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Episode3 龍之介
61 男同士
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しばらくして修司だけが応接室に戻ってきた。
ソファから立ち上がろうとした龍之介に「いいよ」と手を振り、テーブルを挟んだ向かいに腰を下ろす。
「美弦先輩は大丈夫ですか?」
「とりあえず自分の部屋で休んでる。馬鹿って十回くらい言われたけどな。馬鹿はアイツの常套句みたいなもんだから、気にしなくていいぜ」
「そうなんですか」
「アイツに心配なんかさせたくないけど、俺が弱いのなんて言われなくても分かってるし、俺だってアイツのこと心配してんだ。当たり前じゃん、好きなんだから」
「……本当にすみませんでした」
申し訳ない気持ちで、龍之介はもう一度彼女の怪我のことを修司に詫びた。
「いいよ、って許すわけじゃないけど。もう言わなくていいから」
修司は自分の唇に手の甲を押し付けながら、龍之介に大きく頷いて見せる。
「俺だって俺なりにできることをしてるだけなんだけどな。お前だってアニメの主人公みたいに、突然最強になれるなんて思ってないだろ?」
「それは……もちろんです」
ただ、さすまたが発動して自分がキーダーかもと期待してしまった時、一瞬そんなことを考えてしまったのは事実だ。
修司のコンプレックスを聞いても尚、龍之介が彼を羨ましいという気持ちに変わりはない。シェイラの誘いに乗る気はないけれど、せめてこのさすまたを使いこなすことができればと思う。
「俺もキーダーだったらって思います」
「そのさすまたって、使うの難しいんだろ? ちょっと貸してみ」
マサの説明だと、使用者の意識を連動させて人工的に光を発動できるらしい。
修司は龍之介からさすまたを受け取り、「ふん」と気合を込めて見せる。沈黙を挟んだ数秒後、バチバチッと音がして先端の間を青白い光が走った。
「わぁ光った!」
「いや、これはキーダーの力だよ。やっぱり力使わないと難しいかな。お前凄くないか?」
「たまたま無意識に光っただけなんで。使いこなせたらいいんですけど……やっぱり修司さんみたいになりたいです」
修司は照れくさそうに笑いながら、光を消してさすまたを龍之介に戻した。
「一回できたなら、訓練次第でどうにでもなるんじゃねぇの? 俺だって3ヶ月でここまで来るの大変だったんだぞ?」
「訓練……か」
「何ができるかって美弦に聞くより、よっぽど堅実的だよ。アイツに聞くなんて、こじらせるの目に見えてるじゃん」
「そうなんですか」
「アイツの性格考えてみろよ。キーダーはノーマルを助けるものだってのは間違ってはいないんだけどな。アイツの話真に受けてじっとしてることないと思うぜ。お前のやりたいようにやってみたら? 朱羽さんに迷惑だって言われない程度にな」
「修司さん……」
「無責任だって怒鳴られそうだから、アイツには内緒な」
人差し指を唇に当てて「シッ」という修司に、龍之介は「分かりました」と笑う。
自分はノーマルだという劣等感が少しだけ和らいだ気がした途端に、じっとしてなんかいられなくなった。
「俺、朱羽さんの所で待っててもいいですか?」
「拷問部屋のトコで? 別に構いはしないけど」
「本当ですか? じゃあ、行ってきます!」
修司は「一緒に行くか?」と言ってくれたが、龍之介はあえて断った。
「待ってるだけなんで一人で行けます」
龍之介はさすまたを手に戸口へ立った所で、ふと足を止める。
「そうだ、修司さん。一つ聞いてもいいですか?」
緊張感のない話だけれど、好奇心のままに尋ねた。
「マサさんがさっき公園にパラシュートで下りてきたって言うんですけど、修司さんも訓練してるんですよね? 怖くないんですか?」
「怖いよ! 決まってんだろ?」
血相を変えた修司にその恐怖を垣間見て、龍之介は「ですよね」と頭を下げて部屋を後にした。
ソファから立ち上がろうとした龍之介に「いいよ」と手を振り、テーブルを挟んだ向かいに腰を下ろす。
「美弦先輩は大丈夫ですか?」
「とりあえず自分の部屋で休んでる。馬鹿って十回くらい言われたけどな。馬鹿はアイツの常套句みたいなもんだから、気にしなくていいぜ」
「そうなんですか」
「アイツに心配なんかさせたくないけど、俺が弱いのなんて言われなくても分かってるし、俺だってアイツのこと心配してんだ。当たり前じゃん、好きなんだから」
「……本当にすみませんでした」
申し訳ない気持ちで、龍之介はもう一度彼女の怪我のことを修司に詫びた。
「いいよ、って許すわけじゃないけど。もう言わなくていいから」
修司は自分の唇に手の甲を押し付けながら、龍之介に大きく頷いて見せる。
「俺だって俺なりにできることをしてるだけなんだけどな。お前だってアニメの主人公みたいに、突然最強になれるなんて思ってないだろ?」
「それは……もちろんです」
ただ、さすまたが発動して自分がキーダーかもと期待してしまった時、一瞬そんなことを考えてしまったのは事実だ。
修司のコンプレックスを聞いても尚、龍之介が彼を羨ましいという気持ちに変わりはない。シェイラの誘いに乗る気はないけれど、せめてこのさすまたを使いこなすことができればと思う。
「俺もキーダーだったらって思います」
「そのさすまたって、使うの難しいんだろ? ちょっと貸してみ」
マサの説明だと、使用者の意識を連動させて人工的に光を発動できるらしい。
修司は龍之介からさすまたを受け取り、「ふん」と気合を込めて見せる。沈黙を挟んだ数秒後、バチバチッと音がして先端の間を青白い光が走った。
「わぁ光った!」
「いや、これはキーダーの力だよ。やっぱり力使わないと難しいかな。お前凄くないか?」
「たまたま無意識に光っただけなんで。使いこなせたらいいんですけど……やっぱり修司さんみたいになりたいです」
修司は照れくさそうに笑いながら、光を消してさすまたを龍之介に戻した。
「一回できたなら、訓練次第でどうにでもなるんじゃねぇの? 俺だって3ヶ月でここまで来るの大変だったんだぞ?」
「訓練……か」
「何ができるかって美弦に聞くより、よっぽど堅実的だよ。アイツに聞くなんて、こじらせるの目に見えてるじゃん」
「そうなんですか」
「アイツの性格考えてみろよ。キーダーはノーマルを助けるものだってのは間違ってはいないんだけどな。アイツの話真に受けてじっとしてることないと思うぜ。お前のやりたいようにやってみたら? 朱羽さんに迷惑だって言われない程度にな」
「修司さん……」
「無責任だって怒鳴られそうだから、アイツには内緒な」
人差し指を唇に当てて「シッ」という修司に、龍之介は「分かりました」と笑う。
自分はノーマルだという劣等感が少しだけ和らいだ気がした途端に、じっとしてなんかいられなくなった。
「俺、朱羽さんの所で待っててもいいですか?」
「拷問部屋のトコで? 別に構いはしないけど」
「本当ですか? じゃあ、行ってきます!」
修司は「一緒に行くか?」と言ってくれたが、龍之介はあえて断った。
「待ってるだけなんで一人で行けます」
龍之介はさすまたを手に戸口へ立った所で、ふと足を止める。
「そうだ、修司さん。一つ聞いてもいいですか?」
緊張感のない話だけれど、好奇心のままに尋ねた。
「マサさんがさっき公園にパラシュートで下りてきたって言うんですけど、修司さんも訓練してるんですよね? 怖くないんですか?」
「怖いよ! 決まってんだろ?」
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