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ユミコ争奪編

第37話 勇者魔王と戦う意志を示す

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 ユミコ争奪戦の1回戦に、なんとか勝利した俺。
 しかし、ユミコの変な実況のおかげで、なんか変な流れになっていた。


 銀髪女に、魔王を倒す意志はあるのかと、問うユミコ。
 対して銀髪女は、視線をそらして横を向く。
「く、許せ。君を守れなかった私に、君と話す資格はない。」

 うーん、どんな理屈なんだ、それ。

「おい。」
 ユミコは銀髪女のアゴをつかむと、自分と視線を合わせさせる。
「私が聞いてんだよ。おまえ達に魔王と戦う意志はあるのかって。
 ちゃんと答えろよ。」
 ユミコの表情から、笑顔が消えてる。
 やっぱユミコさん、怒ってらっしゃる。

「な、何言ってんだ。
 個人で魔王なんて、倒せる訳ないだろ。」
 銀髪女は震える声で、そう答える。
 思わずユミコは、ガンを飛ばす。
「ひ、わ、私はあなたを、や、野蛮な男達から、守りたかっただけで。」
 銀髪女は怯えている。

 なるほど、こいつらに感じてた違和感は、それだったか。
 俺はその、野蛮な男って訳ね。
 どうりで話しが通じなかった訳だ。

「ふーん、昔、勇者ウラワが魔王を倒したんだけどなぁ。」
 ユミコが寂しげにつぶやく。

「そ、それは単なる言い伝えだろ。
 勇者ウラワとは、魔王軍と戦った、軍隊の指揮官の名前だろ。」
 と銀髪女が答える。

「はあ、この国に軍隊なんていないじゃん。
 ま、タカスナも、四人パーティで魔王を倒した訳だし、ひとりで倒した訳じゃ、ないけどね。」
 とユミコも、ため息混じりに吐き捨てる。
「タカスナ?」
 と銀髪女はつぶやく。
 勇者ウラワの本名なんて、伝わってないからな。
 現に勇者ウラワの子孫である俺も、知らなかった訳だし。

「つまり、あんた達には、魔王と戦う意志はないのね。」
 ユミコはおもむろに立ち上がり、他の三人の女性に声をかける。
 三人の女性は、バツが悪そうに、視線を逸らす。

「はあ。」
 くしくも、俺とユミコは同時にため息をつく。
 なんだったんだ、さっきまでの戦闘は。
 俺が女性の敵だと、変に認識されちまっただけじゃねーか。

「えー、この会場で、魔王と戦う意志のある人は、いますか。」
 ユミコは会場全体に向かって、声をあげる。
 静まりかえる会場。
「いたら、手を上げてください。」
 ユミコの呼びかけに、俺は手を上げる。

「え?」
「え?」
 俺と戦った四人が、え、と言ったので、俺も思わずおうむ返してしまった。

 なんか、会場中から信じられないモノを見る視線が、俺に注がれてる。
 実際手を上げたのは、俺だけだ。
 このユミコ争奪戦の茶番に参加している、残りの二人組と三人組の計五人は、なぜか手を上げていない。

 え、じゃあこのユミコ争奪戦って、なんだったの?
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