上 下
17 / 88
第2章

2-02 明里の入学式

しおりを挟む
 先週、明里が大学へ着ていく服を準備させた。
 今までは高校の制服で良かったが、大学で女子が毎日同じ服着ていたら恥かしい。
 明里は、今ある服でいいと言ったが、これからは女子大生なのだから、高校までの服とは、趣が違うでしょうと言った。

 それと、入学式に着ていく正装着と履物を買って来るように伝えた。
 入学式は、普段着でいいと言ったので、私は明里を人並に育てたいと言ったら、親が子に向けるようなこと、言わないで下さいと言われた。

 ・・・・・・

 そして今日は明里の入学式。
 私は、明里にお願いされて、大学の入学式に出席する事となった。
 私の中では、娘に付きそう父親の設定である。

 大学キャンパス内で一緒に歩くのは、さすがに恥ずかしい。
 キャンパスに着いたら別行動。
 適当にキャンパスをまわってから入学式場に行く。
 という事で許してもらった。

 私は普段のスーツ、明里は用意した正装着で大学の入学式に向かった。
 大学の校門前に着くと、新入生は校門を背に、親御さんと一緒に記念写真を撮っている。
 その順番待ちとして、長い列が出来上がっていた。

 校門を通ると、大学の関係者らしき人が並んで、「おめでとうございます」と声を掛けながら大学のロゴが印刷された小さなバックを渡している。
 中には、大学のマスコットキャラクターが印刷されたクリアファイルや飲料水ペットボトル、大学を紹介するパンフレット等が入っていた。

 明里とは、打ち合わせどおり、ここで別れた。
 都内にありながら、なかなか広いキャンパスだ。
 キャンパス内を、散歩しながら見てまわった。

 体育館が入学式場になっている。
 まだ早いが、式場に入った。
 大きな体育館だ。

 新入生に用意された椅子が、体育館を埋め尽くしている。
 新入生の親族は、2階の観客席へ誘導された。
 私は、2階の前の席に座り、集まって来た新入生を見ていた。

 席が決まっている訳ではなく、自由に座っているようだ。
 ブロック単位で概算すると、新入生の数は3000人ぐらいだろうか。
 学部にもよるだろうが、女性は3割ぐらいか。

 この人数の中、目に付く女性がいた。
 明里だ。
 決して目立つ装いではない。
 何故だろう。

 まだ、式は始まっていない。
 みんな、ガヤガヤしている。

 ところが、明里の周りだけ、整然としている。
 明里の周りに座る男どもは、緊張しているのか行儀よく座っている。
 この様子を見て、何とも言えない不安を感じた。

 式は、学長の挨拶、吹奏楽団の演奏等が行われた。
 式を終えて体育館を出ると、何やら小さな人だかりが目に付いた。
 その中心にいたのは明里だった。

「ねえ、どこの学部?」
「彼氏いるの?」
「サークル決めた?」

 男どもが、明里を囲って質問している。
 私は、明里のスマホに電話した。
 … … … …

「繁盛してますね」
「う~助けて!」
「駅前にある〇〇ホテルのコーヒーラウンジで待ってる」
「ちょっとぉ~」

 私は電話を切った。
 明里を遠くから目で追った。
 明里は、群がる男共に頭を下げて、その人だかりから脱出した。

 私も約束の場所へ向かった。
 コーヒーラウンジに着いたのは、私の方が早かった。
 案内された席に着いて、ブレンドコーヒーを注文した。

 明里も一足遅れて到着した。
 私は明里に提案した。
「入学式を終えた学生で駅は溢れているから、ここで落ち着くのを待ちましょう」
「う~」

 明里にとっては、それどころではないようだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:解っていた事
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

処理中です...