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Episode3 龍之介
47 あの時の女
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ガイアが戦闘態勢に入ったのと、京子が趙馬刀を構えたのはほぼ同時だった。
竿と刃がギンと音を立て、青白い光を立ち昇らせる。力で生成された趙馬刀の刃はその事を忘れさせてしまうくらいにピンと張ったまま形を留めていた。
何度も何度も叩き合って、次の一手を探り合う。
光はまるで生き物のように、それぞれの武器に絡みつく。少しずつ京子の位置が後退するが、先に相手の武器を跳ね上げたのは彼女の方だった。
「させるかよ」
ガイアが空になった手を下から突き上げて、掌に生み出した光の球を投げつける。
対して京子は両足で踏み切ると、攻撃を避けてヒラリと宙に舞い上がった。背面跳びよろしくクルリと一回転した身体が地面へ着地する。
彼女の足元をすり抜けた光は、背後の木に突っ込んで真ん中からザッと半分に折れた。
ガイアは落下する竿を空中でキャッチして、改めて京子へと構える。
距離の広がった間合いにガイアが再び光を放つと、京子も応じて光を走らせた。
二人のちょうど真ん中で引き合うように衝突した攻撃は、お互いを取り込んで膨れ上がる。
息を呑む戦いに龍之介はさすまたを握りしめながらその戦いに見入った。
綾斗も右手に趙馬刀をスタンバイさせている。
「これが俺の全力だと思うか?」
光は風を孕んで、ぐるぐると回りながら地面の砂を巻き上げる。
ガイアはアロハシャツをはためかせながら、余裕の笑顔でそんなことを言い放った。
「なに余裕ぶっこいてんの?」
怒りを込めた京子の気合に、光の球がじわりとガイアの方へ動く。
ガイアが笑った。
何か話をするように唇が動いたが、京子に付いたスピーカーはその音を拾う事はできなかった。
意図してガイアの力が緩み、光の球が彼へ向けて加速する。
けれど京子の勝利とはいかない。
ガイアはバッティングよろしく両手で構えた竿をぐるりとスウィングさせた。
野球ボールの何十倍もの大きさの球が竿の先端にめり込んで、ガイアの力のままに空へと放たれる。
「やったぜ、ホームラン!」
嬉々するガイアに「させないから!」と京子が軌道の先端へと先回りした。光が慰霊塔に直撃しそうになったからだ。
彼女の伸ばした手から光が今度は直線に伸びて、弾を猛スピードで斜め向こうの空へ突き放す。
ドン、と空中で球が散らばって、光がまだ明るい空へ花火のように溶けた。
「アンタ、私のこと弱いと思ってるでしょ。バスクだからって、キーダーの力を見くびらないでくれる?」
「そんな事ねぇよ、キーダー様様だ。ただアンタの気配って、こんな感じだったかと思ってな」
「気配に個人差なんてないと思うけど?」
「出てくるのは一緒でも、抑揚があんだよ。そんな事言ってるから、アンタはキーダーなんだぜ?」
「ヒヒ」と笑ったガイアがビリヤードのキューのように竿を構え、照準を京子へ向ける。
京子は「どういう意味?」と眉をひそめた。
「まぁ、俺はハッキリとそこを見たわけじゃねぇから、断言はできねぇけどよ」
「はぁ?」
「アンタ、あの時の女じゃねぇだろ」
ガイアの声が高揚した瞬間、京子に一瞬の隙が生まれる。
「京子さん、危ない!」
「えっ」
叫んだのは綾斗だ。
ガイアの構えた竿の先端が突然リーチを縮め、京子を狙って真っすぐに伸びた。
竿と刃がギンと音を立て、青白い光を立ち昇らせる。力で生成された趙馬刀の刃はその事を忘れさせてしまうくらいにピンと張ったまま形を留めていた。
何度も何度も叩き合って、次の一手を探り合う。
光はまるで生き物のように、それぞれの武器に絡みつく。少しずつ京子の位置が後退するが、先に相手の武器を跳ね上げたのは彼女の方だった。
「させるかよ」
ガイアが空になった手を下から突き上げて、掌に生み出した光の球を投げつける。
対して京子は両足で踏み切ると、攻撃を避けてヒラリと宙に舞い上がった。背面跳びよろしくクルリと一回転した身体が地面へ着地する。
彼女の足元をすり抜けた光は、背後の木に突っ込んで真ん中からザッと半分に折れた。
ガイアは落下する竿を空中でキャッチして、改めて京子へと構える。
距離の広がった間合いにガイアが再び光を放つと、京子も応じて光を走らせた。
二人のちょうど真ん中で引き合うように衝突した攻撃は、お互いを取り込んで膨れ上がる。
息を呑む戦いに龍之介はさすまたを握りしめながらその戦いに見入った。
綾斗も右手に趙馬刀をスタンバイさせている。
「これが俺の全力だと思うか?」
光は風を孕んで、ぐるぐると回りながら地面の砂を巻き上げる。
ガイアはアロハシャツをはためかせながら、余裕の笑顔でそんなことを言い放った。
「なに余裕ぶっこいてんの?」
怒りを込めた京子の気合に、光の球がじわりとガイアの方へ動く。
ガイアが笑った。
何か話をするように唇が動いたが、京子に付いたスピーカーはその音を拾う事はできなかった。
意図してガイアの力が緩み、光の球が彼へ向けて加速する。
けれど京子の勝利とはいかない。
ガイアはバッティングよろしく両手で構えた竿をぐるりとスウィングさせた。
野球ボールの何十倍もの大きさの球が竿の先端にめり込んで、ガイアの力のままに空へと放たれる。
「やったぜ、ホームラン!」
嬉々するガイアに「させないから!」と京子が軌道の先端へと先回りした。光が慰霊塔に直撃しそうになったからだ。
彼女の伸ばした手から光が今度は直線に伸びて、弾を猛スピードで斜め向こうの空へ突き放す。
ドン、と空中で球が散らばって、光がまだ明るい空へ花火のように溶けた。
「アンタ、私のこと弱いと思ってるでしょ。バスクだからって、キーダーの力を見くびらないでくれる?」
「そんな事ねぇよ、キーダー様様だ。ただアンタの気配って、こんな感じだったかと思ってな」
「気配に個人差なんてないと思うけど?」
「出てくるのは一緒でも、抑揚があんだよ。そんな事言ってるから、アンタはキーダーなんだぜ?」
「ヒヒ」と笑ったガイアがビリヤードのキューのように竿を構え、照準を京子へ向ける。
京子は「どういう意味?」と眉をひそめた。
「まぁ、俺はハッキリとそこを見たわけじゃねぇから、断言はできねぇけどよ」
「はぁ?」
「アンタ、あの時の女じゃねぇだろ」
ガイアの声が高揚した瞬間、京子に一瞬の隙が生まれる。
「京子さん、危ない!」
「えっ」
叫んだのは綾斗だ。
ガイアの構えた竿の先端が突然リーチを縮め、京子を狙って真っすぐに伸びた。
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