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最終章:輝かしい未来
【最終話】数年後
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「カイル、また来たの?」
「リリィちゃーん、王城はリリィちゃんがいなくて寂しいよ」
「カイル、お前またお忍びで来たのか!?」
リリィとヴィンセントは結婚後、ルナ地区へ引っ越しヴィンセントはカイルや他の者に任せていた伯爵としての仕事も自身がすることとなった。ヴィンセントは復興作業が完成すると、東の国との国境に整備された道を作った。ルナ地区は貿易の中間地点として機能し、多くの人がルナ地区に引っ越してきたのだ。
「そういえば、さっき玄関に不振な馬車が停まってたよ」
「不振な?」
リリィは不思議そうに窓を覗き、玄関に止まる馬車の紋章に目を見開いた。
「あれ、東の国の王族の馬車じゃない?」
リリィがそう言うと執事のシェパードが部屋に焦ったように入ってくる。毎回やってくる大物たちに気苦労が絶えない執事である。汗をダラダラと流しながらヴィンセントとリリィに向いた。
「ミヒト王子が、いらっしゃいました」
「追い返せ」
ヴィンセントはシェパードにそう伝えるも、「隣国の王子様を追い返すなんて滅相もございません!!」と焦った様子だ。
「巫女様、また巫女に会いたく来てしまいました」
「ミ、ミヒト王子・・・」
ミヒトはリリィの手を握りしめ、目を輝かせている。
「私の妻に触りすぎではないですかね」
「おや、気の小さい男はすぐに捨てられますよ?」
──バチバチバチ──
「剣で勝負しましょうか」
「望むところです」
「え、決闘??僕も混ぜて~」
ヴィンセントとミヒトは会うたびにこの調子である。カイルも面白い状況だと、悪乗りしているようだ。
「皆様、騒ぎすぎです!!お黙りなさい!」
使用人であり、母のような存在のセリーヌが男三人を嗜める。彼女の言葉には迫力があり、男たちは縮こまった。
『すみません、セリーヌさん』
「まったく、リリィ様のお体に触ったらどうなさるおつもりですか!!」
「リリィ、体調悪いのか??」
ヴィンセントはミヒトを押し退け心配したようにリリィに寄ってくる。
「えーっと、そういうことじゃないんだけど・・・」
「リリィちゃん、まさか・・・」
カイルは察したようにリリィを見る。
「お腹に・・・子供がいるの」
「・・!!」
リリィは頬を染め、お腹に手を当てた。ヴィンセントは衝撃でよろめいた。
「リリィのお腹に・・子供が、俺との子供が、いるのか??」
「うん」
ヴィンセントから涙が溢れてくる。ヴィンセントはリリィをぎゅっと抱き締めて、「ありがとう、ありがとう」と呟いている。
「リリィちゃん・・・おめでとう。リリィちゃんの子供絶対可愛いだろうなぁ」
「もし女の子でしたら、巫女様にそっくりでしょうねぇ・・・うん、是非私のお嫁さんに・・・」
ヴィンセントの顔がみるみる青くなる。
「うちの娘は嫁にやらんぞ!!絶対に!!」
「もう、ヴィーったら気が早いんだから!!」
+
+
+
二人はヴィンセントにそっくりな長男と、リリィにそっくりな長女、そして二人を足して二で割ったような次女が生まれた。『殺人兵器が溺愛する戦場の天使』と呼ばれる童話は、各国で翻訳され、東の国では『殺人兵器を癒した巫女』という別タイトルで発売された。その童話は世界中に知れ渡り今でも二人の墓があるルナ地区には大勢の人が訪れるそうだ。
【終】
「リリィちゃーん、王城はリリィちゃんがいなくて寂しいよ」
「カイル、お前またお忍びで来たのか!?」
リリィとヴィンセントは結婚後、ルナ地区へ引っ越しヴィンセントはカイルや他の者に任せていた伯爵としての仕事も自身がすることとなった。ヴィンセントは復興作業が完成すると、東の国との国境に整備された道を作った。ルナ地区は貿易の中間地点として機能し、多くの人がルナ地区に引っ越してきたのだ。
「そういえば、さっき玄関に不振な馬車が停まってたよ」
「不振な?」
リリィは不思議そうに窓を覗き、玄関に止まる馬車の紋章に目を見開いた。
「あれ、東の国の王族の馬車じゃない?」
リリィがそう言うと執事のシェパードが部屋に焦ったように入ってくる。毎回やってくる大物たちに気苦労が絶えない執事である。汗をダラダラと流しながらヴィンセントとリリィに向いた。
「ミヒト王子が、いらっしゃいました」
「追い返せ」
ヴィンセントはシェパードにそう伝えるも、「隣国の王子様を追い返すなんて滅相もございません!!」と焦った様子だ。
「巫女様、また巫女に会いたく来てしまいました」
「ミ、ミヒト王子・・・」
ミヒトはリリィの手を握りしめ、目を輝かせている。
「私の妻に触りすぎではないですかね」
「おや、気の小さい男はすぐに捨てられますよ?」
──バチバチバチ──
「剣で勝負しましょうか」
「望むところです」
「え、決闘??僕も混ぜて~」
ヴィンセントとミヒトは会うたびにこの調子である。カイルも面白い状況だと、悪乗りしているようだ。
「皆様、騒ぎすぎです!!お黙りなさい!」
使用人であり、母のような存在のセリーヌが男三人を嗜める。彼女の言葉には迫力があり、男たちは縮こまった。
『すみません、セリーヌさん』
「まったく、リリィ様のお体に触ったらどうなさるおつもりですか!!」
「リリィ、体調悪いのか??」
ヴィンセントはミヒトを押し退け心配したようにリリィに寄ってくる。
「えーっと、そういうことじゃないんだけど・・・」
「リリィちゃん、まさか・・・」
カイルは察したようにリリィを見る。
「お腹に・・・子供がいるの」
「・・!!」
リリィは頬を染め、お腹に手を当てた。ヴィンセントは衝撃でよろめいた。
「リリィのお腹に・・子供が、俺との子供が、いるのか??」
「うん」
ヴィンセントから涙が溢れてくる。ヴィンセントはリリィをぎゅっと抱き締めて、「ありがとう、ありがとう」と呟いている。
「リリィちゃん・・・おめでとう。リリィちゃんの子供絶対可愛いだろうなぁ」
「もし女の子でしたら、巫女様にそっくりでしょうねぇ・・・うん、是非私のお嫁さんに・・・」
ヴィンセントの顔がみるみる青くなる。
「うちの娘は嫁にやらんぞ!!絶対に!!」
「もう、ヴィーったら気が早いんだから!!」
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二人はヴィンセントにそっくりな長男と、リリィにそっくりな長女、そして二人を足して二で割ったような次女が生まれた。『殺人兵器が溺愛する戦場の天使』と呼ばれる童話は、各国で翻訳され、東の国では『殺人兵器を癒した巫女』という別タイトルで発売された。その童話は世界中に知れ渡り今でも二人の墓があるルナ地区には大勢の人が訪れるそうだ。
【終】
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