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第二章:恋の芽
お出かけ②
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「わぁ~人がいっぱいですね」
「月に一度王都で開催されるフリーマーケットなんだが、他国からも商人がやってきてるから、珍しいものが買えると好評なんだ。もちろん普通の店も空いているから、好きな店に寄るといい」
ミリアは目をキョロキョロさせながらフラフラと品物を見ている。
「このランプ、何でできてるんだろ。見る方向で色が違うように見えるけど」
「おや、お目が高いですな、お嬢さん。これは本土でも遠く離れた中東で仕入れた品じゃ」
「へ~綺麗ですね。これおいくらですか?」
「三十リールじゃが、綺麗なお嬢さんには二十リールにしておこう」
「ランプは欲しいと思ってたし、よし、買います」
「まいどあり」
商人は袋にクッション材と商品を入れてミリアに渡した。また見においでと商人はにこやかに見送ってくれた。
「重たいだろう、俺が持とう」
「あ、これくらい大丈夫です」
「男に女性をエスコートする仕事を取らないでほしいな。ほら」
ランドルフにさっとミリアの荷物を取り上げられた。その自然なミリアへの気づかいに、女性として扱われていることにドキリとした。
(他の人たちに女性扱いされるのは苦手だけど、師匠にこういう扱いされるのは嫌いじゃない・・・)
ミリアは小さい頃、弟のエドアルドがガキ大将三人組に虐められているのを見て、全員泣いて謝るまで殴った。勉強だって女性は程ほどにすればよいと言われている歴史や算数はいつもエドアルドに次いで二位を、体育ではいつも一番をとっていた。女性のくせにと男性だけでなく女性にも陰口をたたかれること多々だったミリアは孤立していった。そこにはいつも「僕がいるから、いいじゃない」と言ってくれるエドアルドがいた。
その後もちょっとした生活用品を買っていったが、どの荷物もランドルフが持ち、ミリアは身軽に買い物をすることができた。途中ランドルフの行きつけの加治屋が近くにあり、品物を取りにいかないと、というので付いていった。剣だけでなく弓や盾、レイピルなどがディスプレイされていた。その種類にミリアは感動してキョロキョロ視線を左右上下に動かした。すると気難しそうなお爺さんが店の奥から出てきてランドルフは話をしていた。もうしばらくかかるので近くの店を見ているようにとのことで、ミリアは隣の店を見て暇を潰すことにした。
(師匠と出かけること、色々心配だったけど、今日行ってよかったな)
ミリアはすでにランドルフに対しても以前弟子と師匠であった時のように心を開いて会話をしていたが、ミリアはそのことには気づいていない。
(わー、ここなんて亀も売ってる!)
(あ、これがシャーロット様の言ってた恋愛小説か)
だんだんと人通りも多くなり、ミリアは知らずうちに奥へ奥へと押しやられていった。
(あれ、ここどこだろう・・・さっきの加治屋の通りから外れちゃってる)
後ろを振り抜くと、夕食時となりレストランを探す人々が乱雑に行き交っていた。ミリアは様々な店に釘付けだったので気づかずフラフラと進んでしまったことに気づいた。
(う~ん、どうしよう。少しメイン通りからズレちゃったなぁ)
土地勘があまりないので、誰かに聞こうとしたが、男性が二人こちらに近づいてきた。
「こんにちは、お嬢さん。今一人?」
「僕らと一緒に遊びに行かない?」
(うわ~面倒くさそうな奴らに出会っちゃったな)
「結構です。興味ないんで」
「えー、そんなこと言わずに、ね?いいじゃん」
ミリアはこういった強引な奴らが嫌いだ。手を出してきたら自己防衛ってことで反撃してやろうと決意しているところだった。
「お嬢さん、探したぞ。こんなところにいたのか」
「ランドルフ騎士団長!」
ランドルフはギロっとミリアに話しかけていた男たちを睨み付けた。
「なにかこちらのお嬢さんにご用件でも?」
「ちぇ、男連れかよ。行こうぜ」
「ああ」
男たちは悪態をつきながら去っていった。
「すみません、ランドルフ騎士団長。私すっかり色んな商品に釘付けになってしまって」
「いや、俺が外で待たせてしまったのが悪かった。だがまたはぐれたら大変だな、ほら捕まっておくといい」
そう言ってランドルフは右腕を軽く浮き上がらせ、腕一個分が入るスペースを作った。
(腕に捕まっとけってことかな?)
ミリアは少し戸惑ったがまたはぐれたら迷惑がかかるので遠慮なくミリアの左手をランドルフの右腕にくぐらせた。ミリアの手が通ったのを確認すると、程よい強さでミリアの手をギュッと挟み込んだ。
(うわぁ師匠の腕分厚いなぁ。私にもこんだけ筋肉付いたらなぁ~)
ミリアはどう頑張っても男性のように筋肉がつかないので、分厚い筋肉を見ると触りたくなるのだが、昔は師匠の筋肉を触りたいと思ってたのだが、今こんなところで夢が叶ってしまった。
(おぉ、私は今、師匠の上腕三頭筋に、触れている!)
心の声が少し声に出ていたようで、ぶつぶつと言っているミリアにランドルフは不思議そうな顔をした。
「月に一度王都で開催されるフリーマーケットなんだが、他国からも商人がやってきてるから、珍しいものが買えると好評なんだ。もちろん普通の店も空いているから、好きな店に寄るといい」
ミリアは目をキョロキョロさせながらフラフラと品物を見ている。
「このランプ、何でできてるんだろ。見る方向で色が違うように見えるけど」
「おや、お目が高いですな、お嬢さん。これは本土でも遠く離れた中東で仕入れた品じゃ」
「へ~綺麗ですね。これおいくらですか?」
「三十リールじゃが、綺麗なお嬢さんには二十リールにしておこう」
「ランプは欲しいと思ってたし、よし、買います」
「まいどあり」
商人は袋にクッション材と商品を入れてミリアに渡した。また見においでと商人はにこやかに見送ってくれた。
「重たいだろう、俺が持とう」
「あ、これくらい大丈夫です」
「男に女性をエスコートする仕事を取らないでほしいな。ほら」
ランドルフにさっとミリアの荷物を取り上げられた。その自然なミリアへの気づかいに、女性として扱われていることにドキリとした。
(他の人たちに女性扱いされるのは苦手だけど、師匠にこういう扱いされるのは嫌いじゃない・・・)
ミリアは小さい頃、弟のエドアルドがガキ大将三人組に虐められているのを見て、全員泣いて謝るまで殴った。勉強だって女性は程ほどにすればよいと言われている歴史や算数はいつもエドアルドに次いで二位を、体育ではいつも一番をとっていた。女性のくせにと男性だけでなく女性にも陰口をたたかれること多々だったミリアは孤立していった。そこにはいつも「僕がいるから、いいじゃない」と言ってくれるエドアルドがいた。
その後もちょっとした生活用品を買っていったが、どの荷物もランドルフが持ち、ミリアは身軽に買い物をすることができた。途中ランドルフの行きつけの加治屋が近くにあり、品物を取りにいかないと、というので付いていった。剣だけでなく弓や盾、レイピルなどがディスプレイされていた。その種類にミリアは感動してキョロキョロ視線を左右上下に動かした。すると気難しそうなお爺さんが店の奥から出てきてランドルフは話をしていた。もうしばらくかかるので近くの店を見ているようにとのことで、ミリアは隣の店を見て暇を潰すことにした。
(師匠と出かけること、色々心配だったけど、今日行ってよかったな)
ミリアはすでにランドルフに対しても以前弟子と師匠であった時のように心を開いて会話をしていたが、ミリアはそのことには気づいていない。
(わー、ここなんて亀も売ってる!)
(あ、これがシャーロット様の言ってた恋愛小説か)
だんだんと人通りも多くなり、ミリアは知らずうちに奥へ奥へと押しやられていった。
(あれ、ここどこだろう・・・さっきの加治屋の通りから外れちゃってる)
後ろを振り抜くと、夕食時となりレストランを探す人々が乱雑に行き交っていた。ミリアは様々な店に釘付けだったので気づかずフラフラと進んでしまったことに気づいた。
(う~ん、どうしよう。少しメイン通りからズレちゃったなぁ)
土地勘があまりないので、誰かに聞こうとしたが、男性が二人こちらに近づいてきた。
「こんにちは、お嬢さん。今一人?」
「僕らと一緒に遊びに行かない?」
(うわ~面倒くさそうな奴らに出会っちゃったな)
「結構です。興味ないんで」
「えー、そんなこと言わずに、ね?いいじゃん」
ミリアはこういった強引な奴らが嫌いだ。手を出してきたら自己防衛ってことで反撃してやろうと決意しているところだった。
「お嬢さん、探したぞ。こんなところにいたのか」
「ランドルフ騎士団長!」
ランドルフはギロっとミリアに話しかけていた男たちを睨み付けた。
「なにかこちらのお嬢さんにご用件でも?」
「ちぇ、男連れかよ。行こうぜ」
「ああ」
男たちは悪態をつきながら去っていった。
「すみません、ランドルフ騎士団長。私すっかり色んな商品に釘付けになってしまって」
「いや、俺が外で待たせてしまったのが悪かった。だがまたはぐれたら大変だな、ほら捕まっておくといい」
そう言ってランドルフは右腕を軽く浮き上がらせ、腕一個分が入るスペースを作った。
(腕に捕まっとけってことかな?)
ミリアは少し戸惑ったがまたはぐれたら迷惑がかかるので遠慮なくミリアの左手をランドルフの右腕にくぐらせた。ミリアの手が通ったのを確認すると、程よい強さでミリアの手をギュッと挟み込んだ。
(うわぁ師匠の腕分厚いなぁ。私にもこんだけ筋肉付いたらなぁ~)
ミリアはどう頑張っても男性のように筋肉がつかないので、分厚い筋肉を見ると触りたくなるのだが、昔は師匠の筋肉を触りたいと思ってたのだが、今こんなところで夢が叶ってしまった。
(おぉ、私は今、師匠の上腕三頭筋に、触れている!)
心の声が少し声に出ていたようで、ぶつぶつと言っているミリアにランドルフは不思議そうな顔をした。
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