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ガイル⑦
しおりを挟むガイルの目の前に血が広がる。毎回見るこの光景はガイルにとって見慣れたものだ。しばらくは見ていなかったこの夢だが、ヴェール伯爵が来たことによって、再び呼び起こされた。
『なあ、お前が私たちを殺したんだろう?』
『人殺し』
『人殺し』
死体がガイルに話しかける。ガイルは逃げるも、彼らはどこまでも彼を追いかける。
『ぐあああああああ!!来るな!!来るな!!』
ガイルは鼻孔にラベンダーの匂いがくすぐった。
(この匂い・・・)
ガイルを追いかけていた死体が遠ざかる。ガイルの手に暖かい温もりが生まれ、完全に死体は消えた。この温もりはガイルを守る守護者のようだ。
「ん・・・」
ガイルは目を覚ました。ヴェール伯爵に会い、ガイルの負の感情が生まれ、再び酒に手を出してしまう。いくら飲んでも気分は晴れず、久しぶり倒れる程飲んでしまったようだ。
「・・・なんでお前がここにいる」
「っ・・・すみません、部屋を通ったら、魘されている声が聞こえてきたもので」
「だからといって許可のない男の部屋に入るのか?」
「・・・すみません」
ガイルはむくりと起き上がる。彼女は無防備にガイルのいるベッドの横に腰かけていた。ガイルはそんな彼女の手首を掴み、サラの眼鏡を取った。サラの瞳が動揺で揺れている。
(来るなと言っていたはずだが・・・)
ガイルはサラの口づけを奪った。
「無断で入るとは、こういうことをして良いって言ってるのと同じだぞ」
「・・・」
「ほら、嫌なら抵抗しろ!」
サラは無理やりなキスにも抵抗せずにガイルを受け入れている。ガイルはサラの後頭部を掴み、唇が麻痺するまで彼女にむしゃぶりついた。彼女の瞳にも欲望が映し出される。
(欲しい、彼女の何もかも)
「君が・・・したいと言うまで私は手を出さない。君が、決めるんだ。逃げるも良し、このまま留まるのも良しだ」
「・・・」
(もしこのまま彼女が留まれば・・・私はもう遠慮はしない)
ガイルは彼女の言葉を待った。
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