12 / 12
第一章 山中他界高い
最後
しおりを挟む
「我が名をレゾン・デートルと呼ぶ。」
俺は振り返る、神社の社が消失し、代わりに巨大な存在が佇んでいる。
シカの頭蓋骨をかぶり、人の人差し指のような前足、カタツムを思わせるからと、無数の触手。
先ほどの畑の神と比べて、名状しがたい何かがそこにいる。
恐怖よりも、受け入れる気持ちが強まっている。
「お前は、いったい。」
レゾン・デートルと名乗るそれは、畑の神よりも大きな存在に見える。
物理的にも、位的にも大きな存在。
レゾンデートル……フランス語で確か、存在価値や存在意義という意味。
それを自称するこの存在は……
「我が名をレゾンデートル……お前の魂の価値を測りに来た。」
レゾンデートルは、骨の隙間から白く光る目のようなもので、俺を見つめている。
ゾクッとする。
魂の価値を測る。
「なぜ測るんだ」
俺はそう問いかける。
何となく、わかっている。
が確かにしたい。
「ここは、冥界の入り口……この先への行先をここで決めるんだ。」
生前の行いで、天国か地獄か……五文践……
「俺は死んだのか?」
「それをこれから決める。」
それよりも、一歩手前の審議だった。
死んだかどうか……
「お前は、この世界に迷い込んだ。
死してここに来たわけでない……であるか?」
レゾンデートルは、まるで手に取るように、俺が思おうとしていることを言い当てた。
不気味。
「その通りだ。」
返事を返し終えると同時に、レゾンデートルは指のような前足を使い。
地面に円を描いた。
「その真偽をこの縁で確かめよう。」
そういって、円の中を見つめる。
体感五分は凝視し続けている。
「誤りではなさそうであり……神を還してくれたのか…」
「あれが、神だというならそうかもな……」
そう答えた時、ふと木箱が気になる。
何となく、木箱を開く……重たいわけではないが、ずっしりとした大きな木箱は正直持ち運びに邪魔だ。
それにバイクに乗らない。
いらないなら置いて帰りたい。
鍵もかかっていない木箱は、容易く開かれる。
重みのある、ふたを開けると中には……
二つの骨と頭蓋骨。
そして、大量の文践があった。
「そういうことか……縁だな」
俺はそんなことをつぶやいただろう。
そう、呟いたんだきっと。
「れぞんでぇとる。 あんたに頼みがある。」
俺はそういった。
レゾンデートルは、俺を見下ろしている。
その表情は、はっきりとわからないがどこか笑っている気がした。
「ほぅ、聞くだけ聞こうではないか」
俺は木箱の中にあった、骨と文践を見せる。
「俺は思う。これは、畑の神が俺に渡した物だ。」
レゾンデートルは、黙って俺の話を聞いている。
「この金で、夏目明日夏と一緒に還してくれないか」
俺は、そういった。
文践は確か、三途の川を渡るための運賃として、使われると聞いたことがあった。
「あの娘は、とうに死んでいる。1883年のあの日から、とうに死んでおるわ」
レゾンデートルは、再び円を描き事故の現場を見せてくる。
「だから、これがあるじゃないか」
俺は木箱から、頭蓋骨と二つの骨を取り出す。
これはきっと、彼女の……夏目明日夏の遺骨だ。
なぜ、畑の神がこんなものを渡したのか、わかった。
これは、俺だけの礼じゃない、40年間神を信仰してくれた、夏目明日夏の分も入っているんだ。
髑髏と二本の骨さえあれば復活できる。
これは、日本ではなじみがないが西洋の考えだ。
海賊旗で、髑髏を掲げる理由が……確かそうだったはず。
これが本当であれば……
「西洋の考えで、髑髏と二本の骨で復活できると聞いた……素材と対価は用意したぞ。 これでも足りないなら、俺の復活分から持っていきな。」
俺がそういうと、レゾンデートルは確かに笑った。
「左様か、見事なり。」
そういうと、地面に書かれた二つの円をかき消すと、六芒星を描いた。
そして、描かれた六芒星の中から、白い光があふれだし俺を包み込んだ。
暖かい。
そう思いながらも、まぶしさで目をつぶる。
キィーンという音がしている。
耳鳴りのような音をかき消すように、畑の神とレゾンデートルの声が聞こえ始める。
「夢の中を彷徨う童よ……」
「幻を歩く人よ」
「現へと戻るが良い」
――――現――――
「はっ」
気が付くと、俺はあの廃集落の……石畳の階段に座っていた。
「戻ってきたのか……」
俺はそう呟くと、空を見た。
じめじめと湿気の多い福井とは思えないほど、清々しく晴れている。
「アイツも、元の時代に戻ったのだろうか」
そう、独り言をつぶやいたとき。
「ここにいるよ」
と声がした。
慌てて後ろを振り向くと、そこには夏目明日夏が立っていた。
浴衣姿の幼女ではなく、18歳くらい……彼女が最後に見せた見た目のまま、服装はTシャツとジーンズ。
もし、生きているのなら50代くらいではないか?
「どうしてここに……」
俺はそう呟く……帰っているなら、1980年代事故を起こしたあの日だろう……
奇跡の生還を果たし、密かに生きているハズ。
そんなことを思っていると、夏目はこういった。
「だって、根本君がいったんじゃん」
「え?」
「あの子と一緒に還るって」
――根本ユウヤの傍観――
俺は振り返る、神社の社が消失し、代わりに巨大な存在が佇んでいる。
シカの頭蓋骨をかぶり、人の人差し指のような前足、カタツムを思わせるからと、無数の触手。
先ほどの畑の神と比べて、名状しがたい何かがそこにいる。
恐怖よりも、受け入れる気持ちが強まっている。
「お前は、いったい。」
レゾン・デートルと名乗るそれは、畑の神よりも大きな存在に見える。
物理的にも、位的にも大きな存在。
レゾンデートル……フランス語で確か、存在価値や存在意義という意味。
それを自称するこの存在は……
「我が名をレゾンデートル……お前の魂の価値を測りに来た。」
レゾンデートルは、骨の隙間から白く光る目のようなもので、俺を見つめている。
ゾクッとする。
魂の価値を測る。
「なぜ測るんだ」
俺はそう問いかける。
何となく、わかっている。
が確かにしたい。
「ここは、冥界の入り口……この先への行先をここで決めるんだ。」
生前の行いで、天国か地獄か……五文践……
「俺は死んだのか?」
「それをこれから決める。」
それよりも、一歩手前の審議だった。
死んだかどうか……
「お前は、この世界に迷い込んだ。
死してここに来たわけでない……であるか?」
レゾンデートルは、まるで手に取るように、俺が思おうとしていることを言い当てた。
不気味。
「その通りだ。」
返事を返し終えると同時に、レゾンデートルは指のような前足を使い。
地面に円を描いた。
「その真偽をこの縁で確かめよう。」
そういって、円の中を見つめる。
体感五分は凝視し続けている。
「誤りではなさそうであり……神を還してくれたのか…」
「あれが、神だというならそうかもな……」
そう答えた時、ふと木箱が気になる。
何となく、木箱を開く……重たいわけではないが、ずっしりとした大きな木箱は正直持ち運びに邪魔だ。
それにバイクに乗らない。
いらないなら置いて帰りたい。
鍵もかかっていない木箱は、容易く開かれる。
重みのある、ふたを開けると中には……
二つの骨と頭蓋骨。
そして、大量の文践があった。
「そういうことか……縁だな」
俺はそんなことをつぶやいただろう。
そう、呟いたんだきっと。
「れぞんでぇとる。 あんたに頼みがある。」
俺はそういった。
レゾンデートルは、俺を見下ろしている。
その表情は、はっきりとわからないがどこか笑っている気がした。
「ほぅ、聞くだけ聞こうではないか」
俺は木箱の中にあった、骨と文践を見せる。
「俺は思う。これは、畑の神が俺に渡した物だ。」
レゾンデートルは、黙って俺の話を聞いている。
「この金で、夏目明日夏と一緒に還してくれないか」
俺は、そういった。
文践は確か、三途の川を渡るための運賃として、使われると聞いたことがあった。
「あの娘は、とうに死んでいる。1883年のあの日から、とうに死んでおるわ」
レゾンデートルは、再び円を描き事故の現場を見せてくる。
「だから、これがあるじゃないか」
俺は木箱から、頭蓋骨と二つの骨を取り出す。
これはきっと、彼女の……夏目明日夏の遺骨だ。
なぜ、畑の神がこんなものを渡したのか、わかった。
これは、俺だけの礼じゃない、40年間神を信仰してくれた、夏目明日夏の分も入っているんだ。
髑髏と二本の骨さえあれば復活できる。
これは、日本ではなじみがないが西洋の考えだ。
海賊旗で、髑髏を掲げる理由が……確かそうだったはず。
これが本当であれば……
「西洋の考えで、髑髏と二本の骨で復活できると聞いた……素材と対価は用意したぞ。 これでも足りないなら、俺の復活分から持っていきな。」
俺がそういうと、レゾンデートルは確かに笑った。
「左様か、見事なり。」
そういうと、地面に書かれた二つの円をかき消すと、六芒星を描いた。
そして、描かれた六芒星の中から、白い光があふれだし俺を包み込んだ。
暖かい。
そう思いながらも、まぶしさで目をつぶる。
キィーンという音がしている。
耳鳴りのような音をかき消すように、畑の神とレゾンデートルの声が聞こえ始める。
「夢の中を彷徨う童よ……」
「幻を歩く人よ」
「現へと戻るが良い」
――――現――――
「はっ」
気が付くと、俺はあの廃集落の……石畳の階段に座っていた。
「戻ってきたのか……」
俺はそう呟くと、空を見た。
じめじめと湿気の多い福井とは思えないほど、清々しく晴れている。
「アイツも、元の時代に戻ったのだろうか」
そう、独り言をつぶやいたとき。
「ここにいるよ」
と声がした。
慌てて後ろを振り向くと、そこには夏目明日夏が立っていた。
浴衣姿の幼女ではなく、18歳くらい……彼女が最後に見せた見た目のまま、服装はTシャツとジーンズ。
もし、生きているのなら50代くらいではないか?
「どうしてここに……」
俺はそう呟く……帰っているなら、1980年代事故を起こしたあの日だろう……
奇跡の生還を果たし、密かに生きているハズ。
そんなことを思っていると、夏目はこういった。
「だって、根本君がいったんじゃん」
「え?」
「あの子と一緒に還るって」
――根本ユウヤの傍観――
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
人類の敵
マリア・ロマン
ファンタジー
何故彼らが人類の敵になったか
彼らは
嫉妬とが強く家庭の都合で歪んだり退屈をしているのてす。
彼らは
本当の愛と友情が知らない可哀想な人々です。
そのせいで彼等の思考はとてもクレージーです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる