23 / 36
図書館での出会い
しおりを挟む国王に表彰されてから、さらにジェイクとセルの名声が上がり、チャリティーでの練習試合や剣士の卵たちへの指導など忙しくしているようだ。レイの仕事も増え、毎日残業の日々である。しかし土曜日は早めに仕事を切り上げて午後に国立図書館へ行き本を読む習慣は続けていた。
「あっ・・・」
「あ・・・」
一冊の本を取ろうとすると、誰かも同じ本を取ろうとしていたらしく、手がぶつかってしまう。
「す、すみません・・・」
「いえ、こちらこそ」
そこには茶色い髪をした、いかにも真面目そうな眼鏡をかけた男性が立っていた。
「ど、どうぞ・・・」
「いいんですか?」
「え、ええ・・・まだ一冊本があるので・・・そっちを先に読みます」
レイが男性のもっているもう一つの本のタイトルを見ると、レイが最近読んだ外国詞である。
「あ・・・それ。面白いですよね」
「あ、あなたも彼の本・・・読むんですか」
レイは男と会話をし始める。彼とは他にも好きな作家が多く共通しており、意気投合する。
「あの・・・お茶でもしませんか・・・」
男はレイを誘った。レイは少しだけなら・・・と言って、一緒に本を借りて近くの喫茶店に入った。彼の名はサムといって隣街の国語教師をしているらしい。週末はこうやって王都までやってきて本を読みあさるそうだ。
「へぇ・・・騎士団でお仕事を」
「はい、そうなんです」
「職場は男性ばかりで、大変でしょう」
「大変ですけど、遣り甲斐があるので、すごく楽しいんです」
レイは上司であるジェイクとセルを思いだし、笑顔になる。
「へぇ・・・きっと素敵な上司なんでしょうね・・・あなたをこんな笑顔にするんですから・・・」
「あ・・・そうですね。良い上司です」
「羨ましいなぁ。こんな綺麗な部下をもつあなたの上司が」
サムは優しそうに微笑んだ。レイは急な自分への誉め言葉に顔を赤くする。
「す・・・すみません。会ったばかりの男にこんな事いわれても、気持ち悪いですよね・・・つい、本音が出ちゃいました」
「い、いえ、そんなことは・・・」
サムもウブなのか、顔を赤くしている。しかし再び本の話題に移り、気まずさは徐々に消えていった。話は盛り上がり来週の土曜日も同じ時間に図書館で会うこととなる。初めて男性の友人といえる人ができそうでレイは少し心が浮わついた。
(職場の人は、皆スペック高すぎるから、私みたいな地味子、浮いちゃうもんね)
サムは、とても平凡な顔をしているが、とても優しそうで、友人としてとても仲良くなれそうだと感じる。
(職場で一番仲良いってのはジェイク団長とセル副団長だけど・・・友人って関係でもないしね・・・)
ジェイクとセルはあくまでも雲の上の人間である。前世でも彼らはレイの愛するアイドルであり、憧れで、妄想の中でのみ触れあうことのできる人だ。もし彼らに慣れてしまえば、レイは一生結婚などできないであろう。
18
お気に入りに追加
2,812
あなたにおすすめの小説
溺愛三公爵と氷の騎士 異世界で目覚めたらマッパでした
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
旧題:泣き寝入りして目覚めたらマッパでした~溺愛三公爵と氷の騎士~
恋愛下手な「私」がやっと好きになった人に誤解され、手酷く抱かれて、泣きながら眠り、起きたら知らない部屋の寝台の上。知らない男、知らない世界。確かに私、リセットしたいと思いながら寝たんだっけ。この夢、いつ覚めるんだろう?と思いつつ、結局また元いた世界と同じ職業=軍人になって、イケメンだけれどちょっとへんな三人の公爵様と、氷の美貌の騎士様とで恋したり愛したり戦ったり、というお話。プロローグはシリアスですが、ご都合主義満載、コメディシリアス行ったり来り。R18は予告なく。(初っ端からヤってますので)
イッシンジョウノツゴウニヨリ ~逆ハーレムを築いていますが身を守るためであって本意ではありません!~
やなぎ怜
恋愛
さる名家の美少女編入生を前にしてレンは気づいた。突然異世界からやってきてイケメン逆ハーレム(ふたりしかいないが)を築いている平凡な自分ってざまぁされる人間の特徴に当てはまっているのでは――と。
なんらかの因果によって突如異世界へ迷い込んでしまったオタク大学生のレン。三時間でクビになったバイトくらいしか社会経験もスキルもないレンは、心優しい保護者の経営するハイスクールでこの世界について学べばいいという勧めに異論はなかった。
しかしこの世界では男女比のバランスが崩壊して久しく、女性は複数の男性を侍らせるのが当たり前。数少ない女子生徒たちももれなく逆ハーレムを築いている。当初は逆ハーレムなんて自分とは関係ないと思っていたレンだが、貴重な女というだけで男に迫られる迫られる! 貞操の危機に晒されたレンは、気心知れた男友達の提案で彼を逆ハーレムの成員ということにして、なりゆきで助けた先輩も表向きはレンの恋人のひとりというフリをしてもらうことに……。これで万事解決! と思いきや、なぜか男友達や先輩が本気になってしまって――?!
※舞台設定と展開の都合上、同性愛の話題がほんの少しだけ登場します。ざまぁの予兆までが遠い上、ざまぁ(というか成敗)されるのは編入生の親です。
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
転生お姫様の困ったお家事情
meimei
恋愛
前世は地球の日本国、念願の大学に入れてとても充実した日を送っていたのに、目が覚めたら
異世界のお姫様に転生していたみたい…。
しかも……この世界、 近親婚当たり前。
え!成人は15歳なの!?私あと数日で成人じゃない?!姫に生まれたら兄弟に嫁ぐ事が慣習ってなに?!
主人公の姫 ララマリーアが兄弟達に囲い込まれているのに奮闘する話です。
男女比率がおかしい世界
男100人生まれたら女が1人生まれるくらいの
比率です。
作者の妄想による、想像の産物です。
登場する人物、物、食べ物、全ての物が
フィクションであり、作者のご都合主義なので
宜しくお願い致します。
Hなシーンなどには*Rをつけます。
苦手な方は回避してくださいm(_ _)m
エールありがとうございます!!
励みになります(*^^*)
悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません
青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく
でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう
この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく
そしてなぜかヒロインも姿を消していく
ほとんどエッチシーンばかりになるかも?
完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~
シェルビビ
恋愛
男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。
10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。
一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。
自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。
【完結】王宮の飯炊き女ですが、強面の皇帝が私をオカズにしてるって本当ですか?
おのまとぺ
恋愛
オリヴィアはエーデルフィア帝国の王宮で料理人として勤務している。ある日、皇帝ネロが食堂に忘れていた指輪を部屋まで届けた際、オリヴィアは自分の名前を呼びながら自身を慰めるネロの姿を目にしてしまう。
オリヴィアに目撃されたことに気付いたネロは、彼のプライベートな時間を手伝ってほしいと申し出てきて…
◇飯炊き女が皇帝の夜をサポートする話
◇皇帝はちょっと(かなり)特殊な性癖を持ちます
◇IQを落として読むこと推奨
◇表紙はAI出力。他サイトにも掲載しています
【R18】乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!
はる乃
恋愛
孤児院で育ったアリスは、自分を引き取ってくれる事となったリトフォード侯爵に『アリス。君は今日から私の娘だ』と言われた瞬間、全てを思い出した。この世界が前世で友人に見せられた乙女ゲームの世界で、しかも自分がその乙女ゲームのヒロインだと言うことを。
しかし、アリスはその乙女ゲームのヒロインが魅了の魔法を使っていたのではないかと疑う。
かくして、アリスは恐らく自分に備わっているだろう魅了の魔法で周囲に迷惑をかけないよう、空気になる事を誓うのだった!
※一応R15 更新は遅めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる