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銀の笛奪還編

第16話 勇者遺体とご対面

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 吟遊詩人ユーズルの墓のダンジョンを進む俺は、数々の魔物を倒す。
 魔物を呼び寄せると言われる銀の笛ごと埋葬されてるためか、魔物の出現頻度も高い。

 俺が地下三階に降りる頃には、レベルが上がっていた。
 なんか呪文を覚えたみたいなんで、使ってみる。

「ライト。」

 ライトの呪文は、辺り一面を明るく照らす。
 たいまつの灯りよりも、遠くを見通せる。
 サッカーで言うならば、センターラインからのロングシュートを狙えそうなくらいだ。

 出くわす魔物も、あまりの明るさに目がくらむ。
 俺と対峙する時には、目を開けてられないくらいだ。

 だけどこのライトの呪文。
 効果時間は短すぎた。
 徐々に見渡せる範囲は狭まり、そのまま灯りは消えてしまった。
 残るのは、最初から使ってるたいまつの灯りだけだった。

 ライトの呪文は消費するマジックパワーは少ないので、乱発は出来そうだ。
 だけど回復呪文の事を考えると、あまり使いたくない。
 俺はたいまつの灯りだけで進む事にする。

 それにしてもここユーズルの墓は、魔物のバリエーションが豊富だ。
 緑色のコウモリの魔物と、金魚の魔物は前回遭遇した。
 今回新たに、コーヒープリンに顔と翼をつけた様な魔物と遭遇。
 さらに、壺をひっくり返して、顔と手足をつけた様な魔物とも遭遇。
 どの魔物も、一撃で倒せた。
 落とす金も、15円から20円ってところだった。

 さらに宝箱も複数見つけてしまう。
 うーん、墓守のおっさんの聖地巡礼ツアーでは、通らない道だったのだろうか。
 宝箱の中身の転移の翼と100円は、ありがたく頂戴する。

 だけど年代もののやくそうは、宝箱に戻した。

 いつしかユーズルの墓も、地下五階に突入。
 ユーズルって、どんだけ深く埋葬されたんだ?

 そしてこの階からなんと、岩の魔物が出現。
 俺が一撃では倒せなかった相手だ。
 ここから先は、俺もダメージを受ける事必須。
 俺はそんな覚悟をして、岩の魔物を鉄の斧で攻撃。

 どご、
 ばた。

 なんと、一撃で倒せてしまった。
 それだけ俺も、レベルが上がったのだろう。
 なにしろここは、エンカウント率が高い。
 五歩あるけば、魔物と遭遇する。
 今の俺なら、がいこつの魔物とも、渡り合えるかもしれない。

 そして俺はついに、玄室らしき所に着いた。
 祭壇っぽい所に、ミイラ化した遺体が安置されている。
 おそらく彼が、ユーズルだろう。
 生前はどんな美男子だったとしても、こうなってしまうと、見る影もない。
 ユーズルの遺体は、銀の笛を握りしめていた。

 何処からともなく吹き込む風が、銀の笛を通る。
 そして銀の笛を奏でる。

 突然、岩の魔物が出現!
 虚を突かれた俺は、魔物の先制攻撃を許す。

 どがっ。

 このダンジョンに入って初めてのダメージだ。
 俺の装備している防具は、うろこの盾のみ。
 やっぱ、拾った鎖かたびらを装備すべきだったのか。

 と言っても、岩の魔物も俺の敵ではないんだけどね。
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