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ローザ姫救出編

第107話 勇者姫を宿屋に連れこむ

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 ローザ姫を救ってお城に帰還する俺たちだったが、今の俺たちは臭いらしいので、帰還する前に宿屋による事にした。


「一晩三十円だけど、泊まるかね。」
 以前は高く感じた宿代も、今は安く感じるな。
 ひとり十円ってところか。
 あれ?以前は八円で泊まれた気もするが。
 俺は亭主に問い詰めたかった。
 だけどローザは俺の胸に顔を隠している。
 自分の素性を知られたくないようなので、素直に三十円払う事にした。

「じゃあ、ユウタは入ってこないでね。」
 ユミコはローザを部屋に先に入れると、扉をしめる。
 仕方ないので、俺は別の部屋に泊まる事にした。
 きちんと別料金取られてしまった。八円だった。

 俺は早速風呂に入る。
 思えば、湯船に浸かった描写は、イワツキで温泉に入った時しかない。
 つまり、あの時しか風呂に入ってないのかもしれない。
 思えば、あれから色んな事があったな。

 ユミコと出会って、ユミコと別れて、ユミコと再会して。
 ここらの思い出シーンで、総集編やる流れだろうが、数話前にも総集編やってるので、無理だった。

「おーい、入るぞー。」
 風呂から上がった俺は、ユミコ達の部屋の扉をノックする。
「きゃ、ユミコお姉さま。」
「何勝手に、レディの部屋に入ろうとしてるのよ!」

 俺はユミコ達に拒絶されてしまう。
 えー、俺たち旅の仲間だろ。
 食事を共にする事って、当然じゃないのか。
 俺は少し心の傷を負いながら、ひとりで食事する。
 そして哀しい気持ちのまま、眠りについた。

 ちゃらたたたん、ちゃん。

「ほら、いつまで寝てるのよ、ユウタ。」
 翌朝俺は、勝手に部屋に入ってきたユミコに起こされる。
 レディの部屋に入るなって言っといて、殿方の部屋には勝手に入っていいのか?

「んー、あと五分ー。」
 俺はお決まりのセリフを言ってみる。ここは、これで合ってるだろう。
「ふーん、いい度胸ね、ユウタ。」
「あ、」
 ユミコの言葉に、俺はハッとする。

 ユミコを怒らせてはいけない。
 ユミコの機嫌をそこねてはいけない。
 これがユミコと一緒に旅をするための、不文律。
 なにせユミコは、勇者の俺より強いのだ。

「ご、ごめんなさい。調子にのってまいました。」
 俺はベットの上で土下座する。
「あら、分かればいいのよ、分かれば。」
 ユミコの高飛車な態度に、少しはムカっとくるが、どちらかと言うと、俺は安堵する。

「さ、朝食にしましょう。ローザも待ちくたびれているわ。」
「え、一緒に食事しても、よろしいのですか。」
「はあ?私たちは仲間でしょ。一緒に食事するのは当然でしょ。」

 夕べとは言ってる事が真逆だが、俺は嬉しく涙が止まらない。
「もう、ちゃんと顔洗ってから来なさいよ。」

 ユミコはそう忠告すると、部屋から立ち去った。
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