと思っちゃった。」
あ、ごめん。その変態って多分俺です。
つかお姉ちゃん?今お姉ちゃんって言った?
「だからお姉ちゃんが勇者しなくっちゃって思ったけど、ユウタが居るなら、任せられるわよね。」
お姉ちゃん、なのか?
俺に姉がいたのか?
俺が姉の存在を意識すると、脳裏にひとりの少女の面影が浮かぶ!
まだ幼い少女。
まだ歩く事もおぼつかない、幼い少女。
そしてその少女と手をつなぐ、自分の手。その手は当然幼くて。
「お姉ちゃん?」
俺は思わずつぶやく。
記憶はおぼろげで、完全に思い出した訳ではない。
だが、俺には姉がいた気がする。
「ユウタ、お姉ちゃん会いたかった。成長したユウタの姿、見たかったよ。
なんで、もっと早く、来てくれなかったの。」
「お姉、ちゃん。」
俺は握ってる女性の手を、俺の顔に持ってくる。
おぼろげだった俺の記憶の中の、幼い少女。
その少女の姿が、はっきりと認識される。
俺は理解した。時渡りの秘法ってヤツを。
「ユウタ、やっぱり良い男になったのね。お姉ちゃん嬉しい、よ。」
俺の姉であるその女性は、にっこりほほえむ。
同時に、体温が冷たくなっていくのを感じる。
「お姉ちゃん!」
俺は姉の身体に抱きつく!
しかし姉の身体は光りに包まれ、そのまま消えてしまう。
俺はユミコのひざ枕に、顔を埋めていた。
「ユミコ、これが転移蘇生ってヤツか。勇者専用の。」
俺はユミコのひざ枕から顔を離し、うつむいたまま尋ねる。
「多分違う。」
「そうか、バルハラか。」
俺は不思議と理解する。
戦いに明け暮れた者の末路を。
永遠に戦い続ける、修羅道の世界。そこがバルハラ。
姉から時渡りの秘法の名を聞き、俺の記憶のピースが埋まっていく。
だけど、姉の名前は思い出せなかった。
悪魔の騎士の甲冑はバラバラに崩れる。
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そこに何かあるらしいが、今はこいつと戦ってた女性の方が気になる。
「ユウタ、ユウタ。」
女性は虚な目で、なぜか俺の名を呼んでいる。
俺は女性をひざ枕しているユミコに、視線を向ける。
ユミコは首をふる。
「ごめんなさい。手遅れだったみたい。
もう目も見えてないし、耳も聴こえてないわ。」
つまりそれは、この女性の死期が迫ってる事を意味する。
俺は愕然と膝をつき、宙をさまよう女性の手を握る。
女性は安堵の表情を浮かべる。
「ああユウタ。良かった。時渡りの秘法は、成功したのね。」
時渡りの秘法?なんだそれは?
「イワツキで勇者を名乗るヤツが、単なる変態だったから、お姉ちゃん、失敗しちゃったと思っちゃった。」
あ、ごめん。その変態って多分俺です。
つかお姉ちゃん?今お姉ちゃんって言った?
「だからお姉ちゃんが勇者しなくっちゃって思ったけど、ユウタが居るなら、任せられるわよね。」
お姉ちゃん、なのか?
俺に姉がいたのか?
俺が姉の存在を意識すると、脳裏にひとりの少女の面影が浮かぶ!
まだ幼い少女。
まだ歩く事もおぼつかない、幼い少女。
そしてその少女と手をつなぐ、自分の手。その手は当然幼くて。
「お姉ちゃん?」
俺は思わずつぶやく。
記憶はおぼろげで、完全に思い出した訳ではない。
だが、俺には姉がいた気がする。
「ユウタ、お姉ちゃん会いたかった。成長したユウタの姿、見たかったよ。
なんで、もっと早く、来てくれなかったの。」
「お姉、ちゃん。」
俺は握ってる女性の手を、俺の顔に持ってくる。
おぼろげだった俺の記憶の中の、幼い少女。
その少女の姿が、はっきりと認識される。
俺は理解した。時渡りの秘法ってヤツを。
「ユウタ、やっぱり良い男になったのね。お姉ちゃん嬉しい、よ。」
俺の姉であるその女性は、にっこりほほえむ。
同時に、体温が冷たくなっていくのを感じる。
「お姉ちゃん!」
俺は姉の身体に抱きつく!
しかし姉の身体は光りに包まれ、そのまま消えてしまう。
俺はユミコのひざ枕に、顔を埋めていた。
「ユミコ、これが転移蘇生ってヤツか。勇者専用の。」
俺はユミコのひざ枕から顔を離し、うつむいたまま尋ねる。
「多分違う。」
「そうか、バルハラか。」
俺は不思議と理解する。
戦いに明け暮れた者の末路を。
永遠に戦い続ける、修羅道の世界。そこがバルハラ。
姉から時渡りの秘法の名を聞き、俺の記憶のピースが埋まっていく。
だけど、姉の名前は思い出せなかった。
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