秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
上 下
41 / 121
第二章:恋の芽

騎士団のお仕事④

しおりを挟む
「ランドルフ騎士団長・・・怒ってますよね。私が疲れてしまってキースさんが気を使ってマッサージしてくれたんです。サボるつもりは決してなくて・・・」
「いや、君のせいではないよ。俺も少し感情的になって申し訳なかった」


ミリアはランドルフに向かい立ち上がって謝罪した。するとランドルフもスッと立ち上がり、彼の手のひらをミリアの頬に当てた。

「君は誰に対しても一歩引いていたように見えたが、最近ではキースや団員に対しても警戒心を解いているように感じる」
「・・・」

ミリアは今まで女性としての劣等感と、シャーロットのことで特に警戒して過ごしていたが、王城で過ごしていくなかで、偏見を持っていない素晴らしい人たちに出会えた。そして最近では徐々に警戒心が溶けていったのだ。

「シャーロット様やシルベスター様、キースさんやランドルフ騎士団長たちのような方に会えたから、心の壁も少しずつ取れてるのかもしれません」
「・・・俺だけになついてほしいって思うのは嫉妬深いのかな」

ランドルフはミリアに少しずつ近寄り、ミリアをぎゅっと抱き締めた。



ードクッドクッドクッーーー


ランドルフの大きな心臓の音が聞こえてくる。ランドルフの胸は広く、ミリアをすっぽりと包み込んだ。彼の胸の中は安心するような、でも弟のエドアルドに対する感情とは少し違う。不思議な感覚に陥った。


「ランドルフ騎士団長・・・」

ミリアがそう呟くとランドルフの抱きしめる力が一層強くなる。

(他の人に触れられても何も感じないのに、師匠に触れられるだけで、なんだか安心するような、胸が苦しくなるような・・・なんだろ、この気持ち)


ランドルフはパッと体を離し「すまない・・・頭を冷やしてくる」と言って部屋を出ていった。


(もっと抱きしめてほしかった・・・ってなんてこと考えてんの私!)


ミリアもランドルフもその日は仕事がなかなか身に入らなかった。



次の日から、ミリアは使われなくて荷物置きになっていた事務室へと移動するようにと告げられた。朝練はいつもと変わりなく指導してくれるが、事務仕事が始まると、ランドルフはできるだけミリアに近づかないようにしていると感じた。会話は書類の受け渡し時と、仕事の終了時に挨拶するくらいだ。


(やっぱり私のこと避けてるよね・・・)



なぜこうなってしまったのだろうか。ミリアは分からないでいた。そしてミリアは心の奥がきゅっと痛くなった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...