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スノーランド婚約結婚編
オーロラの旅
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「では皆さん、参りましょう」
スノーランドの夜はマイナス20度~30度になる。皆マフラーや分厚いコートを身にまとい、トナカイのソリに乗って観測地に向かった。
「トナカイ初めて見たけど、可愛いいね」
「このスノーランドにはセイントニコラスという大主教様がトナカイに乗って良い子供たちにプレゼントを運んだという言い伝えもあるんですよ」
「へ~、詳しいね、ミリアちゃん。こっちに来てよく勉強してるのかな」
「はい・・・毎日家庭教師の方に教えてもらっていて、とても勉強になってます」
シルベスターは感心したように微笑んでいる。
4人乗りのトナカイのソリにミリアとシルベスター、そしてこの間の黒髪の騎士ランドルフと銀髪の騎士キースが後ろに座っていた。
「いやぁ~ミリちゃん、すっかり王女様でミリちゃんが遠くなっちゃったな~」
「毎日王女らしくなるように意識してるので、よそよそしくなってしまったらごめんなさい。でもキースさんとはこれからも仲良くしたいと思ってますよ」
銀髪の騎士がミリアに親しそうに話す。彼の名はキースで副団長をしているとマールから聞いた。ミリアは彼とも交流もあったそうだ。ミリアの記憶喪失がばれないように、今マールとは耳の通信機は繋ぎっぱなしで、『キース副団長もミリアさんと親しかったです・・・ミリアさんは彼のことをキースさんと呼んでいました・・・』と通信機越しに助言をしてくれている。
(エドアルドが私は騎士団で会計士をしてたって言ってたものね・・・そりゃどちらも知り合いだわ・・・)
ミリアはちらりと黒髪の騎士ランドルフに目配せする。彼は仕事に集中しているのか周りの気配に警戒している。ずっと無表情であるようだが、先日ミリアを呼び止めた際は何か物言いたげな表情をしたことがミリアの心に引っ掛かりを覚えていた。
(あれは・・・部下をみるような目じゃなかった・・・まるで・・・)
「ミリちゃん?」
ミリアは一瞬意識を飛ばしてしまったようだ。キースに話しかけられていたのに返事をしていなかった。
(やだ、皆さんをおもてなししている最中なのに・・・)
ミリアは笑ってごまかした。そうこうしているうちに四人の乗ったソリはオーロラの見える場所へと到着した。
「皆さん、こちらにお座りください」
ぞろぞろと他の研究員や侍女たちのソリが到着し、だっだっぴろ平地に座り込んだ。皆期待に胸を膨らましている。
『わーーーーーー!!』
緑色の絹のような滑らかな光が空を包み込む。その光たちは絡まりあったり方向を変えてゆらゆらと空を漂っている。
「すてき・・・」
「うちの妻や子供にも見せてあげたいな」
そこにいた皆が、感銘のため息をつき空から目を離せないでいた。
(皆喜んでくれてる・・・よかった)
ミリアはその観賞している列から抜け出し、ホットワインを用意する。するとサクッサクッと雪の上を歩いてミリアに近づく人物に気づいた。
「手伝おう・・・」
そこにいたのはあの黒髪の騎士、ランドルフだ。平地であり危険はないと感じたのか先程より余裕のある表情をしている。
「ありがとうございます・・・」
無言で二人はワインが煮え立つのを待った。グツグツと煮え始め、ミリアは熱を均等にするためにワインを混ぜ、コップにワインを注いだ。
「寒いでしょう。あなたもワインを・・・どうぞ」
「ありがとう」
ワインをランドルフに渡す瞬間、かすかに二人の手が触れあう。
「あっ・・・ごめんなさ・・・」
ミリアがランドルフに視線を向けて謝ろうとすると彼はミリアを無言でじっと見つめていた。彼はワインのコップを持っていない手でミリアの頬を触った。
「ミリア・・・」
ランドルフの顔が徐々にミリアに近づく。ミリアはその動作に既視感を覚える。無意識にミリアの瞼が下りていった。
ーパチパチパチパチパチパチ
「素晴らしかった!」
「まるで女神が下りてくるようだったな」
オーロラが消えてしまったようで、まるで舞台の幕が降りた時のように拍手喝采である。ミリアとランドルフはハッと我に返り、いそいそとワインをコップに入れていった。
(なんだったの・・・あれは・・・)
ミリアは帰り道、先ほどの情景が頭から離れずに、キースとシルベスターが話しているのをボンヤリと聞いていたのだった。
スノーランドの夜はマイナス20度~30度になる。皆マフラーや分厚いコートを身にまとい、トナカイのソリに乗って観測地に向かった。
「トナカイ初めて見たけど、可愛いいね」
「このスノーランドにはセイントニコラスという大主教様がトナカイに乗って良い子供たちにプレゼントを運んだという言い伝えもあるんですよ」
「へ~、詳しいね、ミリアちゃん。こっちに来てよく勉強してるのかな」
「はい・・・毎日家庭教師の方に教えてもらっていて、とても勉強になってます」
シルベスターは感心したように微笑んでいる。
4人乗りのトナカイのソリにミリアとシルベスター、そしてこの間の黒髪の騎士ランドルフと銀髪の騎士キースが後ろに座っていた。
「いやぁ~ミリちゃん、すっかり王女様でミリちゃんが遠くなっちゃったな~」
「毎日王女らしくなるように意識してるので、よそよそしくなってしまったらごめんなさい。でもキースさんとはこれからも仲良くしたいと思ってますよ」
銀髪の騎士がミリアに親しそうに話す。彼の名はキースで副団長をしているとマールから聞いた。ミリアは彼とも交流もあったそうだ。ミリアの記憶喪失がばれないように、今マールとは耳の通信機は繋ぎっぱなしで、『キース副団長もミリアさんと親しかったです・・・ミリアさんは彼のことをキースさんと呼んでいました・・・』と通信機越しに助言をしてくれている。
(エドアルドが私は騎士団で会計士をしてたって言ってたものね・・・そりゃどちらも知り合いだわ・・・)
ミリアはちらりと黒髪の騎士ランドルフに目配せする。彼は仕事に集中しているのか周りの気配に警戒している。ずっと無表情であるようだが、先日ミリアを呼び止めた際は何か物言いたげな表情をしたことがミリアの心に引っ掛かりを覚えていた。
(あれは・・・部下をみるような目じゃなかった・・・まるで・・・)
「ミリちゃん?」
ミリアは一瞬意識を飛ばしてしまったようだ。キースに話しかけられていたのに返事をしていなかった。
(やだ、皆さんをおもてなししている最中なのに・・・)
ミリアは笑ってごまかした。そうこうしているうちに四人の乗ったソリはオーロラの見える場所へと到着した。
「皆さん、こちらにお座りください」
ぞろぞろと他の研究員や侍女たちのソリが到着し、だっだっぴろ平地に座り込んだ。皆期待に胸を膨らましている。
『わーーーーーー!!』
緑色の絹のような滑らかな光が空を包み込む。その光たちは絡まりあったり方向を変えてゆらゆらと空を漂っている。
「すてき・・・」
「うちの妻や子供にも見せてあげたいな」
そこにいた皆が、感銘のため息をつき空から目を離せないでいた。
(皆喜んでくれてる・・・よかった)
ミリアはその観賞している列から抜け出し、ホットワインを用意する。するとサクッサクッと雪の上を歩いてミリアに近づく人物に気づいた。
「手伝おう・・・」
そこにいたのはあの黒髪の騎士、ランドルフだ。平地であり危険はないと感じたのか先程より余裕のある表情をしている。
「ありがとうございます・・・」
無言で二人はワインが煮え立つのを待った。グツグツと煮え始め、ミリアは熱を均等にするためにワインを混ぜ、コップにワインを注いだ。
「寒いでしょう。あなたもワインを・・・どうぞ」
「ありがとう」
ワインをランドルフに渡す瞬間、かすかに二人の手が触れあう。
「あっ・・・ごめんなさ・・・」
ミリアがランドルフに視線を向けて謝ろうとすると彼はミリアを無言でじっと見つめていた。彼はワインのコップを持っていない手でミリアの頬を触った。
「ミリア・・・」
ランドルフの顔が徐々にミリアに近づく。ミリアはその動作に既視感を覚える。無意識にミリアの瞼が下りていった。
ーパチパチパチパチパチパチ
「素晴らしかった!」
「まるで女神が下りてくるようだったな」
オーロラが消えてしまったようで、まるで舞台の幕が降りた時のように拍手喝采である。ミリアとランドルフはハッと我に返り、いそいそとワインをコップに入れていった。
(なんだったの・・・あれは・・・)
ミリアは帰り道、先ほどの情景が頭から離れずに、キースとシルベスターが話しているのをボンヤリと聞いていたのだった。
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