秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
上 下
92 / 121
スノーランド婚約結婚編

フェリス国研究員の滞在

しおりを挟む
「フェリス国から数人の研究員たちがいらっしゃるそうだ。彼らはこの国にも暖房技術などを提供してくれ、とても世話になっている方々だ。ミリアもそろそろ国務をこなしてもらわないとと考えてところだから、君に彼らの接待をしてもらおう」
「は、はいお叔父様」


ミリアがスノーランド国王の養女となり三ヶ月が経った。毎日勉学に励み、スノーランドの王女として板のついてきた頃である。国王の仕事を徐々に引き継いでいる次期国王である叔父
ケネスがミリアにそう指示した。

(フェリス国の研究員たち・・・どんな方たちだろう・・・)


ミリアは王都の迎賓館での食事会や、そこに隣接する宿泊施設を手配したりと、準備に追われていたが、なんとか勉学と国務を両立しながら、研究員が訪問する日を迎えた。



「遠くからようこそいらっしゃいました。スノーランド王女ミリア・フォン・ストールベリと申します」

ミリアはスノーランド式の挨拶をし、旅に疲れている彼らを宿泊施設へ連れていく前にホットチョコレートを振る舞った。


今回訪問したフェリス国の研究員は五人。一際目立っていたのはミリアと同じくらいの年齢の若そうな男性で、名をマールと名乗った。正式な挨拶の後、マールはミリアに近づいていった。騎士たちは少し警戒するが、ミリアは騎士たちに目配しし、問題ないことを伝える。


「ミリアさん・・・お久しぶりですね・・・今回の訪問でミリアさんに会えるって聞いてすごく楽しみにしてたんですよ・・・」
「え・・・」


(この人、私のこと知ってるの・・・?)


まさかミリアを知っている人が訪問すると思っていなかった。ミリアは記憶喪失のことは公にしていないので、どうしようか迷ったが、嘘を突き通すことにした。


「お久しぶりです、マールさん。お元気でしたか?」

マールはミリアの態度に首をかしげる。ミリアは記憶喪失なのがバレてしまったかと少し不安になるが、彼は話し出した。


「元気に・・・してましたよ。積もる話もあるので、是非研究室に遊びにきて下さいね。なんたってミリアさんと僕は・・・夜部屋に行き来する程の仲なんですから」
「え、ええ。もちろんですわよ」


(私、彼とそんな仲良かったの!?)


ミリアは冷や汗が流れたが、なんとかその場をやり過ごした。



「ところで皆さんの今回の滞在の目的は何なのでしょうか」
「実は、“鉄道”と言って長距離を鉄の線の上で高速で走る乗り物を作ろうと思うのですが、その原動力がかなりの力を必要としておりまして、鉱山が豊富であるスノーランドで調査しようと思っております」


年は四十代程の研究員がミリアに鉄道の仕組みを簡単に説明した。


「もし成功しましたら、海の上にも線路を作りまして、フェリス国中心部からスノーランド中心部まで約二時間で到着することでしょう」
「まあ!素晴らしいわ!是非とも成功したいわね!国交が活発になったら嬉しいわ。こちらも全力で協力させて頂きますわね」
「ありがとうございます、ミリア王女」



ミリアは彼らの研究室を臨時で用意していたので、そこまで案内する。鉱山に詳しい地元民も手配し、天気が良ければ三日後に鉱山へ向かうこととなった。歓迎会もなんなく終わり、夜の十時頃にお開きとなった。



ミリアはヘトヘトで布団に潜り込んだ。



(あ~疲れた~でも、“鉄道”なんて夢があるわ・・・)



その日ミリアは見たことのない鉄道に乗り、旅をする幸せな夢を見た。その隣には、誰か男の人が乗っていた気がした。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...