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言うぞ!
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ちょうど一週間後、母が俺の様子を見にくることになった。俺は彼との関係を隠すかどうか迷ってしまった。ほんのちょっぴり日和った俺の頭を、琉冬がなでた。
「言いたくなければ、それでいいですよ」
その悲し気なほほえみに、申し訳なさがパンパンに膨らむ。
言うぞ! と心に決め、機会をうかがっているうちにバレた。
視線の交わし方とか名前を呼ぶ声に甘さを感じてしまったらしい。
それに、まあ……。
琉冬は俺の部屋で寝起きしているので、彼の部屋ってないもんな。
「あんたたち、付き合ってるんでしょう? 隠さなくったっていいって! でも、いったいどんな善行積めばこんなイケメンがご飯作ってくれるようになるの?」
母は真顔であった。答える琉冬の眼差しも真剣だ。
「実は俺、鶴なんです。恩返しのつもりだったんですが、今ではすっかり彼に惚れてしまって。俺は主夫みたいなことしかできないけど、その分、桂聖(かいせい)くんをきっちり支えますから」
母と琉冬はお互いにお辞儀する。いや、何の儀式?
そうかと思うと、べろんべろんに酔っぱらった母が手を叩いて笑った。
「うんうん。いいんじゃない? ご飯が美味しくてセックスの相性がいいなら、相手が男だろうが人外だろうが関係ないって! あんた、うまくやったね!」
いい加減な母の言に、琉冬は肩を震わせて大笑いした。ここまで笑ってるのは見たことがない。
「え? なに。琉冬どうしたの?」
「だって、桂聖とまったくおんなじこと言うから!」
母親を玄関先まで見送って、俺はちょっと不安になった。
「相当酔ってたとはいえ、鶴だって言っちゃって良かったのかな」
「むしろ秘密にしておく方が危ないんです。言質を取っておくほうが大事ですよ」
「そういうもん?」
「そういうものです」
「琉冬、これからもずっと俺といてくれる? なんか俺、不安なんだけど、突然、恩返し終わったから帰りますとかないよね? もうとっくに終わってる気もするけど」
「そうですね。恩返しなら、もうとっくに終わってます」
「え!?」
「ばかだな、桂聖。俺は、あなたのそばにいたいからいるんです。お世話をしたいからしてるんです。好きですよ」
「ヤバい。嬉しい……。俺も好き!」
今日も燃え上がっちゃう予感がバリバリする。
エアコンつけてよかった。
「俺はね、桂聖。あなたの物語から途中退場する気はないんです。嫁にきたからには、添い遂げる覚悟なんですよ」
「それ! それなんだけどさ。琉冬が嫁でいいわけ? 俺が下なのに」
「はい、そこは。――嫁じゃないと色々面倒というか、婿は危ないです。下手をすると殺されます」
「え!? じゃあ、嫁で!」
正直、異界のルールはよく分からないけれど、そのときは琉冬がこうして教えてくれる。
琉冬は笑って玄関のドアを閉め、俺にキスをした。
「そう言ってくれると思ってました」
俺の嫁は鶴だけど、一人で背負いこまないタイプなので、末永く幸せに暮らせそうだ。
めでたしめでたし
「言いたくなければ、それでいいですよ」
その悲し気なほほえみに、申し訳なさがパンパンに膨らむ。
言うぞ! と心に決め、機会をうかがっているうちにバレた。
視線の交わし方とか名前を呼ぶ声に甘さを感じてしまったらしい。
それに、まあ……。
琉冬は俺の部屋で寝起きしているので、彼の部屋ってないもんな。
「あんたたち、付き合ってるんでしょう? 隠さなくったっていいって! でも、いったいどんな善行積めばこんなイケメンがご飯作ってくれるようになるの?」
母は真顔であった。答える琉冬の眼差しも真剣だ。
「実は俺、鶴なんです。恩返しのつもりだったんですが、今ではすっかり彼に惚れてしまって。俺は主夫みたいなことしかできないけど、その分、桂聖(かいせい)くんをきっちり支えますから」
母と琉冬はお互いにお辞儀する。いや、何の儀式?
そうかと思うと、べろんべろんに酔っぱらった母が手を叩いて笑った。
「うんうん。いいんじゃない? ご飯が美味しくてセックスの相性がいいなら、相手が男だろうが人外だろうが関係ないって! あんた、うまくやったね!」
いい加減な母の言に、琉冬は肩を震わせて大笑いした。ここまで笑ってるのは見たことがない。
「え? なに。琉冬どうしたの?」
「だって、桂聖とまったくおんなじこと言うから!」
母親を玄関先まで見送って、俺はちょっと不安になった。
「相当酔ってたとはいえ、鶴だって言っちゃって良かったのかな」
「むしろ秘密にしておく方が危ないんです。言質を取っておくほうが大事ですよ」
「そういうもん?」
「そういうものです」
「琉冬、これからもずっと俺といてくれる? なんか俺、不安なんだけど、突然、恩返し終わったから帰りますとかないよね? もうとっくに終わってる気もするけど」
「そうですね。恩返しなら、もうとっくに終わってます」
「え!?」
「ばかだな、桂聖。俺は、あなたのそばにいたいからいるんです。お世話をしたいからしてるんです。好きですよ」
「ヤバい。嬉しい……。俺も好き!」
今日も燃え上がっちゃう予感がバリバリする。
エアコンつけてよかった。
「俺はね、桂聖。あなたの物語から途中退場する気はないんです。嫁にきたからには、添い遂げる覚悟なんですよ」
「それ! それなんだけどさ。琉冬が嫁でいいわけ? 俺が下なのに」
「はい、そこは。――嫁じゃないと色々面倒というか、婿は危ないです。下手をすると殺されます」
「え!? じゃあ、嫁で!」
正直、異界のルールはよく分からないけれど、そのときは琉冬がこうして教えてくれる。
琉冬は笑って玄関のドアを閉め、俺にキスをした。
「そう言ってくれると思ってました」
俺の嫁は鶴だけど、一人で背負いこまないタイプなので、末永く幸せに暮らせそうだ。
めでたしめでたし
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