秘密の師弟関係

ほのじー

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第一章:再会

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それから数週間は何事もなく平和な時が過ぎ、ミリアも侍女としての生活が板についてきた頃である。もちろんミリアはシャーロットの回りには十二分に注意して生活している。

その日は船で3日程の距離にある隣国、アングレの外交官と数人の官僚がフェリス国に一週間滞在することとなり、準備に追われていた。

歓迎のための宴が本日行われてようとしていたのだ。シャーロットはクリーム色にレースがふんだんに使われたオートクチュールのドレスに身を包み、うっすらと化粧を施される。

「シャーロット様、とっても素敵です」
「ありがとう、ミリアさん」

ミリアはこの可愛らしいシャーロットに素敵な衣装に着替えさせることが一番お気に入りの仕事なのだ。特に今日は大事な外交パーティーだということで力の入りようも違う。

会場に入ると、ビシッときまった紳士服の男性や露出の多いドレスを身にまとったきらびやかな女性たちが楽しそうに歓談している。国内一とうたわれている演奏団の緩やかなメロディが会場内に上品に響いていた。第一王子のシルベスターも、髭を蓄えた知的そうな男性とにこやかに話している。あれがアングレの外交官だろうか。ミリアはというと、常にシャーロットの見える位置に控え、不審な人物がいないか四方確認する。

(師匠も来てる・・・)


黒のフロックコートを羽織い紳士服に身を包んだ師匠は今日は警備にあたらずパーティーに参加していた。しばらくしてダンスを終えたシャーロット様がミリアの方へ向かってきた。

「ミリアさん、少しお手洗いに行きますわ」
「お供致します」

お手洗いの前でシャーロット様をお待ちしている間、隣国アングレの衣装で身を包んだ若い男性がこちらに歩いてきた。

「おい、お前第二王女の侍女だろう。さっき一緒にいるとこ見たぞ」

面倒な奴にからまれたとミリアは思ったが、案の定その男はしばらく去る気はなさそうだ。

「第二王女は可愛らしいけど、俺はお前みたいな中性的な美人がタイプなんだよなぁ。どうだ、このあと一緒に飲みにでもいこう、何時に仕事終わるんだ」
「すみませんが、今日は予定がございますので他をおあたりください」

ミリアは無表情に相手の男を見る。男はそれでもしつこく誘ってくるが何度もお断りしていると、男は苛立ちだしたようだ。

「おい、侍女の癖に断るのか?生意気だぞ!」

男がミリアに向けて手を振り上げる。


(あー、めんどくさい)

バシッーー!!

ミリアは反射的に振り上げられた男の手を掴みひねりあげる。

「いててててて!」

しばらくして手を放すと男は痛そうに右手を擦り、さらに罵声を浴びせようとしたところだった。

「ーー外交官の部下のお方が、このようなところで何を?」

師匠がこちらに近寄り、先ほどの男に威圧的なオーラを纏い対峙する。

「!!これはこれは、ブラン騎士団の騎士団長殿。いや・・・少しこの侍女と世間話を!では、私はこれで」

焦ったように男はハンカチを取り出し冷や汗を拭いながら一目散に逃げていった。そしてシャーロット様がお手洗いから出てくる。

「あら、どうされたの?私なにか楽しいところを見逃してしまったかしら?」
「いえ、何も」

シャーロットは目をしばたかせ、ランドルフは来た方向に去っていった。

(師匠、何しにこっちに来たんだろう)

何をするでもなく来た方向に戻っていったランドルフの後ろ姿を見つめる。ミリアはまた先ほどの失礼な男の事を思いだし少し気分を悪くしたが、シャーロットに害を為すような行為はなかったので、よしとした。
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