根本 ユウヤの傍観

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第一章 山中他界高い

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「我が名をレゾン・デートルと呼ぶ。」
俺は振り返る、神社の社が消失し、代わりに巨大な存在が佇んでいる。

シカの頭蓋骨をかぶり、人の人差し指のような前足、カタツムを思わせるからと、無数の触手。

先ほどの畑の神と比べて、名状しがたい何かがそこにいる。
恐怖よりも、受け入れる気持ちが強まっている。
「お前は、いったい。」
レゾン・デートルと名乗るそれは、畑の神よりも大きな存在に見える。
物理的にも、位的にも大きな存在。

レゾンデートル……フランス語で確か、という意味。

それを自称するこの存在は……
「我が名をレゾンデートル……お前の魂の価値を測りに来た。」
レゾンデートルは、骨の隙間から白く光る目のようなもので、俺を見つめている。

ゾクッとする。
魂の価値を測る。

「なぜ測るんだ」
俺はそう問いかける。
何となく、わかっている。
が確かにしたい。

「ここは、冥界の入り口……この先への行先をここで決めるんだ。」
生前の行いで、天国か地獄か……五文践……
「俺は死んだのか?」
「それをこれから決める。」

それよりも、一歩手前の審議だった。
死んだかどうか……
「お前は、この世界に迷い込んだ。
死してここに来たわけでない……であるか?」
レゾンデートルは、まるで手に取るように、俺が思おうとしていることを言い当てた。

不気味。

「その通りだ。」
返事を返し終えると同時に、レゾンデートルは指のような前足を使い。
地面に円を描いた。

「その真偽をこの縁で確かめよう。」
そういって、円の中を見つめる。
体感五分は凝視し続けている。

「誤りではなさそうであり……神を還してくれたのか…」
「あれが、神だというならそうかもな……」
そう答えた時、ふと木箱が気になる。
何となく、木箱を開く……重たいわけではないが、ずっしりとした大きな木箱は正直持ち運びに邪魔だ。
それにバイクに乗らない。
いらないなら置いて帰りたい。

鍵もかかっていない木箱は、容易く開かれる。
重みのある、ふたを開けると中には……

二つの骨と頭蓋骨。
そして、大量の文践があった。

「そういうことか……縁だな」
俺はそんなことをつぶやいただろう。
そう、呟いたんだきっと。


「れぞんでぇとる。 あんたに頼みがある。」
俺はそういった。
レゾンデートルは、俺を見下ろしている。
その表情は、はっきりとわからないがどこか笑っている気がした。

「ほぅ、聞くだけ聞こうではないか」
俺は木箱の中にあった、骨と文践を見せる。
「俺は思う。これは、畑の神が俺に渡した物だ。」
レゾンデートルは、黙って俺の話を聞いている。

「この金で、夏目明日夏あの子と一緒に還してくれないか」
俺は、そういった。
文践は確か、三途の川を渡るための運賃として、使われると聞いたことがあった。

「あの娘は、とうに死んでいる。1883年のあの日から、とうに死んでおるわ」
レゾンデートルは、再び円を描き事故の現場を見せてくる。

「だから、これがあるじゃないか」
俺は木箱から、頭蓋骨と二つの骨を取り出す。
これはきっと、彼女の……夏目明日夏の遺骨だ。

なぜ、畑の神がこんなものを渡したのか、わかった。
これは、俺だけの礼じゃない、40年間神を信仰してくれた、夏目明日夏の分も入っているんだ。

髑髏と二本の骨さえあれば復活できる。
これは、日本ではなじみがないが西洋の考えだ。

海賊旗で、髑髏を掲げる理由が……確かそうだったはず。
これが本当であれば……
「西洋の考えで、髑髏と二本の骨で復活できると聞いた……素材と対価は用意したぞ。 これでも足りないなら、俺の復活分から持っていきな。」

俺がそういうと、レゾンデートルは確かに笑った。
「左様か、見事なり。」
そういうと、地面に書かれた二つの円をかき消すと、六芒星を描いた。

そして、描かれた六芒星の中から、白い光があふれだし俺を包み込んだ。
暖かい。
そう思いながらも、まぶしさで目をつぶる。
キィーンという音がしている。
耳鳴りのような音をかき消すように、畑の神とレゾンデートルの声が聞こえ始める。
「夢の中を彷徨う童よ……」
「幻を歩く人よ」











現へと戻るが良い目を覚ませ

















































































――――現――――

「はっ」
気が付くと、俺はあの廃集落の……石畳の階段に座っていた。
「戻ってきたのか……」
俺はそう呟くと、空を見た。
じめじめと湿気の多い福井とは思えないほど、清々しく晴れている。

「アイツも、元の時代に戻ったのだろうか」
そう、独り言をつぶやいたとき。
「ここにいるよ」
と声がした。
慌てて後ろを振り向くと、そこには夏目明日夏が立っていた。

浴衣姿の幼女ではなく、18歳くらい……彼女が最後に見せた見た目のまま、服装はTシャツとジーンズ。

もし、生きているのなら50代くらいではないか?
「どうしてここに……」
俺はそう呟く……帰っているなら、1980年代事故を起こしたあの日だろう……

奇跡の生還を果たし、密かに生きているハズ。
そんなことを思っていると、夏目はこういった。
「だって、根本君がいったんじゃん」
「え?」



あの子と一緒に還るって」











――根本ユウヤの傍観――
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