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ガイル⑨

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「サラ、愛してる」


ガイルはサラを愛していることに気がついた。今さらであるが、彼女に出会った瞬間からもう堕ちていたのだろう。悪夢に魘されて、恐怖で彼女に辛く当たってしまっても彼女はガイルに寄り添ってくれた。



(彼女を、手にいれたい)


ガイルは結婚する気などなかった。一代だけの伯爵位である。子孫を残す義務もないのだ。ずっとガイルはこの血を絶やしてしまいたいと思っていた。多くの人を死に追いやったガイルには呪われた血が流れていると思っていた。


(彼女との子供なら・・・欲しい)


彼女の純粋で美しい血がきっとガイルの穢れた血を浄化してくれるであろう。


(前の男を忘れさせるまで、彼女を愛して、プロポーズしよう)


彼女が完全に堕ちるまで、どれくらいの時間がかかるか分からない。毎日愛し合って愛をささやけばガイルを愛してくれるだろうか。


(まずは、私がしっかりしないとな)



今までの堕落した生活にピリオドを打つため、酒を全て捨て、仕事に取りかかった。








「くそっ、なんでこんなに忙しいんだ、ダン」
「あなたが今までだらけていたからですよ」


元々提督まで上り詰めた男である。ガイルは仕事はできる人間なのだが、それにしても忙しすぎる。最近は王都で仕事の処理をしたりと、なかなか屋敷に帰れない日々を過ごしていた。


「おいダン、ちゃんと頼んだドレスと宝石は用意できてるのか」
「ええ、期日までに持ってきていただけるそうですよ。なのであなたはしっかり仕事を終わらせてくださいね」


ダンは秘書であるのだが、身の回りの世話をしてくれたりと、なかなか優秀な人材であり、ガイルが落ちぶれていた期間も、上手いこと遣り繰りしていたようだ。


「ダン、俺はお前がいなかったら過労死していたぞ」
「分かっていただけましたか?私は昇給と、お休みをいただきたいですね」


ダンには普通の秘書の二、三倍の給金を与えているのだが、彼は貪欲である。


(こんな俺にずっとついていたんだから、大した男だよ、お前は)


ガイルは意識を目の前の仕事に集中させた。明日には屋敷に帰らないといけないからだ。夜ヴェール伯爵のパーティーが行われるのだが、ガイルはサラに同伴してもらうことにした。パーティーに行くのを渋っていた彼女だが、レイラも参加するので「一度だけなら・・・」と許可をくれたのだ。


(もっとも、一度だけにするつもりはないが・・・)


ヴェール伯爵のパーティーに気乗りはしないが、彼女を着飾らさせて連れていけると思うと、心が浮き立った。



(今度は妻として・・・連れていきたい)


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