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エルフの森編
第45話 エルフの惨劇
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サラザールは険しい表情をしながら洞穴から出てきた。
「サラザール!」
ソウタは安心したのか、飛び出してサラザールの下に駆け寄った。
「お前は……、まさか本当に1ヵ月で辿り着くとは……」
サラザールはソウタが辿り着くとは思っておらず、面を喰らった顔をして驚いていた。サラザールの予想では東の洞穴に辿り着くには少なくとも2ヵ月はかかると思っていた。ましてやこの森の事を全く知らないソウタ達が辿り着くとは到底思っていなかったのだ。
「なんでサラザールがここに?」
「約束の1ヵ月だから先に到着したんだが、不穏な空気が流れていたのでな、入り口に入ってみたんだが……」
サラザールの表情は険しいままだ、ソウタはそっと中を入り口から覗いてみた。血生臭い匂いが鼻をツンと刺激する。薄暗く左右の壁の松明だけでは何が起こっているのかわからない。ソウタは恐る恐るサラザールに中の様子を聞いてみた。
「なぁ、サラザール……中って……」
「あぁ、中の資源はほとんどなくなっている」
「そんな……」
シーナは両手を口に当てて、驚愕する。まさか密猟者がここに来ていたなんて。
「そんな! ここの場所はエルフにしかまだ知られてないはずっすよ! なんでここがわかってるんっすか!?」
「わかってることは1つだ」
サラザールは何かを確信しているようだ。
「それじゃ、やっぱり……」
「エルフの中に裏切り者がいるってことだ」
サラザールの言葉に空気が一瞬で凍り付く。エルフの中に裏切り者がいるとは思いたくなかったが、東の洞穴の場所が知っているのはエルフのみ、となればこの場所が知られているということは裏切り者がいるという事だ。
「この中で働いていたエルフのみんなは?」
「見ない方がいい……これ以上行けばトラウマになるだけだろうからな」
「それじゃみんな……?」
サラザールの話によれば、中はとても凄惨な光景が広がっていたようだ。エルフの体は無残に引き裂かれ、肉片が飛び散っていてサラザールも中に長く居なかったようだ。原型のある遺体のみ、サラザールは埋葬したと話す。
「入り口にいたエルフの傭兵はどこ行ったんすか?」
サラザールは目を瞑りながら、ある方向を指さす。指を差した先は上方向、森の方角を指し示している。ソウタ達が指をさす方向を振り返った。
「え……?」
「これは、酷いな……」
「……うっ、おえぇぇぇ」
「リンプー……、グイッチ……」
蔓でグルグルに巻かれ、体からはもう血が干からびており、綺麗な白く長い髪はなびいている。口からはウジ虫が湧いているようだ、おそらく長いこと放置されているのだろう。不穏な空気で気が付かなかったが、無残な姿を見ると、途端に刺激的な腐敗臭が鼻を襲い掛かる。この匂いは……嫌な気持ちより怒りの方が強くなる。ソウタはそう感じた。
「くそ、ここまでするのかよ……」
「今度の密猟者はただの密猟者ではなさそうだな」
サラザールは淡々と答える。
「どういうことだよ?」
「目的がただの資源漁りではないような気がしてな……」
サラザールは何かが気になるようだ。しかし、それが何なのかはわからない。フィルとアエルは泣きながら、エルフを地面におろした。
「あぁぁぁ! リンプー! グイッチ!」
「なんで、2人が……」
2人は泣き崩れ、横たわるエルフに抱きつく。
「ソウタ……お願いがある」
サラザールが遠くを見据えながら話し始めた。
「なに?」
「一緒に密猟者を見つけてほしい、お前たちは私の与えた無理難題をやり遂げた。恐らく、密猟者に対抗するにはお前たちが必要だ」
サラザールの言葉にソウタは少し照れくさそうに答えた。
「こんな光景を見て、断る方がおかしいだろ? 絶対捕まえようぜ!」
「ありがとう……」
サラザールは軽く微笑んでいたが、その瞳の奥は強く怒りが滲み出ていた。
「さて、そうと決まれば今日は一旦休もうか、疲れただろう」
「えっ? ここで?」
「さすがにここはまずいだろう……、逆に寝れるのか?」
「いや、無理だろ!」
ソウタたちは東の洞穴から少し離れた場所でテントを張り、夕食を取りながら密猟者の対策を考えていた。
「そういえばサラザール、密猟者の正体は何となくついてんの?」
サラザールは夕食を食べながら、淡々と答える。
「まぁ、何となくだがな。だがまだ確証は持てんな」
「まぁ、ソウタ、今は考えても仕方ない、明日に備えて今は食べたらどうだ?」
「そう……だな! 腹いっぱいに食べるしかないか」
ソウタは目の前に広がる大量の食事を、目一杯口に含んでいく。
「バカ! ソウタ、そんなに食うと私の分がなくなっちゃうじゃん!」
「もう、ほとんど私の分がなくなってる……」
ソウタ達は密猟者を捕まえるため、力を蓄えぐっすりと眠った。
「サラザール!」
ソウタは安心したのか、飛び出してサラザールの下に駆け寄った。
「お前は……、まさか本当に1ヵ月で辿り着くとは……」
サラザールはソウタが辿り着くとは思っておらず、面を喰らった顔をして驚いていた。サラザールの予想では東の洞穴に辿り着くには少なくとも2ヵ月はかかると思っていた。ましてやこの森の事を全く知らないソウタ達が辿り着くとは到底思っていなかったのだ。
「なんでサラザールがここに?」
「約束の1ヵ月だから先に到着したんだが、不穏な空気が流れていたのでな、入り口に入ってみたんだが……」
サラザールの表情は険しいままだ、ソウタはそっと中を入り口から覗いてみた。血生臭い匂いが鼻をツンと刺激する。薄暗く左右の壁の松明だけでは何が起こっているのかわからない。ソウタは恐る恐るサラザールに中の様子を聞いてみた。
「なぁ、サラザール……中って……」
「あぁ、中の資源はほとんどなくなっている」
「そんな……」
シーナは両手を口に当てて、驚愕する。まさか密猟者がここに来ていたなんて。
「そんな! ここの場所はエルフにしかまだ知られてないはずっすよ! なんでここがわかってるんっすか!?」
「わかってることは1つだ」
サラザールは何かを確信しているようだ。
「それじゃ、やっぱり……」
「エルフの中に裏切り者がいるってことだ」
サラザールの言葉に空気が一瞬で凍り付く。エルフの中に裏切り者がいるとは思いたくなかったが、東の洞穴の場所が知っているのはエルフのみ、となればこの場所が知られているということは裏切り者がいるという事だ。
「この中で働いていたエルフのみんなは?」
「見ない方がいい……これ以上行けばトラウマになるだけだろうからな」
「それじゃみんな……?」
サラザールの話によれば、中はとても凄惨な光景が広がっていたようだ。エルフの体は無残に引き裂かれ、肉片が飛び散っていてサラザールも中に長く居なかったようだ。原型のある遺体のみ、サラザールは埋葬したと話す。
「入り口にいたエルフの傭兵はどこ行ったんすか?」
サラザールは目を瞑りながら、ある方向を指さす。指を差した先は上方向、森の方角を指し示している。ソウタ達が指をさす方向を振り返った。
「え……?」
「これは、酷いな……」
「……うっ、おえぇぇぇ」
「リンプー……、グイッチ……」
蔓でグルグルに巻かれ、体からはもう血が干からびており、綺麗な白く長い髪はなびいている。口からはウジ虫が湧いているようだ、おそらく長いこと放置されているのだろう。不穏な空気で気が付かなかったが、無残な姿を見ると、途端に刺激的な腐敗臭が鼻を襲い掛かる。この匂いは……嫌な気持ちより怒りの方が強くなる。ソウタはそう感じた。
「くそ、ここまでするのかよ……」
「今度の密猟者はただの密猟者ではなさそうだな」
サラザールは淡々と答える。
「どういうことだよ?」
「目的がただの資源漁りではないような気がしてな……」
サラザールは何かが気になるようだ。しかし、それが何なのかはわからない。フィルとアエルは泣きながら、エルフを地面におろした。
「あぁぁぁ! リンプー! グイッチ!」
「なんで、2人が……」
2人は泣き崩れ、横たわるエルフに抱きつく。
「ソウタ……お願いがある」
サラザールが遠くを見据えながら話し始めた。
「なに?」
「一緒に密猟者を見つけてほしい、お前たちは私の与えた無理難題をやり遂げた。恐らく、密猟者に対抗するにはお前たちが必要だ」
サラザールの言葉にソウタは少し照れくさそうに答えた。
「こんな光景を見て、断る方がおかしいだろ? 絶対捕まえようぜ!」
「ありがとう……」
サラザールは軽く微笑んでいたが、その瞳の奥は強く怒りが滲み出ていた。
「さて、そうと決まれば今日は一旦休もうか、疲れただろう」
「えっ? ここで?」
「さすがにここはまずいだろう……、逆に寝れるのか?」
「いや、無理だろ!」
ソウタたちは東の洞穴から少し離れた場所でテントを張り、夕食を取りながら密猟者の対策を考えていた。
「そういえばサラザール、密猟者の正体は何となくついてんの?」
サラザールは夕食を食べながら、淡々と答える。
「まぁ、何となくだがな。だがまだ確証は持てんな」
「まぁ、ソウタ、今は考えても仕方ない、明日に備えて今は食べたらどうだ?」
「そう……だな! 腹いっぱいに食べるしかないか」
ソウタは目の前に広がる大量の食事を、目一杯口に含んでいく。
「バカ! ソウタ、そんなに食うと私の分がなくなっちゃうじゃん!」
「もう、ほとんど私の分がなくなってる……」
ソウタ達は密猟者を捕まえるため、力を蓄えぐっすりと眠った。
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