10 / 23
悪役令嬢、決意する
しおりを挟む
ウィリアムへの訪問者が増えた。なにやら小屋で話し合いをしているようで、たまに白熱した声がもれ聞こえてくる。
「ん~!!良い天気!ピピとポポは、この布団を干して」
「はーい」「おうよ」
このあいだメラニアに話しかけてきた一つ目の魔物ピピとポポがパタパタと小さな羽をばたつかせながら、羽の上にある小さな二本の触覚で(本人たちは手だと言い張る)洗濯物を器用に干していく。二匹は同じ顔で見分けがつかないが、いつも丁寧なのがピピで口が悪いのがポポだ。
(ふふふ、二匹仲良いのね)
ピピとポポはあの後ウィリアムに渋々認められたらしく、ウィリアムの家に毎日住み着くようになった。それ故ウィリアムは屋根裏に一つ目たちの小さな寝室を作ってあげた。
「ウィル、お帰り」『おかえりー!』
「ああただいま」
皆で食事を終わらせ、一つ目たちは屋根裏部屋へ上がっていく。ウィリアムは夜遅くまで机に向かって何やら仕事をしており、メラニアは先に寝入ってしまうことが増えた。
(最近全然触れてない・・・)
ウィリアムはもうメラニアに触れてくれないのだろうかと不安になるが、朝起きると必ず額にキスをしてくれる。
(もっと触れてほしい・・・って言ったらはしたないって思われるかな・・・)
その日のお昼頃、メラニアたちは昼食をとっていたが、ジャックが窓から現れた。
「ウィリアム様~!!第一王子の軍が・・・こっちに攻めてきてます~!!」
「なんだって!?くそっ、あいつを降ろす準備してるのがもうバレたか・・・」
ウィリアムは小屋に急ぎ、なにやら魔法の道具を揃えたり戦闘の準備をする。
「ウィ、ウィル・・・」
「メラニー、君はここで待機するように。もし危険が迫ったら、君にあげたこの指輪を太陽にかざして祈るんだ、君の精気が力に変わるから。時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「で、でもウィル・・・!」
「メラニー、僕が帰ったら、君に伝えたいことがあるんだ」
「・・・分かったわ。無事に帰ってきてね」
「うん」
ーチュッ
ウィリアムはメラニアの唇にキスをした。そしてメラニアをじっと見つめる。ずっと欲していたキスなのに、なんだか最後のお別れのような、後を引くものだった。
(いかないで・・・)
ウィリアムに第一王子の元へ行ってほしくなかった。一緒にどこか遠くに逃げようと言いたかったが、彼のあの強い意思を持った目を見たら、何も言えなかった。
ーーーー
ズドーーーン
ドカーーーーーン
「おい、ゴブリン野郎、早く出てこい!!こっちは軍総動員でやってきてやったぞ!」
「そんなうるさい声で叫ばぬとも出てくるわ、バカ王子」
ウィリアムは森の入り口に到達する。そこには何千もの軍人が武器を持って待機しており、第一王子と、ヴィーナスの使者、ビビと呼ばれる女は彼の側に控え、少し高くなった木製のお立ち台に立っていた。
「まさかお前、ひとりで来たのか?俺も舐められたもんだな」
「きさまなんぞ、俺一人で十分だ」
「強がっちゃって。やっちまえー!!」
ズドーーーン
大砲が打ち込まれる。ウィリアムは防御魔法でそれを防いだ。
カチーーーーーーン
「うわぁ!!」
「す、すべる!!」
ウィリアムの魔法は氷属性で、瞬時に物を凍らせることができる。ウィリアムは地面を凍らせ、軍隊の足元を狂わせた。
「かまわぬ、打て、ひたすら大砲を打つんだ!」
ドカーーーーーン
「はぁ・・・はぁ・・・」
さすがにウィリアムも体力が無くなってきた。魔法も無限には使えないのだ。
「はっはっは、もうおしまいか?」
「もうお前に勝手なことはさせないぞ!メラニーにだってあんな酷い仕打ちを!!」
ウィリアムは歯ぎしりをする。第一王子はキョトンとした顔をして、ふと思い出したように笑いを上げた。
「ああ、そんな奴もいたなぁ。ああ、ビビアン。嫉妬しないでくれ今は君だけだよ」
第一王子とビビは抱き合っていて、二人の世界で回りが見えていないようだ。キスもはじめようとしたので、ウィリアムは二人目掛けて氷魔法を打ち付けた。
ーーーーーシュンッ
魔法が跳ね返る。ウィリアムはハッとなった。
「ぐぅ・・・!!!」
ウィリアムは自分の攻撃をもろに受けた。第一王子はウィリアムを見て可笑しそうに笑う。
「ははは、ビビアンは魔法を跳ね返す力を持っているんだ。何をしても無駄だよ、残念だったね」
「くはっ・・・」
ウィリアムの口から血が滴る。
「そうそう、あのメラニアって女だけど、この森に捨てたんだっけ。まだ生きてるんだ。君を始末したら、彼女を迎えにいって軍人たちに犯させよう。顔は良い女だったもんな。何千人に見られて犯されるのも見物だなぁ」
「この野郎!!!くたばれ!!」
バーーーン
ドーーーーン
ウィリアムは魔法を使うのを諦め、刃物がいくつも刺さったこん棒で軍人たちを打っていく。
何人もの軍人が倒れていった。一人で数百人は倒したであろう。しかし彼はとうとう力尽き、膝を付いてしまう。
ーーーーードサッ
「おい、軍人たち、まだ殺すなよ。絶望させて殺さねば楽しくないだろう」
ウィリアムは拘束され第一王子が前に出てくる。
「あっけなかったなぁ。つまらん」
第一王子は足でウィリアムを蹴りつけた。
「ぐっ・・・」
「そうだ、はりつけにして市民たちに醜悪な怪物の死を見てもらおう!俺はそんな魔物を倒したってヒーローになるぞ、どう思う?ビビアン」
「とっても名案ですわ!さすがはダーリン!」
「じゃあ、皆、今からゴブリンの死刑を布告してくれ。魔法を無効にする拘束具を付けておけよ。暴れられたらたまらんからな」
「ん~!!良い天気!ピピとポポは、この布団を干して」
「はーい」「おうよ」
このあいだメラニアに話しかけてきた一つ目の魔物ピピとポポがパタパタと小さな羽をばたつかせながら、羽の上にある小さな二本の触覚で(本人たちは手だと言い張る)洗濯物を器用に干していく。二匹は同じ顔で見分けがつかないが、いつも丁寧なのがピピで口が悪いのがポポだ。
(ふふふ、二匹仲良いのね)
ピピとポポはあの後ウィリアムに渋々認められたらしく、ウィリアムの家に毎日住み着くようになった。それ故ウィリアムは屋根裏に一つ目たちの小さな寝室を作ってあげた。
「ウィル、お帰り」『おかえりー!』
「ああただいま」
皆で食事を終わらせ、一つ目たちは屋根裏部屋へ上がっていく。ウィリアムは夜遅くまで机に向かって何やら仕事をしており、メラニアは先に寝入ってしまうことが増えた。
(最近全然触れてない・・・)
ウィリアムはもうメラニアに触れてくれないのだろうかと不安になるが、朝起きると必ず額にキスをしてくれる。
(もっと触れてほしい・・・って言ったらはしたないって思われるかな・・・)
その日のお昼頃、メラニアたちは昼食をとっていたが、ジャックが窓から現れた。
「ウィリアム様~!!第一王子の軍が・・・こっちに攻めてきてます~!!」
「なんだって!?くそっ、あいつを降ろす準備してるのがもうバレたか・・・」
ウィリアムは小屋に急ぎ、なにやら魔法の道具を揃えたり戦闘の準備をする。
「ウィ、ウィル・・・」
「メラニー、君はここで待機するように。もし危険が迫ったら、君にあげたこの指輪を太陽にかざして祈るんだ、君の精気が力に変わるから。時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「で、でもウィル・・・!」
「メラニー、僕が帰ったら、君に伝えたいことがあるんだ」
「・・・分かったわ。無事に帰ってきてね」
「うん」
ーチュッ
ウィリアムはメラニアの唇にキスをした。そしてメラニアをじっと見つめる。ずっと欲していたキスなのに、なんだか最後のお別れのような、後を引くものだった。
(いかないで・・・)
ウィリアムに第一王子の元へ行ってほしくなかった。一緒にどこか遠くに逃げようと言いたかったが、彼のあの強い意思を持った目を見たら、何も言えなかった。
ーーーー
ズドーーーン
ドカーーーーーン
「おい、ゴブリン野郎、早く出てこい!!こっちは軍総動員でやってきてやったぞ!」
「そんなうるさい声で叫ばぬとも出てくるわ、バカ王子」
ウィリアムは森の入り口に到達する。そこには何千もの軍人が武器を持って待機しており、第一王子と、ヴィーナスの使者、ビビと呼ばれる女は彼の側に控え、少し高くなった木製のお立ち台に立っていた。
「まさかお前、ひとりで来たのか?俺も舐められたもんだな」
「きさまなんぞ、俺一人で十分だ」
「強がっちゃって。やっちまえー!!」
ズドーーーン
大砲が打ち込まれる。ウィリアムは防御魔法でそれを防いだ。
カチーーーーーーン
「うわぁ!!」
「す、すべる!!」
ウィリアムの魔法は氷属性で、瞬時に物を凍らせることができる。ウィリアムは地面を凍らせ、軍隊の足元を狂わせた。
「かまわぬ、打て、ひたすら大砲を打つんだ!」
ドカーーーーーン
「はぁ・・・はぁ・・・」
さすがにウィリアムも体力が無くなってきた。魔法も無限には使えないのだ。
「はっはっは、もうおしまいか?」
「もうお前に勝手なことはさせないぞ!メラニーにだってあんな酷い仕打ちを!!」
ウィリアムは歯ぎしりをする。第一王子はキョトンとした顔をして、ふと思い出したように笑いを上げた。
「ああ、そんな奴もいたなぁ。ああ、ビビアン。嫉妬しないでくれ今は君だけだよ」
第一王子とビビは抱き合っていて、二人の世界で回りが見えていないようだ。キスもはじめようとしたので、ウィリアムは二人目掛けて氷魔法を打ち付けた。
ーーーーーシュンッ
魔法が跳ね返る。ウィリアムはハッとなった。
「ぐぅ・・・!!!」
ウィリアムは自分の攻撃をもろに受けた。第一王子はウィリアムを見て可笑しそうに笑う。
「ははは、ビビアンは魔法を跳ね返す力を持っているんだ。何をしても無駄だよ、残念だったね」
「くはっ・・・」
ウィリアムの口から血が滴る。
「そうそう、あのメラニアって女だけど、この森に捨てたんだっけ。まだ生きてるんだ。君を始末したら、彼女を迎えにいって軍人たちに犯させよう。顔は良い女だったもんな。何千人に見られて犯されるのも見物だなぁ」
「この野郎!!!くたばれ!!」
バーーーン
ドーーーーン
ウィリアムは魔法を使うのを諦め、刃物がいくつも刺さったこん棒で軍人たちを打っていく。
何人もの軍人が倒れていった。一人で数百人は倒したであろう。しかし彼はとうとう力尽き、膝を付いてしまう。
ーーーーードサッ
「おい、軍人たち、まだ殺すなよ。絶望させて殺さねば楽しくないだろう」
ウィリアムは拘束され第一王子が前に出てくる。
「あっけなかったなぁ。つまらん」
第一王子は足でウィリアムを蹴りつけた。
「ぐっ・・・」
「そうだ、はりつけにして市民たちに醜悪な怪物の死を見てもらおう!俺はそんな魔物を倒したってヒーローになるぞ、どう思う?ビビアン」
「とっても名案ですわ!さすがはダーリン!」
「じゃあ、皆、今からゴブリンの死刑を布告してくれ。魔法を無効にする拘束具を付けておけよ。暴れられたらたまらんからな」
0
お気に入りに追加
703
あなたにおすすめの小説
もう二度と、愛さない
蜜迦
恋愛
エルベ侯爵家のリリティスは、婚約者であるレティエ皇太子に長年想いを寄せていた。
しかし、彼の側にはいつも伯爵令嬢クロエの姿があった。
クロエを疎ましく思いながらも必死に耐え続ける日々。
そんなある日、クロエから「謝罪がしたい」と記された手紙が届いて──
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
進学できないので就職口として機械娘戦闘員になりましたが、適正は最高だそうです。
ジャン・幸田
SF
銀河系の星間国家連合の保護下に入った地球社会の時代。高校卒業を控えた青砥朱音は就職指導室に貼られていたポスターが目に入った。
それは、地球人の身体と機械服を融合させた戦闘員の募集だった。そんなの優秀な者しか選ばれないとの進路指導官の声を無視し応募したところ、トントン拍子に話が進み・・・
思い付きで人生を変えてしまった一人の少女の物語である!
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
私とお母さんとお好み焼き
white love it
経済・企業
義理の母と二人暮らしの垣谷操。貧しいと思っていたが、義母、京子の経営手腕はなかなかのものだった。
シングルマザーの織りなす経営方法とは?
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。
今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
秘密の師弟関係
ほのじー
恋愛
【完結】騎士団長×侍女(ときどき男装騎士)
18歳になったミリアは第二王女の侍女となることが決まった。
そんなミリアは幼少期に双子の弟とよく服を交換しては剣道場に通いつめていた。ついに父親にばれて道場へ行くのを禁止されてしまい、淑女教育の日々に。
侍女となるべく登城した次の日、幼少期に剣を教えてもらっていた師匠に再会してしまい・・・!!??
※毎日1エピソード(1000字~1500字程度)更新したいと思っています!週末は2エピソード更新するかも?
※始めは恋愛展開少ないですが、徐々に甘め、最後はデロ甘
※R18に変更しましたが、最終回付近までR15程度です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる