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御披露目

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「合格です!!言葉使いはまだ少し不安ですが、気を引き締めれば大丈夫でしょう。淑女マナーは完璧ですわ」


ターナー夫人に太鼓判を押され、セナは城の数人を連れて王都へ向かう。王城の中にあるパーティールームの一つを借りて御披露目を行う予定だ。


「さあさあ、息を止めて、はいっ!!」
「く、苦しい・・・」
「セナ様の最高の美しさを披露するため、我慢は必要です!!我慢してください!!」
「・・・はい」


侍女たちのギラギラとした目は、そこら辺の戦士より怖く、「はい」と言って従うしかない。元々豊満である胸も寄せて上げられ、腰や脚のスタイルの良さを目立たせるためマーメイドラインのドレスだ。何人かの侍女たちの鼻にはガーゼが詰められているのだが、この国の人は鼻炎持ちが多いのかな、と気にするのを辞めた。


「ささ、完成です、セナ様。旦那様にさっそく見てもらいましょう」


ライトが戦士用のフロックコートに身を包み、セナを迎えに来た。胸元には戦争で活躍した数のバッジが付いており、ワックスで髪の毛を後ろに流している。


(ライト、すごく格好いい・・・)


二人は惚けたように見つめあった。見つめあったまま二人は何も話そうとしない。


「そろそろお時間ですよ、旦那様。見惚れるのは後にしてくださいませ」
「・・・ああ」


執事のビクターがライトを急かした。しかしライトの足は動こうとしない。


「やばい、セナを見せたくない・・・やっぱり御披露目は行くの辞め・・・」
「旦那様、国王様のご命令でございます」


セナの手を取り、寝室へ逃げ込もうとするライトにビクターが通せんぼをした。


「ラ、ライト・・・これで国王に認められれば・・・私たちは正式に結婚したと認められるのだろう?私は・・・ライトとの結婚を認めてもらいたい」
「・・・そうだな、そうだ。そうだった」


二人は書類上は夫婦なのだが、国王に認められるまで仮の夫婦だ。国王はセナをアドナの国民として受け入れるか悩んだ末、様子を見るためこうして三ヶ月の仮の契約としたのである。


「分かった、出発する前にキスだけでも・・・」
「「いけません!!セナ様の口紅が落ちてしまいます!!」」


侍女たちの声がハモった。今日の城の従業員たちは厳しいな・・・と言いつつ二人は馬車に乗った。


「緊張してるのか?セナ」
「そりゃぁ、もちろんだ。最近まで敵であった国の国王にお会いするんだ・・・認められないんじゃないかと思うと・・・少し、怖いな。しかも前国王であるライトの父親も来るんだろう?」
「大丈夫、私が側にいる。しかも今の君ならきっと皆受け入れてくれる」


ライトがセナの手を握る。その手の温もりにセナの心が少し落ち着いた。


「ライト・・・以前私に、ここでの幸せを見つけろと言っただろう?」
「ああ・・・あの時はセナは死を望んでいたのだったな」
「・・・私の幸せは、ライトの隣にいることだ。それが、私の幸せなんだ」
「っ・・・なんて可愛いこと言うんだ・・・くそっ、早くパーティーを終わらせて抱きしめたい」


ライトはセナの首筋に、優しくキスをした。キスマークが付かない程度の甘い口付けに、セナはゾクゾクと快感が込み上げる。


「ラ、ライトぉ・・・」
「ここだけでも味わいたいんだ・・・少し我慢しろ」
「んんん・・・」


ライトが耳の裏や、首筋、そして顎に舌を這わせていく。セナはもどかしい淡い刺激に瞳が熱くなっていく。しかしコンコンと音がし、セナは身を正した。


「旦那様、到着しました」
「ああ、ありがとう・・・行こう、セナ」

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