【完結】婚姻届けの行方

青村砂希

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第10章

10-01 明里さんと社員旅行

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 さて、明日からの(木)(金)は、毎年恒例の社員旅行が予定されている。

 第1研から第3研、合同での社員旅行。
 私は東北研究所に赴任していた為、この社員旅行は6年ぶりになる。

 社員旅行と言えば、碧と最初に会った事を思い出す。
 二人で抜け出して、ホテルのスイートで飲んだ。

 そして今回は、明里と一緒。
 ……めちゃくちゃ不安だ。

 その日の退社後、マンション近くのスーパーで待ち合わせをした。
 明日の旅行で必要な物を買う為に、付き合って欲しいと明里にせがまれた。

 必要な物と言っても何もない。
 ホテルへ行って宴会に参加して、その後温泉に入って次の日帰る。
 ただそれだけだ。

 本当に何も無いと言ったのだが、明里は「おじさんと一緒に旅行準備の買い物をしたい」との事。
 明里は明日の社員旅行、楽しみの様だ。

 衣類コーナーをまわっていると、ふと衣類用の防虫剤が目に入った。
 今度は私から明里に、お守りとしてナフタリンを渡しておこうか……。

 特に何か買う訳でもなく、ただ、私とこんな買い物を見て回りたかった様だ。
 結局夕食の食材だけを買って、自宅マンションへ向かった。

 明里が夕食の準備をしているあいだ、私はゆっくりと湯舟につかっていた。
 明日は、同じホテルに泊まりながら、別々の夜を過ごす。
 ……事故が起こる様な事……ないよな~

 ・・・・・・

 次の日、ゆっくりとした時間で明里と家を出た。
 宴会は17時から。
 それまでに着けば良い。

 若い連中は早くから行って、リゾート気分を味わう計画を立てている様だ。
 明里も誘われた様だが、お受けしなかったと言っている。

 明里の会社でのこれから……このままで良いのだろうか……。
 まあ、群れない社員も珍しくない。
 明里の判断に任せよう。

 駅に着いて明里と別れた。
 別々の車両に乗る為である。

 社員旅行のホテルへ着いて浴衣に着替え、宴会場へ向かった。
 宴会は、上座に部長以上の重役が座り、そこから役職の若い順に席が決められている。

 新人の明里は、重役の目の前の上座席。
 私は一番後ろの下座席となっていた。

 時間になった。
 社長から一言頂き、取締役から乾杯の音頭。
 宴会が始まった。

 最初、所長にビール瓶を持って挨拶しに行った。
 ビール瓶は形だけである。
 皆が注ぎに来る。

「私はそんなに飲めないから」
 と言って、逆に私が注いでもらった。
 二言三言、お話しを頂き、深く頭を下げて席を離れた。

 次に、部長の席へ挨拶に向かった。
 部長とは、水瀬碧である。

 丁度斜め後ろが明里の席だった。
 他人行儀な会話を交わし、深く頭を下げて席を離れた。

 私が自分の席に戻ると、元ストロベリーのメンバーが集まって来た。
 一番後ろの席である。

 無礼講で、わいわいガヤガヤ。
 上座に座らされて席を外せない碧……私も混ぜてよと、こちらを睨んでいる。

 明里を目で探すと、明里もビール瓶を持って、先輩達に挨拶まわりをしていた。

 宴会も、お開きの時間となった。
 明里の席を見ると、若い男性社員に囲まれている。
 ……ちょっと心配。

 温泉につかってゆっくりした。
 前回の社員旅行では、東京に置いてきた明里を思い出してしまった。

 今回は、明里も一緒に来ている。
 ……だんだん心配になってきた。

 温泉を出て、温まった体で渡り廊下を歩いている。
 至る所で、男性社員が女性社員を誘っている。
 ……けしからん。

 そういえば、以前の社員旅行で、新人の綾乃が若い社員に囲まれて拉致、いや、誘いを受けていた。

 新人の明里も、先輩達に囲まれて誘いを受ければ、上手に断れるだろうか。
 おじさんの会社に、悪い人はいない。
 等と思っていそうだ。

 心配になって、明里のスマホに電話した。
「……現在、電波の届かない所にいるか、電源が切られています……」
 私の心配が一気に高まった。

 何が起きている。
 私は速足で、このホテルの中を探しまわった。

 すると、私のスマホに、碧からメールが届いた。
 『〇〇ホテルのスイートルームに来ています。主幹も来られませんか』

 ん~……魅力的なお誘いだが、今はそれどころではない。
 明里が食べられる前に、早く見つけ出さないと。

 『ごめんなさい』のメールを碧に返信しようとした時、碧から新たにメールが届いた。
 『明里さんも一緒です』

 ……なにぃ?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:内緒話
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