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エルフの森編
第36話 百聞は一見に如かず
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ソウタは仮説を立てた。右腕を貫いた銃弾は、音がしなかった。恐らくすぐ近くにはいないだろう。フィルのいう事が正しいのならば、相手は木に擬態している可能性が高い、擬態というのがどういった能力かは謎だが、『背景に溶け込む』といった表現がもしかしたら正しいのかもしれない。
「木に擬態するなら、木が多い所で擬態する、腕に自信があるなら近くにわざわざ来る必要はない……」
ソウタは近くにいるという選択肢を捨てた。暗がりの木々が覆い茂る中、わざわざリスクをとるような真似はしないだろう。銃弾が飛んできた方向を予測して、その方向に体を向ける。次の瞬間、遠くで赤く何かが灯った。
(来た! あそこか!)
弾のスピードは速く、ソウタが反応して避けてもなお、弾はソウタの太ももを掠った。
「あぶね! あいつ、普通に俺の足を狙ってきやがった!」
「まずは相手を足止めか……腕を最初狙ったのは威嚇、こいつらを放せよってことね」
「ねぇ、人間はなんで妖精を肩に乗せてるんだ?」
「よ、妖精だと!? この私がか! 失敬な、私は神さまだぞ!」
フィルの言葉に反応して、神さまは激怒した。
「バカねフィル、妖精は羽を生やしているのよ? この人は小人よ!」
「そんなことあるもんか! 小人はもっと大きいはずだろ!?」
「どっちも違う! 俺は小人でもなければ妖精でもない! 神だ! 神さまだ!」
フィルとアエルはソウタの腕の中で神さまと口論を始めた。最初は我慢しようと思っていたソウタだったが、次第にイライラが募り、ついには爆発してしまう。
「だぁー! うるせぇ、お前ら集中できねぇだろうが! こっちは死の瀬戸際なんだよ、黙って人質になってろよ!」
ソウタが大声を上げると、すぐさま銃弾が飛んできた。ソウタは危険を感知したのか、物凄いスピードで避ける。その後も銃弾は飛んでくるが、感覚がつかめたのか、ソウタは銃弾を全て避けてしまう。
(あの男……私の銃弾を避けきっただと?)
男はソウタが攻撃を避けたことに驚いていた。
「くそ、埒が明かないな……こうなったら」
ソウタは奥の手に出た。フィルとアエルの服を掴んで宙づり状態で前に出した。
(なんのつもりだ、あの男……)
「おい! このままじゃ持久戦になっちまうだろう? 俺の条件を聞いてくれ! アンタが捕まえた天使とワーウルフは俺の仲間なんだ! 助けてくれるなら、こいつらを開放する!」
「サラザールさん! 助けてぇ!」
「ちょっと、大きな声で言ったらサラザールさんが困るでしょ!?」
ソウタの問いに返答はない。ソウタは続けて叫んだ。
「別に俺たちはこの森を荒らしに来たわけじゃない! 信じてくれ!」
ソウタの叫びにようやく男は反応した。
「さっき、魔法で森を汚しただろ? 風を巻き起こしていたじゃないか!」
「あ、いや、あれは違うんだよ……その、物理的にやってるからあれは魔法じゃない! 原始的だ!」
ソウタが必死に弁明していると、フィルとアエルが不思議そうにソウタを見つめていた。
「嘘つけ! あれが魔法じゃなくてなんなんだよ!」
「物理的に風を作り出すなんて、人間には不可能ですよ」
「あぁ! 頼むからお前らはもう黙れ!」
ソウタのイライラは限界に来ていた。子供に八つ当たりするとはなんとも情けなく思えてくるがシーナとハウルを助けるためだと自分に言い聞かせる。
「嘘をつくな! あれが魔法でなくてなんなのだ!」
「いや、お前もかよ! あぁ、めんどくさいな!」
百聞は一見に如かず、ソウタは仕方なく、力の片鱗を見せることにした。軽く屈伸をすると、ソウタは真上に力強く飛び上がった。木の枝を突き破り、遥か上空に飛んだことでフィルとアエルは大絶叫、突然の出来事にわめき散らかした。
「だぁぁぁぁ! なんだこれ、魔法の詠唱もなくこれができるのか!?」
「だから、魔法じゃないって」
「きゃぁぁぁ……おえっ」
「うわぁ、おい! こんな空中で吐く奴がいるかよ! アトラクションかよ俺は!」
ソウタは呆れながら、地面に着地をする。フィルとアエルを見ると、フィルはまるで魂が抜けたように呆然とし、アエルは泡を吹いて気を失っている。
「さすがにこれじゃもう人質の意味がないな……!!」
ソウタは突然の殺気に反応した。あの男の放つ者ではない、もっと他の禍々しい殺気だ。ソウタは前方に咄嗟に避ける。後方から地面が抉れる物凄い音が鳴り響いた。
「くそ、なん……だ?」
それは木の形をしたモンスターだった。ソウタが飛び上がった時にモンスターにぶつかってしまったのだろう。
「こいつはハンタートレントだな、しかも1体じゃないぞ!」
「みたいだな、仕方がないな」
神さまがソウタの身を案じ、ソウタは2人を抱えたままでは到底戦えないと判断し、2人を一旦地面に置いた。
「悪いな2人とも、すぐに片付ける!」
ソウタはハンタートレントと対峙することになった。
「木に擬態するなら、木が多い所で擬態する、腕に自信があるなら近くにわざわざ来る必要はない……」
ソウタは近くにいるという選択肢を捨てた。暗がりの木々が覆い茂る中、わざわざリスクをとるような真似はしないだろう。銃弾が飛んできた方向を予測して、その方向に体を向ける。次の瞬間、遠くで赤く何かが灯った。
(来た! あそこか!)
弾のスピードは速く、ソウタが反応して避けてもなお、弾はソウタの太ももを掠った。
「あぶね! あいつ、普通に俺の足を狙ってきやがった!」
「まずは相手を足止めか……腕を最初狙ったのは威嚇、こいつらを放せよってことね」
「ねぇ、人間はなんで妖精を肩に乗せてるんだ?」
「よ、妖精だと!? この私がか! 失敬な、私は神さまだぞ!」
フィルの言葉に反応して、神さまは激怒した。
「バカねフィル、妖精は羽を生やしているのよ? この人は小人よ!」
「そんなことあるもんか! 小人はもっと大きいはずだろ!?」
「どっちも違う! 俺は小人でもなければ妖精でもない! 神だ! 神さまだ!」
フィルとアエルはソウタの腕の中で神さまと口論を始めた。最初は我慢しようと思っていたソウタだったが、次第にイライラが募り、ついには爆発してしまう。
「だぁー! うるせぇ、お前ら集中できねぇだろうが! こっちは死の瀬戸際なんだよ、黙って人質になってろよ!」
ソウタが大声を上げると、すぐさま銃弾が飛んできた。ソウタは危険を感知したのか、物凄いスピードで避ける。その後も銃弾は飛んでくるが、感覚がつかめたのか、ソウタは銃弾を全て避けてしまう。
(あの男……私の銃弾を避けきっただと?)
男はソウタが攻撃を避けたことに驚いていた。
「くそ、埒が明かないな……こうなったら」
ソウタは奥の手に出た。フィルとアエルの服を掴んで宙づり状態で前に出した。
(なんのつもりだ、あの男……)
「おい! このままじゃ持久戦になっちまうだろう? 俺の条件を聞いてくれ! アンタが捕まえた天使とワーウルフは俺の仲間なんだ! 助けてくれるなら、こいつらを開放する!」
「サラザールさん! 助けてぇ!」
「ちょっと、大きな声で言ったらサラザールさんが困るでしょ!?」
ソウタの問いに返答はない。ソウタは続けて叫んだ。
「別に俺たちはこの森を荒らしに来たわけじゃない! 信じてくれ!」
ソウタの叫びにようやく男は反応した。
「さっき、魔法で森を汚しただろ? 風を巻き起こしていたじゃないか!」
「あ、いや、あれは違うんだよ……その、物理的にやってるからあれは魔法じゃない! 原始的だ!」
ソウタが必死に弁明していると、フィルとアエルが不思議そうにソウタを見つめていた。
「嘘つけ! あれが魔法じゃなくてなんなんだよ!」
「物理的に風を作り出すなんて、人間には不可能ですよ」
「あぁ! 頼むからお前らはもう黙れ!」
ソウタのイライラは限界に来ていた。子供に八つ当たりするとはなんとも情けなく思えてくるがシーナとハウルを助けるためだと自分に言い聞かせる。
「嘘をつくな! あれが魔法でなくてなんなのだ!」
「いや、お前もかよ! あぁ、めんどくさいな!」
百聞は一見に如かず、ソウタは仕方なく、力の片鱗を見せることにした。軽く屈伸をすると、ソウタは真上に力強く飛び上がった。木の枝を突き破り、遥か上空に飛んだことでフィルとアエルは大絶叫、突然の出来事にわめき散らかした。
「だぁぁぁぁ! なんだこれ、魔法の詠唱もなくこれができるのか!?」
「だから、魔法じゃないって」
「きゃぁぁぁ……おえっ」
「うわぁ、おい! こんな空中で吐く奴がいるかよ! アトラクションかよ俺は!」
ソウタは呆れながら、地面に着地をする。フィルとアエルを見ると、フィルはまるで魂が抜けたように呆然とし、アエルは泡を吹いて気を失っている。
「さすがにこれじゃもう人質の意味がないな……!!」
ソウタは突然の殺気に反応した。あの男の放つ者ではない、もっと他の禍々しい殺気だ。ソウタは前方に咄嗟に避ける。後方から地面が抉れる物凄い音が鳴り響いた。
「くそ、なん……だ?」
それは木の形をしたモンスターだった。ソウタが飛び上がった時にモンスターにぶつかってしまったのだろう。
「こいつはハンタートレントだな、しかも1体じゃないぞ!」
「みたいだな、仕方がないな」
神さまがソウタの身を案じ、ソウタは2人を抱えたままでは到底戦えないと判断し、2人を一旦地面に置いた。
「悪いな2人とも、すぐに片付ける!」
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