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誘拐拉致監禁?
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あれから数日たち、今日もいつものように兄ズを送り出してから、ルドを連れて薬草採取に向かおうと玄関を出た。
そこまではいつもと変わらなかったのだけれど、近づいてくる馬車があった。
平民街でもたまに見る馬車より、ちょっと小綺麗な馬車だった。
タイミングよく私たちの前で止まり、流れるようにドアが開いた。
「あ!あなた!あなたよ!私を助けてくれた妖精さん!あの時は本当にありがとう。命を救われたわ!是非うちへ来て。お礼をさせてちょうだい!」
元気よく出てきたのはあの時寒い寒いと凍えそうだった少女だった。
随分元気に回復されて何より・・・・・・元気すぎて貴族令嬢として大丈夫なのかなと思ってしまう。
執事風の男性もいつの間にか降りてきて、「ささ、どうぞ」と強引にルドを馬車内に連れて行ってしまった。
それって誘拐ですよね。
カートは馬車の後ろに積まれて、私も執事の男性に抱き上げられて抵抗もできず乗せられてしまった。
拉致ですよね?
異世界が怖いのか、貴族という身分社会が怖いのかわからないけど、平民以下は貴族に逆らったら命がないというので、NOと言えず、家に帰れるのか、兄ズへの連絡はどうしようかなとか、考えるしかなかった。
ああ、完璧ではなかったのだね。
そういえばそうだよね、少女の前では怪しまれないように姿を見せていたっけ。
家まで突き止められて、迷惑極まりない。
まぁでもきっとこんな幼児だ。
美味しいジュースと食べ物と何か可愛い服でも与えて解放されるかな?
あ、ルドが暴れてる。
よし、良い子だ!
もっとやれ!
男性が助けを求めるまで子どもらしく笑ってやった。
男爵邸に着くとサロンへ案内された。
案の定、美味しそうなお菓子がたくさん用意されていて、いかにも偉そうな男女が待っていた。
「おお、よく来てくれた」
いえ、誘拐されました。
「君が妖精のエラちゃんだね?私はモラン男爵だ。こちらが妻のアリシア。娘のサラだよ。先日はサラが寒がっていたところを助けてくれたと聞いたよ。どうもありがとう」
寒がっていたところ?
間違ってはいないな。
貴族だから誘拐された事実はもみ消したいのかな。
「私ではありません」
一応否定しておく。
「私が寒くて凍えそうな時に、髪が黒い妖精さんがきてくれたのよ。この町では黒い髪はあなたしかいないわ。感謝してるのよ」
間違ってはいないけど、髪の色が同じってだけで誘拐しちゃうんですか?
「たまたま同じ色だっただけで、私ではありません。私は何もしていません。こんな子どもが何かできるはずありません」
全力で否定はしておこう。
「いいのよいいのよ、さぁ、座ってちょうだい。お菓子をたくさん用意したのよ?全部召し上がってね」
全部は無理だし。
話が通じないヤバい人たちだな。
男爵夫人がにこやかに席を勧めると、メイドが私を抱き上げて高い椅子に座らせた。
ルドはすでに私の手から離れて赤ちゃん用の椅子に座らせられている。
強制お茶会が始まってしまった。
ルドのお世話はメイドさんが付きっきりで、柔らかいデザートや果物を食べさせていた。
今後安物のお菓子を食べなくなって我儘になったらどうしてくれるんだろう。
男爵夫妻は娘自慢を始めてしまって、興味なさすぎて全部カラ返事。
お腹いっぱいになったら解放されるかなと思って私も食べる。
あ、前世の私が好きだった苺のショートケーキらしきものがあるぞ。
メイドさんに取ってもらって食べたらショートケーキもどきだった。
甘い生クリームに苺が乗っているけど、サンドされてる中にある赤いのは何かの果物のジャムだった。
前世の私は、苺のショートケーキの中は苺のスライスじゃないと苺のショートケーキじゃないって怒ってたっけ。
ジャムは許せないって。
子どもらしく我儘言ったらどう反応するかな?
「このケーキは甘いだけで美味しくない。生クリームには砂糖入れずにバニラエッセンスを一滴だけ入れて。ジャムは使わないで、苺をスライスしたのをここに生クリームと一緒にサンドしてあるのを、たくさん食べたいなー! これは美味しくないからいらなーい!残すー!」
「な、なんだね、それは。新しいレシピか???おい!シェフを呼べ!」
男爵夫妻が驚いて慌ててシェフを呼んだ。
「妖精ちゃーん、お利口な妖精ちゃーん。今のレシピをうちのシェフにお話してくれたら、すぐに作って持ってくるよ~」
男爵が気持ち悪い顔になってる。
なんとなく男爵と同じ語尾を間延びさせた言い方で返してみる。
「妖精から情報を引き出すには~、高くつきますわよぉ~」
「いいともいいとも。なんでも好きなもの買ってあげるよ~」
好きなものは特にない。
シェフに急いで作らせ、私は甘すぎない苺のショートケーキをホール丸ごとひとりで食べてしまった。
男爵家のみなさんもお気に召したようだった。
お腹いっぱいになったところで、兄ズが来たと執事が伝えにきた。
そこまではいつもと変わらなかったのだけれど、近づいてくる馬車があった。
平民街でもたまに見る馬車より、ちょっと小綺麗な馬車だった。
タイミングよく私たちの前で止まり、流れるようにドアが開いた。
「あ!あなた!あなたよ!私を助けてくれた妖精さん!あの時は本当にありがとう。命を救われたわ!是非うちへ来て。お礼をさせてちょうだい!」
元気よく出てきたのはあの時寒い寒いと凍えそうだった少女だった。
随分元気に回復されて何より・・・・・・元気すぎて貴族令嬢として大丈夫なのかなと思ってしまう。
執事風の男性もいつの間にか降りてきて、「ささ、どうぞ」と強引にルドを馬車内に連れて行ってしまった。
それって誘拐ですよね。
カートは馬車の後ろに積まれて、私も執事の男性に抱き上げられて抵抗もできず乗せられてしまった。
拉致ですよね?
異世界が怖いのか、貴族という身分社会が怖いのかわからないけど、平民以下は貴族に逆らったら命がないというので、NOと言えず、家に帰れるのか、兄ズへの連絡はどうしようかなとか、考えるしかなかった。
ああ、完璧ではなかったのだね。
そういえばそうだよね、少女の前では怪しまれないように姿を見せていたっけ。
家まで突き止められて、迷惑極まりない。
まぁでもきっとこんな幼児だ。
美味しいジュースと食べ物と何か可愛い服でも与えて解放されるかな?
あ、ルドが暴れてる。
よし、良い子だ!
もっとやれ!
男性が助けを求めるまで子どもらしく笑ってやった。
男爵邸に着くとサロンへ案内された。
案の定、美味しそうなお菓子がたくさん用意されていて、いかにも偉そうな男女が待っていた。
「おお、よく来てくれた」
いえ、誘拐されました。
「君が妖精のエラちゃんだね?私はモラン男爵だ。こちらが妻のアリシア。娘のサラだよ。先日はサラが寒がっていたところを助けてくれたと聞いたよ。どうもありがとう」
寒がっていたところ?
間違ってはいないな。
貴族だから誘拐された事実はもみ消したいのかな。
「私ではありません」
一応否定しておく。
「私が寒くて凍えそうな時に、髪が黒い妖精さんがきてくれたのよ。この町では黒い髪はあなたしかいないわ。感謝してるのよ」
間違ってはいないけど、髪の色が同じってだけで誘拐しちゃうんですか?
「たまたま同じ色だっただけで、私ではありません。私は何もしていません。こんな子どもが何かできるはずありません」
全力で否定はしておこう。
「いいのよいいのよ、さぁ、座ってちょうだい。お菓子をたくさん用意したのよ?全部召し上がってね」
全部は無理だし。
話が通じないヤバい人たちだな。
男爵夫人がにこやかに席を勧めると、メイドが私を抱き上げて高い椅子に座らせた。
ルドはすでに私の手から離れて赤ちゃん用の椅子に座らせられている。
強制お茶会が始まってしまった。
ルドのお世話はメイドさんが付きっきりで、柔らかいデザートや果物を食べさせていた。
今後安物のお菓子を食べなくなって我儘になったらどうしてくれるんだろう。
男爵夫妻は娘自慢を始めてしまって、興味なさすぎて全部カラ返事。
お腹いっぱいになったら解放されるかなと思って私も食べる。
あ、前世の私が好きだった苺のショートケーキらしきものがあるぞ。
メイドさんに取ってもらって食べたらショートケーキもどきだった。
甘い生クリームに苺が乗っているけど、サンドされてる中にある赤いのは何かの果物のジャムだった。
前世の私は、苺のショートケーキの中は苺のスライスじゃないと苺のショートケーキじゃないって怒ってたっけ。
ジャムは許せないって。
子どもらしく我儘言ったらどう反応するかな?
「このケーキは甘いだけで美味しくない。生クリームには砂糖入れずにバニラエッセンスを一滴だけ入れて。ジャムは使わないで、苺をスライスしたのをここに生クリームと一緒にサンドしてあるのを、たくさん食べたいなー! これは美味しくないからいらなーい!残すー!」
「な、なんだね、それは。新しいレシピか???おい!シェフを呼べ!」
男爵夫妻が驚いて慌ててシェフを呼んだ。
「妖精ちゃーん、お利口な妖精ちゃーん。今のレシピをうちのシェフにお話してくれたら、すぐに作って持ってくるよ~」
男爵が気持ち悪い顔になってる。
なんとなく男爵と同じ語尾を間延びさせた言い方で返してみる。
「妖精から情報を引き出すには~、高くつきますわよぉ~」
「いいともいいとも。なんでも好きなもの買ってあげるよ~」
好きなものは特にない。
シェフに急いで作らせ、私は甘すぎない苺のショートケーキをホール丸ごとひとりで食べてしまった。
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