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最終章:輝かしい未来
ヴィンセント目覚める
しおりを挟む──体が、熱い。
───息が苦しい。
『ヴィー、薬飲んで』
遠くから愛しい彼女の声が聞こえる。ヴィンセントは言われるがまま口を大きく開けた。
──ああ、水が冷たい。
『ヴィー、愛してる』
──ああ、俺も愛してる。
唇の柔らかい感触が、気持ちいい。そのままヴィンセントは再び眠りの底へ向かっていった。
+
+
+
「ん・・・」
「ああ、起きましたか、ヴィンセントさん」
「ジナ・・・か」
彼女はリリィの同僚でジナである。辺りを見回すと、多くの騎士たちが怪我をして苦しんでいるようだった。ヴィンセントもその一人だ。ヴィンセントの胸には包帯が巻かれているが、ザックリやられているのだろう。
「俺は・・・死んだかと思った」
オーラがなくなり、ヴィンセント自体の戦力も多く失われた。何度も剣を振るも、やはりオーラなしでは一度に一人か二人対応するのでやっとだ。
(オーラがなくとも戦えるように、練習してたのにな)
練習と実践はやはり違うようだ。ヴィンセントは重たい体を駆使し、騎士たちを薙ぎ倒す。
「兵器め、殺してやる」
「望むところだ」
彼はザッチャーと言って現国王に忠誠を誓い、国王に盲信している騎士である。彼の残虐性は国王に気に入られ、常に国王と共に行動していた。
「ああ、そういえば、君のお姫様の体は美しかったですねぇ。胸は柔らかくて、下着から良い匂いがしてましたよ」
「き、貴様!!」
「ああ、まだ見たことなかったですか?見れずに死ぬなんて残念です」
──ピリッ──
ザッチャーの一振りでヴィンセントの腕に傷ができるがヴィンセントは激昂しているが気づかない。ザッチャーはヴィンセントの力にグイグイと押され、ヴィンセントはザッチャーを追い込んだ。
「うっ・・・」
ヴィンセントの体が急に鈍くなる。ザッチャーはニヤリと笑った。
「毒が回ってきたようですね」
「・・・貴様、卑怯だぞ」
「戦いに卑怯も何もありません」
ザッチャーはヴィンセントの胸に剣を突き刺した。
「かはっっ・・・」
(負けられない、負けられない・・・)
ヴィンセントは最後の力を振り絞り、ザッチャーの首を跳ねた。それがヴィンセントの最後の記憶であった。
+
+
+
「体が・・・重い」
「ヴィンセントさん、あなた一週間も寝てましたからね」
「一週間・・・も?」
「ええ、ヴィンセントさんの状況に気づいたリリィさんと騎士が、すぐに医療班の元に行って、解毒しながら胸の傷を治療したんです。一瞬心臓が止まったのですが、心臓マッサージを行ったのと、あなたの生命力で再び呼吸し始めたそうです」
(俺は、あの時死んでたのかもしれない)
彼は夢の中で、神に会ったのだ。姿や形はぼんやりとして覚えていないが、子供のような声の主であった。
『君には死んでもらおうかと思ってたけど、君があんなリリィを溺愛するなんて想定外だったよ・・・しかもどんどん二人の運命が強くなってくじゃないか。君が死んだらリリィが悲しむし、やっぱ殺すのは止めておくよ』
神はヴィンセントの心臓に手を当て、何やら念じている。先ほど冷たく感じていたヴィンセントの体に熱が戻りだした。
『これで君は帰れるよ。そうだ、もしリリィを悲しますような真似したら、いつでも死の運命を復活させてあげるからね』
「ああ、幸せにする・・・」
『じゃ、リリィを目一杯幸せにしてあげてね』
そう言って神は手を振った。
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