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ユミコ奪還編~十二宮殿の戦い

第84話 勇者ピザの代金を立て替える

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 ちゃーちゃちゃちゃちゃちゃちゃーん。
 この世に邪悪がはびこる時、必ずや現れると言う希望の闘士、勇者が現代のサーイターマルドに甦った。
 精霊ルギアの怒りに触れたユミコを救うため、十二時間以内に十二の宮殿を突破しなければならない。
 急げ、ユミコの勇者たちよ。

 って、もう突破しちゃいましたが、何か?
 (・∀・)


 精霊ルギアに、部屋の外に追い出された俺。
 部屋の中からは、ドタドタと音が聞こえる。
 ルギアがお片づけでも、してるんだろう。

 俺はボケっと後ろを振り返る。
 俺がここまで歩いてきた道だ。
 二十分くらい歩いたつもりだったが、すぐそこには神殿の外の景色が広がっていた。

 なんだ、この神殿。
 行きと帰りは違うのか?

 俺は外の様子を見てこようとも思ったが、やめといた。
 下手したら、一度出たら再び戻ってくるのに、時間かかりそうだ。

「勇者ユウタよ、入るがいい。」
 凛としたルギアの声に、俺は振り返る。
 ふすまだった扉は、厳かな扉に代わっている。
 俺が後ろ向いてた間に、何があったのか?

 俺はその扉を開ける。
 部屋の中も、代わっていた。
 前回は生活感あふれる八畳間だったけど、今は普通に厳かな神殿になっている。
 そしてあの綺麗なお姉さんも、精霊ルギア様になっている。
 今のルギアは、どこからどう見ても、女神様だった。

「早かったな、ユウタ。
 まさか三十三分で突破しようとは、私も思わなかったぞ。」
 なるほど、だからあんなにくつろいでいたのか。
 そりゃあ、悪い事したな。
 って、それよか早く、ユミコに会わせろよ!

「ふむ、なるほど。
 白羊宮殿のアリエスが、協力したのか。
 あやつは、真実を知りすぎてるからな。」
 はくようきゅうでん?ありえす?
 それはあの黄金の羊のゴーレムの事だろうが、今はどうでもいい!

「ルギア様、ユミコに」
 ピンポーン。

 俺が喋り出すと、チャイムが鳴った。
「お待たせしましたぁ、ピザ屋でーす。」
 玄関から、元気な声がする。
 なんだ?何がどーなった?
 ここって、精霊ルギアの居るルギア神殿だよな?

「ユウタよ、済まないが受け取って来てはくれまいか。」
 ルギアはバツが悪そうに、俺に言ってくる。
「え?ルギア様が頼んだんですよね?」
「ば、バカ!この格好で出られるか!」

 ルギア様はデレる。
 まあ、女神様の格好で、出る訳にもいかないか。
 綺麗なお姉さんの格好に着替えたくても、俺が邪魔な訳だしな。

「はーい、ただいまぁ。」
 俺はルギアの代わりに玄関を開ける。
「毎度ありがとうございます、ぴ、ピザ屋、です。」
 かっこいい笑顔で出迎えたお兄さんも、表情が死んでいく。
 そりゃあ、出てきたのが俺だからな。
 綺麗なお姉さんを期待してたら、俺が出てきた。
 同棲相手が居たのかと、ショックを受けてもおかしくない。

「せ、1583円になります。」
 お兄さんは、営業スマイルも忘れて、呆然とつぶやく。
 って、これ、俺が払うの?
 まあ、仕方ないか。
「はい、1583円。」
 俺は代金を支払う。が、お兄さんは固まっている。
「あの、何か?」
「い、いえ、なんでもありません!毎度ありがとうございますた!」
 お兄さんは俺にピザを渡すと、足早に立ち去った。
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