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冬へ落ちて行く

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慌ただしくあっという間に過ぎ去った約2ヶ月。
ルドはもう8ヶ月になり、男の子だからか離乳食をたくさん食べる。
おばちゃんの授乳もそろそろ卒業しても良さそうな感じだ。
マグでヤギミルクを与えておいて、母乳が欲しいと泣かなければもう良いよね。

季節ももう冬だ。
寒さを辛抱しなければならない季節のため、長いように感じる冬だけど、春になるのはきっと早いだろう。

春。
それは、父親が来る季節だ。

普通なら父親の帰宅を喜ぶはずなのに、私たちは何されるかわからないから父親に会いたくない。
母が死んだ事を知ったら、私たちを忘れて捨て置いてくれたら良いのだけど、へそくりを魔石と隠すような人間だ。
お金にがめついなら、子どもを売ることも平気でやるだろう。

私はいつでも心が凪だから、来たるその日に備えて、色々な状況を想定して対応を考えているのだが、兄ズはふたりして毎日警戒し、私に注意事項をあれやこれや言ってくる。

私の髪は目立つから帽子に隠しなさいとか、男の格好をしなさいとか、極め付けは、しばらく家から出ては行けないなんてことも言ってきた。
兄ズの精神衛生上、可能な範囲内で兄ズに従っている。

実を言うと商業ギルドからおもちゃの売上金が入金されて、かなりお金持ちになったのだ。
その金額を知ってからは、薬草採取しかできない冒険者稼業はもう廃業しても良いのでは?と思い始めていた。

ちなみに、けん玉が1番売れたよ。
これは子どもだけでなく、成人男性もマイけん玉を持つようになるくらいの大流行で、好きな色に塗装したり名前を彫ったりして、自分で装飾してオシャレさを競っている部分もあるんだって。

広場にはけん玉で遊んでる人がたくさん。
そしてとてもカラフル。
前世のけん玉は玉が赤かったよね。
あんなド派手なけん玉は見た事ないなぁ。

あ、それと、象牙じゃない多層球もオークションでめちゃくちゃ高く売れた。
次は何かの牙で多層球を作りたい。
もっと高く売れると思う。
冒険者やめて多層球職人になってもいいよね。

そんなこんなで食事は以前よりグレードアップ。
平民と同じ食事内容になって、私も以前より食事量が増えた気がする。
美味しいお菓子だって買えるようになった。

貧民街では硬い黒パンとうっすいスープだった。
栄養なんて全然取れないよね。

そういえば、黒パン硬過ぎて、ずっと黒パンをしゃぶっていた私を、兄ズが笑ってたっけ。

我ながら自分で作った食事も美味しいし、体と脳みそが喜んでる気がする。

先日お米やさんでお味噌をゲットしたので、前世の私が大好きだった豚汁を作って、ルドの離乳食にも使っている。
ルドは芋が好きみたいで、もっとくれとグズグズする。

他には、シチューも好きみたい。
兄ズもたくさん食べてくれる。
時々パテメンが集まったりした時は、急なおもてなしでも対応できるから、鍋っていいね。

さて、冬。
冬支度といえば、薪だ。
他のお宅では大量に薪を保管するのだが、うちは少しあればいいので、兄ズにお願いして仕事帰りに倒木を薪割りして持ち帰るようお願いしている。
私も収納魔法で倒木を結構収納してるし、私が家にいる間は、私の魔法で家の中を暖かくできるからね。
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