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転生編

第14話 空からの飛来

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  ソフィアは持っていたグラスを地面に落とした。

 床にはグラスに入っていた飲み物が小さな水たまりを形成している。

 ソフィアがグラスを落とした理由、

 それはソウタの発言だった。

「なにぃ? 魔法が扱える!? 何をバカなことを言ってんだい!」

 ソウタの言っていることが信じられない。

 つい先日まで魔法が使えなかった男が、

 突然魔法を使えるというのだ。

 半ば適当に聞き流し、

 新しいグラスを持ってきたソフィアは飲み物を注ぎなおした。

 ソウタは適当に聞かれたことに少しムッとしたのか、

 ソフィアの目の前に椅子を持ってきて腰を掛けた。

「じゃあ、見ててくれよ」

 ソフィアはやっていろと言わんばかりの表情を浮かべ、

 飲み物を口に運んだ。

 ソウタは指に力を入れて、

 指パッチンをする。

 ボォォォ!

 ソウタの指先から火が立ち上る。

 目の前で起きたあまりに不可思議な出来事に、

 ソフィアはグラスをもう一度床に落とした。

 指先から火が?

 どういう理屈だ?

 説明できるのかこの現象、

 というより……魔法なのか?

 思考を張り巡らせるが、

 全然説明できそうにない。

 ソフィアはパニックになっていた。

 それもそのはず、

 指から火が発生するなんて、

 どう頑張っても理解ができるはずがない。

「そ、それは一体どうなってるんだい?」

「まぁ、火って摩擦でつくのかなぁって思って、指パッチンで火が付くんじゃないかなと……」

「子供の発想だよな。誰もが一度は考えそうだけど実際にした奴はソウタが初めてだな」

「うるせぇよ神さま! できるようになったんだから別にいいだろう!」

「それで、魔法ってのはそれかい?」

 ソフィアは興味津々というより、

 それを魔法と呼んでいいのか? 

 というような怪訝な表情を浮かべている。

「魔法だよ! 火を指から出せるんだよ!? これが魔法じゃなくてなんだよ!」

「いや、魔法って言うか……力のごり押しって感じが凄い否めないけど、他に何かできたりするのかい?」

 ソフィアにそういわれたソウタは、

 ソフィアを小屋の外に連れ出し、

 瞬間移動、水を高速で打ち出す、突風を巻き起こす、岩を投げつけるなど、

 到底人間わざとは思えない自称『魔法』をソフィアに次々と披露した。

 ソフィアの口はずっと開いている。

 元々ぱっちりとしているソフィアの目がより大きく見開き、

 持っている杖を手放していることに気が付かない程、

 目の前のソウタの動きに釘付けになっているようだ。

「で、どう? 理解してくれた?」

 ソウタは一通りの魔法を披露した後、

 ソフィアに話しかけるが、

 全く耳に届いていない。

「おい、ソフィアさん! 聞いてんのかよ!」

「え、あ、あぁ……とんでもない能力を持って転生してたってことを忘れてたよ」

 ソフィアは杖を拾って、

 頭をフードの上からポリポリと掻いた。

「まぁ、そのおかげで私の生活も豊かになりそうだね」

「ねぇ、俺の力を変な方向に使おうとしてない?」

「そりゃ、無尽蔵のエネルギーを手に入れたらそうな……ん?」

 ソフィアは上を見上げた。

 何かがこちらに向かってくる。

 いや、向かってくるというより、

 何かが猛スピードで落ちてきているのだ!

 このままではソフィアにぶつかってしまう。

「ソフィアさんあぶねぇ!」

 ソウタは瞬間移動で、

 ソフィアを一瞬で救い出す。

 ドガァァン!

 巨大な土煙が立ちこめ、

 何が飛来したのか確認できない。

「大丈夫かソフィアさん!」

「あぁ、ったく一体何だい? お前さんが来てからロクなことが起きやしないよ!」

 ブツブツと小言を言いながら、

 ソウタの手を離れた。

 一体何が落ちてきたというのか、

 ソウタは土煙を注視した。

「一体なんなんだよ」

 次第に土煙が消えていく。

 地面には大きなひび割れ、

 周りは落ちた衝撃によって起きた風圧で、

 机などがひっくり返っている。

 少なくとも小さい何かではないようだ。

「もしかして、人?」

 それは人の形をしていた。

 うつぶせに倒れているためか、

 よくわからないが、

 決して人ではないことはすぐにわかった。

 よく見ると背中には小さな翼が生えている。

 髪は黄金色に輝き、

 華奢な体つきをしている。

 おそらく女性だろう。

「バカだね、人じゃないよ背中に羽が生えてるだろ。天使だね、でもなんでこんなところに? この辺りには【天空の城、ジアドラ】は無いはずなのに……」

【天空の城、ジアドラ】は北東に位置する孤島の上に浮かぶ浮遊島だ。

 島が浮かぶとはなんとも不思議な話だが、

 魔力を大量に含んだ大地が、

 地上の魔力を帯びた孤島にまるで磁石のように反発しあって浮いているらしい。

 浮遊島には背中に翼を生やした天使が生活拠点としており、

 孤島の天高くそびえる山を生活圏にしている国と争いを続けているそうだ。

「とにかく、すぐに小屋の中に入れないと、ソフィアさん小屋使っても大丈夫だよね?」

「お前さんは水を汲んできておくれ、ハウル! この娘を小屋まで運んでおくれ!」

 ソフィアはバケツをソウタに渡して、

 水を汲んでくるよう指示をする。

「ワン!」

 ハウルは頭を巧みに使って、

 天使を背中に器用に乗せた。

「なんだが嫌な予感がするな……」

 神さまは胸騒ぎが止まらない。

 嫌な予感がこの後見事に的中することを、

 この時はまだ誰も知らない……
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