上 下
28 / 37

レオンの心

しおりを挟む
※視点が途中で変わります。


「レオン・・・もう結婚の期限に近づいてて、エリカも最近婚約破棄について聞きたそうにしてるぞ」
「うん・・・もう体は僕たち以外で満足できないようにはなったけど・・・エリカは鈍感だから恋だとか愛だとか分かってなさそうだよね」


レオンがため息をついた。エリカはどこか現実逃避しているところがあり、未だに「私は見守り隊なのですっ」と言っているのだ。


「早く、彼女の気持ち、気づけばいいんだけど」
「ああ・・・俺はもうあいつ以外考えられない」
「僕もだよ。彼女を・・・愛してる」


レオンは王子として生まれ、国王である父に厳しく育てられてきた。女性にちやほやされ、天狗になっていた時期もあったが、どの女性も彼を‘王子のレオン’としてしか見てくれず、レオンは女性に興味を失っていった。そんな時レオンは誘拐されることとなる。心細く、自棄になっていた時期に、「王子、助けにきたぞ」と単身で助けにきたビッグに、レオンが男性である彼に恋に落ちるのは無理なかった。


(でも僕は彼女に出会った・・・)


レオンがエリカと出会ったとき、レオンにとって彼女はビッグと一緒になるために必要な女性という認識だった。しかし彼女を知るにつれて、レオンは彼女の自由奔放で、頑張り屋さんで、ある意味単純な彼女に惹かれていき、レオンは既に彼女を愛しているのだと気づかされた。レオンはビッグももちろん愛しているが、もう焦がれるような思いはなくなっている。ただただビッグと二人で彼女を愛したいという気持ちだけだ。


「ビッグ・・・僕・・・」
「ああ、言わなくても分かってる・・・」


ビッグと知り合ってから長い時が過ぎた。もう何も言わなくともお互いの気持ちは分かってしまう。


「さあ、行こうか。彼女が待ってる」
「ああ・・・」







「レオン王子・・・その・・・そろそろ婚約破棄した方が良いのではないでしょうかっ」
「どうしたの?エリカ」


エリカはビッグとレオンを知れば知る程離れがたくなっていく。今では無言で微睡んでいる時間でさえ心地よく、彼らがエリカの人生の一部となりつつあった。


(もう、これ以上は無理・・・)


エリカはこの婚約は二人の愛を応援するために、やってきたことである。この婚約が終わればエリカはモブ役に戻るだけだ。


「エリカは・・婚約破棄・・・したいの?」


(したくない・・・でも、しなきゃ駄目)


既にエリカの心が激しく痛んでいる。エリカは勇気を持って、レオンを見つめた。


「はい、あなたの本当の愛の為に、婚約破棄してください」


ビッグはソファーの後ろに立っていた。ビッグはレオンに目線を送る。


「本当の・・・愛、か。分かった。準備に取りかかろう」
「お、おい、レオン!!」


レオンは決断したようだ。ゲームでレオンはビッグとの愛を貫き、まだ幼い第二王子が成人した時、国王の継承権を譲り身を引く。エリカはその愛をいつまでも応援しようと心に誓った。


「なあ、何でエリカは、泣いてるんだ?」
「目に・・・ゴミが入って・・・」


エリカから一筋涙が伝う。エリカは目を拭い、何か言いたそうなビッグを無視してトイレに入った。エリカは心が落ち着くまでそこを出なかった。
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

魔法使いと彼女を慕う3匹の黒竜~魔法は最強だけど溺愛してくる竜には勝てる気がしません~

村雨 妖
恋愛
 森で1人のんびり自由気ままな生活をしながら、たまに王都の冒険者のギルドで依頼を受け、魔物討伐をして過ごしていた”最強の魔法使い”の女の子、リーシャ。  ある依頼の際に彼女は3匹の小さな黒竜と出会い、一緒に生活するようになった。黒竜の名前は、ノア、ルシア、エリアル。毎日可愛がっていたのに、ある日突然黒竜たちは姿を消してしまった。代わりに3人の人間の男が家に現れ、彼らは自分たちがその黒竜だと言い張り、リーシャに自分たちの”番”にするとか言ってきて。  半信半疑で彼らを受け入れたリーシャだが、一緒に過ごすうちにそれが本当の事だと思い始めた。彼らはリーシャの気持ちなど関係なく自分たちの好きにふるまってくる。リーシャは彼らの好意に鈍感ではあるけど、ちょっとした言動にドキッとしたり、モヤモヤしてみたりて……お互いに振り回し、振り回されの毎日に。のんびり自由気ままな生活をしていたはずなのに、急に慌ただしい生活になってしまって⁉ 3人との出会いを境にいろんな竜とも出会うことになり、関わりたくない竜と人間のいざこざにも巻き込まれていくことに!※”小説家になろう”でも公開しています。※表紙絵自作の作品です。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...