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第31話 王都キリスティア

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 王都キリスティア。
 
 キリスティア王国最大の都市にして、大陸最古の都でもある。
 国土こそ南方のガルハルド帝国に劣るものの、事影響力に関しては今尚大陸でも随一であり、軍事力においても親衛隊である剣王騎士団を始め、3人の宮廷魔術師を擁立した魔術師隊など、他を圧倒した戦力を有していた。
 最も、その力も先の王都襲撃事件において疑問符がつけられ、最近ではその汚名を返上するべく国内外を始め王国兵が奔走しているという話である。

「だから未だにこんな事になってるのかね」

 俺は王都の中心に位置する王城の城壁の西側に目を向けながらふとそんな事を呟く。
 俺の視線の先にある城壁は無残にも破壊され、本来ならばさぞかし美しかったであろう景色も、唯の瓦礫とかしている。
 それどころか、街の一部も完全に破壊され、はるか北方に位置するガルニア山脈まで見えてしまうような有様だった。
 流石に街の外壁の補修は済んでいるようだが、国の顔とも呼べる王城がこの有様ではいくら他国に使者を出しても無駄なんではなかろうかと思うのだが。

 城門に向かう橋の上で一人佇みながら考える俺だったが、こんな場所で一人佇んでいるのには理由がある。
 それは、現在俺が眺めている光景の元凶である人間がリディアと同じ魔人族であったということ。
 それから、クロスロードと同様にこの街でも獣人族の行方不明事件が起きていたという事だった。
 
 クロスロードから一週間の時間をかけてここまでたどり着いた俺達だったが、到着後に街の門番に言われたのが先の問題についてだった。
 リディアとレイラは何時も通り人間スタイルで統一していたため、特に怪しまれる事は無かったのだが、いつ何時正体がバレるとも限らない。
 そういった理由から嫌がる二人を無理やり納得させて宿屋に詰め込んだ後、こうしてお城まで知り合いを訪ねてきたというわけである。
 知り合いとは他でもない。

 アレックス・アルバディア。
 
 俺の恩師であり、現在キリスティア王国の宮廷魔術師をしている男である。
 初めは半信半疑だったこの噂も、酒場での情報収集でその容姿や性格などからほぼ間違いない事が判明している。
 そうなれば、俺が生きている事がわかれば先生の方から接触してくるかもしれない。
 そう考えてわざわざ城門に繋がる橋までやってきたわけだが、ここに来て非常に苦戦しているわけである。

「ですから、教え子です。テオドミロが訪ねてきたと言ってもらえれば通じるはずですから」

 俺は橋の上で行く手を遮るように立ちふさがっている鎧姿の兵士に必死に食い下がるが、目の前の兵士は全く聞き耳を持ってくれなかった。

「ダメダメ。宮廷魔術師殿は忙しいのだ。そんなどこの馬の骨ともわからぬ輩を会わせる訳にはいかん」

 そんな兵士の返答に俺は心底うんざりする。
 こんな不毛なやりとりはもう半刻以上しているのである。
 にも関わらず、全く進展する兆しが見えない。
 俺は嘆息すると、これ以上この場にとどまる事の無意味さを悟る。
 先生に会えさえすればフィリスの居場所もすぐに分かると踏んでいた。
 実際にキリスティアにたどり着いて集めた情報によると、先生がこの街に現れたのはもう半年以上前の事で、その頃は傍らに銀髪の少女もいたらしい。
 しかし、先生が宮廷魔術師に就任したあたりからその少女はパッタリと姿を見せなくなり、最近では彼女の姿を見たものはいないと言う事だった。
 単純に考えれば先生の家か城の中という事になるが、どちらにしても先生と渡りをつけなければ確認しようもない事柄である。
 銀髪の少女というだけではそれがフィリスというのも確定ではないというのに……。

「……分かりました。ですが、もしもアレックス・アルバディアに会う事があったら伝えてください。テオドミロがこの街の酒場で待っている……と」
「あー、わかったわかった。伝えとくよ」

 絶対に伝わらないな、と思いつつ俺は橋から離れていく。
 元々一日目で会えるとは思っていなかったが、ここまで悪し様に扱われるとは思っていなかったので若干ショックであった。
 それでも、ほんの少しでも出会える可能性があるのならと、俺は酒場に向かうのだった。




 
 結局時間の無駄だった。

 夕日が差し込む酒場の席に付きながら、ぼんやりと外の様子を見ながらそんな事を考えていた。
 王都に来れば今まで分からなかった事の大半が分かると思っていたのが如何に都合の良い考えだったかがよくわかった一日でもあった。

 今日一日で分かった事といえば、今までは噂の粋を出なかったアレックス先生が宮廷魔術師になっていたのがどうやら本当であるらしい事。
 それから、フィリスかどうかの判断はつかないが、先生が銀髪の少女を保護しているらしい事。
 普通に考えるならば、あの襲撃の時に村にいた先生がフィリスを保護したと考えるのが普通だ。
 あの時も普通に授業があったろうし、あの時点での生徒は俺とフィリスだけだった。
 ならば、俺が不在である以上、先生の傍にいたのはフィリス1人であった筈だ。
 そう考えれば、あの襲撃を逃れた先生の傍にフィリスがいても何ら不思議ではない。

 わからなかった事はレアンドロの行方と、行方不明になった獣人達の行方である。
 大森林の獣人族だけではなく、クロスロードやキリスティアでも獣人達が行方不明になっている事を考えると、とんでもない数になっている。
 にも関わらず、レアンドロの足取り一つ掴めないのがあまりにも不自然であった。
 
「……はあ……」

 俺は溜息を吐くと立ち上がり、店主に注文した飲み物の代金を支払う。
 ここまでの旅でお金もかなりの額を使ってしまった。
 あと数日はなんとかなるだろうが、お金が尽きる前に仕事も始めなければいけないかもしれない。
 今までの経験上仕事を始めると無駄に時間がかかる上に全く進展が無くなるからあまりやりたくはないのだが、生きていく以上は仕方のないことである。
 サイレントで大量に手に入れたサイレント紙幣が使用できない以上致し方ない事ではあった。

 俺は人気の少なくなった酒場を出口に向かって歩く。
 明日はどうしようか。
 伝わるかどうかは分からないが、門番に伝言を残した以上はここで待っているのが通常ではあるが、今日のように無駄な時間で終わる事も十分考えられる。
 ならば、明日の朝に店主にレイラとリディアが泊まっている部屋に行くように伝言を頼んでおいて、街中で情報を集めるのがいいかもしれない。

 俺は頷きながら扉に手をかけると、そのまま外へと押し開いた。
 目の前に広がった景色は街を赤く染め上げ、左手に見える城を引き立てるように立ち並ぶ見事な街並みが、まるで一枚の絵画のように見えた。

 その絵画の中央で、1人の男が立っていた。

 黒髪黒目で白いローブ姿の長身の男。
 よく見ると白いローブには王家の紋章が入っている。
 右手には赤い宝石の入った杖。
 そこまで見てわかったのは、その男が王家の関係者だという事だ。
 それも、かなり位は高い。王家の紋章の刺繍を入れる事が許される人間が何人いるのは分からないが、少なくとも一般兵ではそういかないだろう。
 
 しかし、驚いたのはそこではない。そんな事では断じてない。
 かつては黒のローブを愛用していた。
 今思えばまるで魔人族のようなスタイルだが、魔術師の最高峰である魔人族を意識するのは魔術師であった彼ならば当然だったのかもしれない。
 だから、今着ている白いローブに違和感がありすぎて、すぐには思い出せなかったのだ。

「話を聞き、もしやと思い来てみれば……」

 懐かしい声に確信する。
 もう間違いない。
 この人は俺のよく知る人物だった。

「アレックス先生!」
「無事で良かった。よくここまで来てくれたね。テオ」

 アレックス・アルバディア。
 故郷の村で教鞭を取っていた魔術師は、柔らかな微笑みを浮かべながら、俺との再会を喜んでくれた。





 どうやら先生はこっそり城を抜け出してきたらしい。
 
 再会した後人目に付く所は不味いというので、俺達は郊外に向かって歩きながら、そんな話を聞いていた。
 それというのも、王都襲撃事件の件はサイレントの王子が片付けたという事で厳戒態勢は解かれたとの事だったが、現在キリスティア国内で頻発している獣人族失踪事件の件であちこち引っ張りだこだったらしい。
 要するに、俺が城門エリアで先生との面会を申請した時は、先生は不在だったという事だ。
 だったらそう言えばいいものを、そう言わなかったのは王都襲撃の時の事を引きずっているのかもしれない。
 なんでも、シグルズがこの街で襲撃した相手というのがこの国の宮廷魔術師だという話だからだ。

 そうして遠征から帰ってきた先生が門番の兵士から俺の名を告げられ、もしかしたらと足を向けた時に酒場から出てきたのが俺だったというわけだ。

「本音を言うと私はテオの事はもう諦めていたんだ。しかし、あの村が襲撃された時あの場所にいなかったのは私たちを覗くとテオだけだ。だから、絶対に生きていると彼女が引かなかったものだからね」

 その言葉を聞いて俺は重要な事を思い出す。
 先生にあったら何よりも初めに聞こうと思っていた事を。

「彼女……先生。ひょっとして先生と共にいた人間というのは……」

 俺の言葉に先生はニッコリと微笑む。

「フィリスだ。あの時私達は森の中にいた。だから、襲撃には居合わせなくて助かったのだよ」

 やはりか。
 俺は思わず飛び出しそうになる歓声を必死に抑え、先生の言葉の中の疑問に質問する。

「森の中? どうしてその時2人は森の中にいたのですか? ひょっとして課外授業か何かで?」

 俺の言葉に先生は足を止める。
 そして、俺の顔を見ると少しだけ悲しそうな顔をした。

「テオ。君を探す為だよ。あの日の夜に君は再び行方不明になっただろう? 君がいなくなった日の早朝にフィリスが私の家に駆け込んできたのだ。テオがまた居なくなった。一緒に探して欲しい……とね」

 その言葉を聞いて、俺はあの時のフィリスの顔を思い出す。
 村に帰ってきて、ボロボロになった俺を殴ったフィリス。
 その涙に濡れたその顔を。

「丸一日探した。でも見つからなくて、一度村に戻ろうとした時に目にしてしまったのだよ。燃え上がる村と去りゆく無法者の集団をね」

 どうやら、先生とフィリスは森の中ではレアンドロと行き違いになっていたらしい。
 それが幸か不幸か今となっては分からないが、少なくとも2人の命が助かった結果にはなった。
 しかし、それだとおかしな点がひとつ出てくる。

「俺が村に帰ってきた時、村は襲撃の後手つかずのようでした。2人はレアンドロが立ち去った時に村に戻ってきたのでしょう? その時に村の人達を助けようとは思わなかったのですか?」

 俺の言葉に先生は顔を曇らせる。
 俺の言いたい事がわかるのだろう。
 だからこそなかなか言葉が出てこない。
 先生は魔術師だ。
 ならば、すぐに対処すれば助かる人もいたかもしれなかったのだ。

「……既に生き残りはいないと判断した。それほどまでに凄惨だったのだよ。あの場所は。そして、何よりも私は大切な教え子の意思を尊重してあげたかった」
「教え子の意思?」

 俺の言葉に、先生はゆっくりと頷く。

「既にフィリスの実家は炎に包まれていた。そして、篝火が焚かれたままの村の様子から彼女は判断したのだよ。『まだテオは帰ってきていない』とね」

 その言葉に俺は背筋に冷たいものが走る。
 フィリスの意思。
 そして、俺が帰ってきていないと判断した後の行動。

「彼女は君を探すことを優先した。既に死んでしまっている両親や村人達よりも、生きているかもしれない君の行方を追ったのだ」
「ふざけるな!!」

 俺は思わず大声をあげる。
 郊外と言ってもまだ夕暮れと呼べる時間帯だ。
 住宅が並ぶこの場所では住民の視線を集めるのに十分な声量だった。
 先生はそんな俺の手を取ると路地裏に向かって歩き出し、その姿を住民の視線が入らない位置まで移動した。

「生き残りがいる可能性はゼロでは無かった筈だ」

 先生の後ろ姿を見ながら口にした俺の言葉に、先生は振り向きながら答える。

「そうだね」
「だったら、どうして!」

 再び大きな声をあげた俺の口元に、先生は立てた人差し指を伸ばし、声を落とせと無言で要求した。

「テオ。君が村に戻った時、生き残りはいたかね?」
「それは……いなかったけど……」

 静かに告げる先生の言葉に思わず納得しかけた俺だったが、すぐに睨みつけるように先生を見据える。

「でも、それは結果論です」
「君の言う通りだ。しかし、あの場に飛び込んだ所で単純に死体が2つ増えただけかもしれない」

 先生の言うことは間違ってはいない。
 間違ってはいないが、これは気持ちの問題だ。
 正しいから納得できるという問題ではない。
 
 でも、本当はわかっている。
 そもそも、事の発端は俺なのだ。
 あの時俺が森に入ってレアンドロにあわなければ、あのような結果にはならない筈だったのだ。
 それがわかっていながらここまで食いつくのは、俺自身が自分の責任を他人に転嫁したいだけなのだ。
 こんな事を考えてしまう自分が本当に嫌になる。

「……フィリスに会いたい」
「無論そのつもりだよ」

 俺の独り言に先生が答える。
 顔を上げると、真剣な顔をした先生と目があった。

「フィリスはずっと君を探していた。あれからずっとだ。あの村の惨状を見た彼女が今も生きている理由はもうそれしかなかったのだ。そんな彼女に、『テオは死んだ。諦めろ』等とどうして言える? 私には言えない。言っていたら、彼女はその場で命を絶ったかもしれない」

 悲痛な表情で先生は言う。
 2人で旅をしている時のフィリスの様子は俺には分からないが、よほど酷いものだったのかもしれない。

「だから、私は決め、実行した。君の生死に関わらず、彼女を生かす方法をね」

 先生は言いながら俺に一歩近づく。
 その歩幅に合わせて俺は一歩後退する。
 何故かはわからない。
 しかし、先生の纏う空気が、雰囲気が、何故か不穏なものを感じた。

「その方法とは……何ですか?」
「それを話す前にテオに1つ聞きたい事がある」

 背中にじっとりと汗を掻きながら俺は聞く。
 そんな俺に対して、先生は目を細くして逆に質問を返してきた。

「今の君の目的は? よもや、あの時の狼藉者を追っている……なんて事は無いだろうね?」

 先生の問いに対して俺は答えに詰まる。
 本当は即答するほど確かな目的があるはずだ。
 なのに、この場で言ってはいけないような気がした。
 適当に話を合わせてフィリスに会わせて貰えばいい。
 しかし、頭の中に響いたそんな声を、俺は振り払うように無視した。

「俺は……あいつを、レアンドロを追っています。あの時の光景を、俺は一日だって忘れた事はない!!」
「……そうか」

 俺の答えに、先生は残念そうに俯いた。
 そう、本当に残念そうな声色で。
 
 しかし、すぐに顔を上げると、先程とは違う、ゾッとしたような据わった瞳をこちらに向けると、俺に向かって右手を伸ばす。

「なら、これ以上進ませるわけにはいかないな」
「え!?」

 先生の言葉がそのまま詠唱であったかのように、目の前の先生から魔力が膨らむ。
 それと同時に、誰かに後ろから首を掴まれるような感覚がした。
 この感覚は一度経験した事がある。
 そう、あの時。
 リディアと初めて出会い、フレイランドにたどり着いたあの時に──。

「ランダムシュート」

 先生の声と同時に、周りの景色が急速に後方に流れていく。
 首に掴まれた手の力は強くなり、凄まじいスピードで後方に投げ出されるような感覚。
 それは一瞬だった。
 次に息を吸い込んだ時には、俺達の周りの景色が変わっていた。

 目の前に先生がいるのは変わらない。
 しかし、俺達が立っているのは建物の影では無く、草原の真ん中だった。
 そしてなにより、先生の遥か背後に見えるのは、昼間に見上げたキリスティアの城だった。

「奴は危険だ」

 先生は右手をあげる。
 その先に魔力が集まって行くのが俺の位置からでもよくわかった。

「テオ。君は私の可愛い教え子だ。だからこそ、もうこれ以上危険な目には合わせない。フィリスと同じように、今から君を──」

 先生の目が狂気に染まる。
 それと同時に俺の中の本能が緊急アラームを鳴らし続けていた。
 そう、まるでシグルズ・ファフニールと対峙したあの時のように。

「──“保護する”」

 その雰囲気とはあまりに場違いな単語を口にして、先生の右腕が振り下ろされた。
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