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050. 鑑定の余波
しおりを挟む「……内訳だ。」
紙の切れ端を受付台の上に置き、
割れた石ころ、それぞれの片側を
主人側に備え付けてある机の上にごろりと置いた。
その一つを手に取り、こちらに見せながら
「これは曹灰長石と呼ばれるものだな。
これ一つで白貨五枚分になる。」
欠片の断面は一切の歪みなく、とても艶やかで光沢すら出ている。
差し込んできた陽の光の加減により、まるで虹色に輝いているように見える。
「きれー……。」
瑠璃色の瞳にその輝きを反射させ、うっとりと見惚れているリリナ。
「それからこれが――。」
お構いなしにラウルへ説明を続ける主人だが、
浮かない顔をしている者が一人。
アシュリィである。
時々リリナとやり取りをしているが、普段の快活な様子からは一変して
心ここに有らずといった具合だ。
……そして、石の内訳説明が後半へと差し掛かった頃、
「ごめん、リリナちゃん。ここの雰囲気に酔っちゃったみたい。
ちょっと外の空気吸ってくるね。」
リリナをそっと床に降ろし、そそくさと店を出ていく。
横目で見送った後、リリナにせがまれ
再び石の断面が見える位置まで抱き上げるラウル。
説明の手を止めていた主人が低い声で語り掛けてくる。
「……狼の。……あんた、あいつとは何なんだ?」
てっきり我関せずを貫き通す御仁かと思っていたため、
思わず目を丸くしてしまうラウル。
再び冷静さを取り戻し、
「あいつ……アシュリィとは昨日知り合った仲だが……
訳あって少なからず借りがある。
主人とは何か因縁めいたものがあるようだが、何があったか聞いても?」
「大したことは何もねぇ。あいつが半端もんってだけだ。
……ガワだけじゃねぇ、中身もな……。
……この話は終わりだ。内訳の続きをする。」
ふいと視線を再び下に戻し、
まるで何事もなかったかのように説明の続きをし始める。
だが、心なしか
眉間に刻まれた皺がより深くなったような、そんな気がしてしまう。
―――
説明も終了し、貨幣の受け渡しを終えて店を出る二人。
リリナがもう少し遺物を見てみたいと愚図ったが、
アシュリィを待たせているから。と話すとすぐに聞き分けた。
店から出ると『星の道』ほどではないが、空間の切り替わりによる違和感を覚える。
ラウルは軽く頭から身震いをさせ、
リリナはぎゅっと目を瞑り、何かくすぐったそうな顔をしている。
その扉のすぐ隣の壁にアシュリィを見つけるが
背をつけて項垂れている。
耳も尾もへたりとしている。
「!」
それを見たリリナが小走りで近付き、話し掛ける。
「アシュリぃ……大丈夫?
元気出ない?」
「……!
ううんっ、そんなことないよー! 元気元気!」
二人に気付き、空元気を見せるアシュリィ。
「……待たせたな。ここでの用事は済ませた。
……。
……で、ここの主人と一体何があったんだ?」
行き先も告げず、ゆっくりと歩を進めるラウル。
それに合わせて二人も歩き出す。
「……ん……とね……。」
気まずそうにしながらも口を開くアシュリィ。
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