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王都

32 内緒の話

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 さっきまでガヤついていた室内は俺とデニスさんとダニエル少年、それから親方が中に入るとシンとした。
 青年から幼児まで皆一様に口を一文字に引き締め緊張した面持ちでこちらをうかがっている。
 今日は、彼ら――新規契約した『収納(小)』のスキルの持ち主たちへの説明会だ。
「さて、こんにちは。今日は説明会に来てくれてありがとうございます。本日の説明を担当させていただきます。今回の件について正式な仲介者となりました。ソロで活動しております、種級商人のユーラスと申します。ある程度尽力させていただくこととなりましたのでよろしくお願いいたします。それでは―――」
 ふいに視界の端でピッと手が上がるのでが見えた。
「――発言しても?」
 身なりのそこそこ良い青年がつまらなそうに手を挙げていた。しかしこちらに対する困惑とちょっとした反抗心が見え隠れしている。
「構いませんが、説明に支障の出ないようにしていただきたいので、あの辺りに関するご配慮願います」
「そうだな。俺、スキルで『鑑定』持ってるんだけど。ここにいる全員の共通項に気が付いたって言ったらどうする?」
 名乗りもしない青年は吐き捨てるようにそう言うとふいっと視線をそらした。いかにもわざとらしく不機嫌そうですこし笑えてくる。
 つまり、“使いえないスキル持ちの可哀そうな商人の子を集めて買い叩こうっていうんじゃないだろうな”ってことか。
「ああ、『鑑定』をお持ちでいらっしゃるということはアドルフ商会の方でしたか。別にどうも致しませんよ。そちらに関してはこれから全て説明させていただくつもりですのでお待ちくださいとしか申し上げられません。これから参加する皆さんに意思確認もございますので」
「説明にこんな子供出してくるような連中のいうことなんかどこまで信用できるんだか」
「あなたがどうしてここにいるのかよくわかるお言葉ですね。まあとりあえず説明を始めさせていただきますのでお静かにお願いします」
 ざっくり王都で子供の責任者ぐらいでガタガタぬかすなというと、青年はムッとしたもののおとなしく引き下がった。あっさり引き下がったので不思議に思って、青年をよく見れば隣の席の少年が青年の服の裾をつかんでいる。
 ああ、その子と一緒だからなるべく優位に話をつけたかったわけね。とりあえずこれからたとえ不安要素が出てきても意思確認の言葉を引き出せたから引き下がったと。
「さて、今の会話で皆さん冊子が付いたと思いますが、ここに集められました皆さんは普通の従業員として集められたわけではありません」
 集められたほとんどの人間が子供だっため、先ほどの青年とのやりとりでこちらを怖いものを見る目で見ている。やばいな、ここは明るく説明したほうがいいのだろうか。いやだめだ。貴族絡んでくる案件で優しくしてペロッとしゃべられたら困る。
「ええっとぉー、ここからはすっごい内緒の話になるんだけど聞いたお話内緒に出来そうにないって子は手ぇ上げてくれるかなぁー?」
 ダメだー!!! 俺のチビッ子贔屓体質舐めてた!! こんな子供たちに怯えられたまま話せるかー!!
「ここで手を挙げた子はここで別の所で働いてもらうことになるんだけど、お話聞いた後ではもうやーめたって出来ないよ? どうするか決まったかなー?」
 デニスさん注意してー!! 微笑ましいものを見る目で見ないでー!! ダニエル少年もほっとした顔しないー!! 親方!! 諦めないで! 呆れた顔で見る前に注意して!! 俺が自分で治せるわけないんだから親方が注意してくれないとこのまま教育番組よろしく説明会になるよ!! 青年!! もっと見て!! その冷たい瞳で!! もっと俺を責めるようにもっと!! 出来ればそのなかなか女王様を彷彿とさせる容姿を存分に生かして!! ……おや? 趣旨が変わったような?
「……誰も上げてないんだから、いいからさっさと進めろよ」
 ありがとう青年!! 脳内てんやわんや男でごめんね!!
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