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初めて馬に乗る
しおりを挟む──ドサッ
「あああああああ、終わったぁ!!もう動けない・・・無理ぃ!!」
肥料を全て小屋に運び、マリアンヌは最後の肥料を運び終えた。叫ぶマリアンヌを馬たちが心配そうに見ている。体は既に悲鳴をあげ、マリアンヌはポキポキと身体を鳴らした。
「あれ、終わったの?じゃあ僕は餌をあげたりしとくから休憩しといていいよ」
「やったぁ!!」
マリアンヌは丘に寝転がった。ユーグはブラウンに跨がり、丘の上を走らせていて、マリアンヌはなんとなくそれを眺めていた。
(なんだ、あんな楽しそうな顔も・・・するんだな)
ユーグはブラウンと楽しそうに馬を駆けていた。こんな面倒くさい世話をしているくらいだ。本当に馬が好きなんだろう。
「はぁ・・・すっきりした。やっぱ馬はいいね。マリアンヌも少し乗ってみるかい?」
「えぇぇえ!!無理だ、そんなの。落ちたらどうするんだ!?」
「大丈夫。僕がちゃんと守ってあげるから。ほら」
ユーグは渋るマリアンヌを引き上げ、馬に横のりにした。マリアンヌはユーグの服にしがみつく。
「う、うわぁ、たっけえ、死ぬ、死ぬって」
「身体の力を抜いて。僕に身体を預けておくだけでいいから」
マリアンヌは言われたとおり身体をユーグに持たれかけさせた。ゆっくりと動きだし、少しずつマリアンヌも慣れてくる。恐怖で止まっていた思考が動きだすと、ユーグの胸の筋肉が気になりだす。
(・・・ひょろいと思ってたけど・・・すごい筋肉だ)
ユーグはいつもマントを羽織り、身体のラインを隠している。しかしシャツからうっすらと筋肉が浮かび上がっていて胸板も広い。汗臭い彼の男らしい香りがマリアンヌの鼻をくすぐり、ドキドキと鼓動が速くなる。それをユーグに気づかれそうで、マリアンヌは身体を少し離したがバランスを崩しそうになった。
「ほら、捕まっとけっていっただろ」
ユーグは片手でマリアンヌの頭を胸に押し付ける。その意外と大きな手がマリアンヌの頭を覆い、耳の裏をかすめた。そのゾクリという感覚が気になって、馬上の景色を楽しむことは最後までできなかった。
(なんだか、こいつがかっこよく見えてきた・・・)
「楽しかった?」
「あ・・・ああ」
(違う・・・こいつはただのダサいガキだ、そんな訳あるか、しっかりしろ私・・・)
彼の動作の一つ一つが無駄にマリアンヌの心を揺さぶった。マリアンヌは上の空でその日残された仕事を終え、家に戻った。
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